椿本力三郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(2020年製作の映画)

4.5

警察官が信用できない状況は、
アメリカでは年に何件も起きているのだろう。
「警察、警察官」に対する無条件の信用は
ひょっとすると特殊日本的なことなのかもしれない。

本作は、精神疾患による被害妄想に悩
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グランツーリスモ(2023年製作の映画)

2.5

中身スッカスカ。
そもそも感情を揺さぶられるシーンがなく
当然のことながら感情移入もできない。
勢いだけで、抑揚なく、深みもない。
「フォードvsフェラーリ」を期待して行ったので
大きく空振った。

茶飲友達(2022年製作の映画)

4.5

私は見終わった瞬間にガツンと元気のなくなる作品が大好物である。

本作も片山慎三監督の「岬の兄妹」と同様に
「確かに社会のどこかに存在するが、
多くの人が必死に目を背けている現実」を
まざまざと目の前
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福田村事件(2023年製作の映画)

4.3

さすが、森達也監督作品。
過去にもオウム真理教や佐村河内守のドキュメンタリー映画で
世間一般とは「別の視点」を世に問うたが、
本作もまた「1923年、関東大震災前後の福田村」を通し、
現代社会を鋭く批
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人間失格 太宰治と3人の女たち(2019年製作の映画)

3.5

宮沢りえの安定感、
沢尻エリカの華やかさ、
そして二階堂ふみの狂気。
あんな目で見つめられたらそりゃ太宰治も
逃げらへんわね。
太宰治ではなく、
太宰治に振り回された女性が主役。
だから、むしろ小栗旬
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6月0日 アイヒマンが処刑された日(2022年製作の映画)

4.1

本作のメッセージは「存在させない」ではないか。
共同体とその歴史に対する意味が重すぎて、あえて、そうする。
「6月0日」という、存在しえない日付は、
それを雄弁に語っている。

この日に実際に行われた
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エリザベート 1878(2022年製作の映画)

3.9

事前知識ゼロで見たことを深く反省している。
もちろん歴史上の人物としてのエリザベートは知っていたが、
ミュージカルや宝塚歌劇団等の演目として
すなわちエンタメがエリザベートをどのように捉えてきたかにつ
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バトル・ロワイアル(2000年製作の映画)

4.3

そもそも「県警対組織暴力」は、
キンジ・フカサクが「仁義なき戦い」シリーズを通して行った数々の実験的な試みを活かし、
バランスよく構成した、総決算的なものではないかと思う。
(菅原文太や梅宮辰夫が警察
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ローマの休日 4K レストア版(1953年製作の映画)

4.5

粋なストーリーでした。

それが嘘だと分かっていても
相手を傷つけないために
そして損得勘定を超えて
どこまで誠実に振舞うか、
それが男の本当の優しさであること。
大人の女性が嘘をついてまで守りたい何
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春に散る(2023年製作の映画)

3.8

ボクシング映画としてはベタな展開であり、
いくつか起きるサプライズも想定内のもの。
すなわち、寅さんとか水戸黄門と同じような感じで
安心して見ていられる。

そもそも沢木耕太郎の原作が
めちゃくちゃ良
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ノルウェイの森(2010年製作の映画)

3.5

ハルキニストから酷評されるのは理解できる。
村上春樹の「ノルウェイの森」の世界観に触発された作品という距離感であればアリだと思う。

マツケン、菊地凛子が上手すぎ。

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)

4.5

ストーリーのジャンルとしては、
「強盗の仲間割れ」であり、オーソドックスではあるものの、
なるほど、この角度で切り取ると、
また、この順番でエピソードをつなげていくと、
こんな風に深みが出てくるのか!
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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

3.8

最初の1時間はツラかったけど
人間関係とキャラクターが明確になってからは楽しめました。
ラストシーンが秀逸です。

リボルバー・リリー(2023年製作の映画)

3.9

キャスティングに成功している作品。

冒頭のシーンは、綾瀬はるかと野村萬斎。
「この作品のストーリーや世界観は脇役が作ります。
綾瀬はるかはアクションに集中しています」と宣言しているようだったが、まさ
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キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)

