椿本力三郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

私をくいとめて(2020年製作の映画)

3.9

年末に2020年トップクラス入りの作品に出会えました。
綿矢りさの原作小説を大九明子監督が映画化。
これって松岡茉優の「勝手にふるえてろ」と同じ組み合わせなんですよね。
本作では「黒田みつ子(31歳)
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マンハント(2018年製作の映画)

3.5

ジョン・ウーが好きな人は大満足で
そうでない人は何が何かさっぱりわからん映画やと思います(*´∀`)♪
2丁拳銃てんこ盛り、鳩も飛びすぎ大サービス、
まったくブレないジョン・ウーが大好きです。

シネマ歌舞伎 女殺油地獄(2018年製作の映画)

4.1

とてつもない世界に触れてしまった感覚。
当代の幸四郎と猿之助の対決やね、まさに。
そもそも近松門左衛門の台本が
人間くさくて、普遍的で、ドストエフスキーに通じるものも感じた。
幸四郎ですが親に勘当され
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

5.0

自分の信念や価値観が揺さぶられること、
そのインパクトの種類と深さ、強度が
映画の魅力に直結しているのだと
僕は思っています。
価値観が揺さぶられるプロセスにおいて
喜怒哀楽の感情も当然に生じる。
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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017年製作の映画)

4.1

憲法上の論点、政権批判、現場と経営判断の乖離、それぞれのプロフェッショナリズム、個人の信頼と職業倫理、器でない経営者の勇敢さと危うさ等のテーマが
「ペンタゴンペーパーズ」というキーワードを通して重なり
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.6

いかにもA24っぽいアオハル感。
スケボーでやっと見つかった自分の居場所。
台湾映画「クーリンジェ少年殺人事件」に似たテイストを感じたのは
不良少年の日常を通して
時代や地域の不安を表現しているからだ
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スキャンダル(2019年製作の映画)

3.9

わずか5年前の騒動(一部は現在も進行中)を
ここまで映画にできるアメリカの「表現の自由」にまず感動。
論点というかエピソードが多く、
展開が速いのだが、
中心となる3人の女優がめちゃくちゃカッコ良い。
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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021年製作の映画)

3.9

私、ガンダムの知識ほぼゼロですが
テーマが極めて現代的(テロリストの心理)であり、
ストーリーの展開が秀逸。
何よりも作画が丁寧。
映画としての完成度の高さに驚いた。
冒頭の数分で「これはアタリだな」
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悪名(1961年製作の映画)

4.1

男のロマンあふれるバディムービー。
勝新の弟分、デヴィット・ボウイかと思ったら
若き日の田宮二郎でした。
2人が義兄弟の契りをかわすシーンの緩急が素晴らしい。
女優陣も豪華。
中村玉緒の照れた表情と仕
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.7

ラストシーンに賛否分かれると思いますが
映画的な「誇張と省略」として僕はアリです(号泣しました)
ぐいぐい刺さってくるセリフとシーンの連続で
僕の映画ライフで「恋する惑星」「天使の涙」「寝ても覚めても
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.1

「チャラい恋愛映画やと思って見たら
火傷しちゃいますよ」
とシネフィルの後輩に推薦されました。
その通りの感想です。
気持ちのすれ違いと葛藤の表現は
ウォン・カーウェイとか、
香港映画に通じるテイスト
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アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

4.6

数年に1回は映画館で観たい。
30年前の作品だが世界観すら
まったく色褪せていない。
バリの民族音楽風の音楽も良い。
ラストシーンからのエンディング、好き過ぎる。

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)

4.5

ベルナルド・ベルトルッチが
「映画史上最高に美しい」と評したキャプテン・ヨノイのキスシーン。
それだけでも見る価値あり。
時代的に前後するものの
大島渚の「御法度」を踏まえて「戦メリ」を見ると
この作
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マイ・ブックショップ(2017年製作の映画)

3.9

予告編のイメージとまったく違う内容でした。
「私と本との一期一会」、はーっ?関係ないやん、まったく。
ネットで低評価のレビューが多いのは理解します。
「良い映画」の定義によるのだと思うのね。
僕は「感
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浅田家!(2020年製作の映画)

4.0

1年で2、3作品くらいは、
こういうテイストの映画も見た方が良いなと思いました。
誰も傷つけない、ホッとするストーリー。
家族って何だろう、写真に残したい瞬間ってどういう時だろう、そしてそれらが重なっ
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パルプ・フィクション(1994年製作の映画)

4.7

およそ25年ぶりに名画座で。

私が最初に見たとき、この作品の主な登場人物は
すべて自分より年上で、25年ぶりに見たら自分よりも年下でした。
昔はお洒落な大人の映画に見えたのですが、今見ると単に「クズ
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RRR(2022年製作の映画)

4.5

ボリウッドの魅力満点の「超豪華・幕の内弁当」みたいな仕上がり。

北斗の拳ばりのアクション、動物を使った攻撃、
帝国主義批判、愛国心、愛郷心、家族を想うキモチ、
そしてベースにある熱い男の友情
もちろ
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.0

原作では脇役のリョータをあえて中心に据え、
彼の過去のウェットで人間的な部分へフォーカスしていく軸と
「最強」山王工業高校との対戦というチームとしてのクライマックスをもう一方の軸として同時に走らせるこ
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ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

3.1

超絶B級カルト映画。

洞口依子のキラキラした可愛らしさと伊丹十三の怪演だけを強調する為に
ストーリーも他の登場人物も徹底的にプアに描いたのだと納得してしまうほど、この2人が輝いている。

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

3.8

ミステリーに分類するにはあまりにも単純な仕掛けで物足りなく感じると思う。一方、「クズ男の屈折した愛情がもたらした悲劇」として見ると味わい深さが出てくる。

事件の被害者は地元の名士の二世であるチェイス
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.9

「君の名は。」「天気の子」を通して洗練された新海誠の世界観を前提に「女子高生の自分探し」をロードムービーとして描き出す。
前2作と比較してボーイミーツガール的な要素は薄く、
主人公である女子高生の鈴芽
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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

4.1

本作には、前作の「ブラックパンサー」で
その世界観やキャラクターのファンになった人をふるいにかけるような性質があるように思う。
すなわち、この本作で前作の世界観はさらに濃くなっているものの、
濃すぎて
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ブロンド(2022年製作の映画)

3.9

本作を、マリリン・モンローのドキュメンタリーだと思うから色々とおかしなことになると思う。
マリリン・モンローという「時代のバケモノ」に憑依されるノーマ・ジーンの苦悩と葛藤。時代を経るに連れてバケモノは
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.1

説明が不足しているのではなく、あえて余白として残している、
そういう極めてA24らしい作品だった。

冒頭の「ファミリー・ダンス・バトル」で、
この4人家族の関係性を描き切っているのはさすが。

作中
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2046 4Kレストア版(2004年製作の映画)

4.1

中英共同声明で明示された「2046」年は、香港にとって極めて重要な意味を持つが、1960年代の最後の数年間と「2046」年を、
現実とSF小説を行ったり来たりする中で対比し、その大きな変化と不安を強調
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天使の涙 4Kレストア版(1995年製作の映画)

4.4

「天使の涙」4Kレストア版を見た。
ちょうど25年ぶり。
世界観だけで1時間40分を押し切るウォン・カーウァイの力量。
広東語、普通語、台湾語、英語、日本語が錯綜する中、
自然体で主役を張るのは金城武
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デリシュ!(2021年製作の映画)

3.9

貴族のものであった「美食」を「レストラン」という場を発明して一般大衆に広げた料理人のストーリー。まさに革命前夜のフランスの空気感がそこに凝縮されたような印象がある。レストランとは革命の象徴なのだ。>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

4.0

意識的に積極的に1年に2、3作品は見ておくべきホッコリする「童話」です。

冒頭からしばらく続くB級カルト映画っぽい展開は、
「さかなクン」というそれ自体が映画的な存在のストーリーから
のん演じる「ミ
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ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)

3.7

この作品は、引退後のロッキー、ドラゴを描いたスピンオフ作品「クリード炎の宿敵」を復習してから見た方が良いかもしれない。
「クリード炎の宿敵」への接続しやすさから逆算して
「ロッキー4」を再編集したと思
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ストーリー・オブ・マイ・ワイフ(2021年製作の映画)

4.1

太宰治「人間失格」のラストシーンのように
他人の言葉で全部ひっくり返って
落ち着くところに落ち着いた感がありましたが
こういう展開だと、途中にどれだけ不愉快なエピソードがあっても、
常に男が120%ダ
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ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2021年製作の映画)

3.2

「ジュラシック」「ワールド」と区切ったときに、
「ワールド」にテンションが置かれている。
すなわち、恐竜との共存が当たり前となったときに
社会システムにどのような影響があるかについての思考実験として捉
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かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

3.9

この作品をどう評価するかは、
今泉力哉監督作品に何を求めるかに直結していると思う。
私は、今泉作品に「繊細さ」を求めている。
この作品にあるもどかしさ(人によっては退屈さと感じるもの)は、
極めて繊細
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星の子(2020年製作の映画)

3.8

これもタイムリーな作品、焦点は宗教2世。
中学3年生の次女役を芦田愛菜が好演。
次女が生まれた直後の肌の病気を
新興宗教への入信によって解決できたことをきっかけとして、
両親は、のめり込んで行く。
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ビリーバーズ(2022年製作の映画)

4.5

タイムリー過ぎるテーマ、そしてそれを先鋭化する切り取り方。
良い感じで狂っている映画です。
上映中に何度も映画館で笑いが起きましたが、
笑いの後に薄ら恐ろしくもなってくる。
こういう話や空気感って自分
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ボイリング・ポイント/沸騰(2021年製作の映画)

4.5

私が映画を見る時は「誇張と省略」の効き具合に加えて
最近は「予感と余韻」を重視するようになった。
本作品はクリスマス直前の繁盛レストランの話。
「表向きは」上手くいっているように見える。
しかし、その
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不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

2.5

早稲田松竹で「永遠に君を愛す」と同時上映していた、
濱口竜介の短編映画。

はい、ビックリするくらいの駄作です。

こんなん濱口竜介じゃなくても撮れるやんか、という。
「らしさ」をまったく感じない。
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