3.9

作中でも発言あるように、
圧倒的に不利な戦力差を覆すには、
まさに「将の力量」が求められる。
この点、戦略レイヤーの話であるが、
映画の中心は、現場の戦術・戦力レイヤーのエピソード。
戦略レイヤーでの
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

2.2

宮崎駿の暴走を止められなかったスタジオ・ジブリのガバナンスの問題。事前にプロモーションを行わなかったのではなく、行えなかったのだと思う。それが「中の人」のせめてもの抵抗であり、メッセージか、と。スタジ>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.1

監督のルーカス・ドンは、
前作「Girl」においては、バレエを「女性性」の、
本作品では、アイスホッケーを「マチスモ」の象徴としている。
いずれも思春期という、心と体、周囲との人間関係の変化を通し、
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さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.8

映画という表現方法の雄弁さを感じました。
マーベラスの一言に尽きます。
ぜひシアターでご覧ください。

京劇の演者や作品の演じられ方がその時々の政治に翻弄されていく様を描く。
劇中で、複数回「覇王別姫
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.3

本作は連続殺人鬼の女性が主人公であり、
「そういうシーン」は、これでもか、これでもかと出てくる。

しかし何かがおかしい。

あまりにもわかりやすすぎる展開とどこかで見たようなステレオタイプな「そうい
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Girl/ガール(2018年製作の映画)

4.0

主人公ララのバレリーナとしての才能に対する周囲のジェラシーも見えて
ララが抱える葛藤が二重、三重になっており、
重くて苦しい。
ギフテッドな子供を支える親の物語としても受け取ることが出来る。
ドキュメ
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ヒート(1995年製作の映画)

4.5

追うアル・パチーノ、追われるロバート・デ・ニーロ。
この2人が画面に登場している時点で
贅沢かつハイカロリーな圧がある。
良い意味でベタなハードボイルドな展開で
2時間50分の尺があっという間に過ぎて
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蒲田行進曲(1982年製作の映画)

4.7

いつぶりだろうかというくらい久しぶりに「蒲田行進曲」を見た。
新宿ゴールデン街で、最近上映された映画についてあれこれ常連さん達と議論しているときに年上の、結構出来上がった先輩が、「お前、調子に乗るなよ
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エリック・クラプトン アクロス24ナイツ(2023年製作の映画)

4.5

一番脂が乗っている時期ではなかろうか。
キラキラしていた、眼福。
レイラのオーケストラバージョン、神がかっていたわ。

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)

4.5

本作の監督である今泉力哉と濱口竜介を知ったタイミングがほぼ同時期であった為、私は無意識で彼らを比較してしまう。

私は濱口竜介の作品であれば「ドライブマイカー」よりも「寝ても覚めても」、さらに「ハッピ
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アマンダと僕(2018年製作の映画)

4.0

大切な部分はあえてセリフにしない、説明的でない作品。
街並みと自転車のシーン、とても美しい。
抑制の利いたストーリー展開で
他の作品ならもっと大騒ぎするであろう理不尽も
淡々と淡々と描かれていく。
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渇水(2023年製作の映画)

3.0

劇場公開のタイミングが是枝監督の「怪物」と同じで、
本作と比較し、こちらを高く評価しているレビューもあるが、
是枝作品に苦手意識を持っている私でも、
それはさすがに是枝に対して失礼だろうと思った。
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アメリ(2001年製作の映画)

4.1

20年ぶりくらいに「アメリ」を見た。

ちょうど辻村深月の小説「傲慢と善良」を読んでいたのだが、
そこに登場する坂庭真実とアメリの感性がシンクロする部分が多かった。
また映画的な誇張と省略によって
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鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)

4.6

最近の私のシネマライフは
ごしゃごしゃしておりまして。
「鬼龍院花子の生涯」が特に響きました。
夏目雅子の有名な「なめたらいかんぜよ」ですが
「どきや、ワテは高知九反田の侠客、鬼龍院政五郎、鬼政の娘じ
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ダーティハリー(1971年製作の映画)

4.5

クリント・イーストウッドについて、
1971年の「ダーティー・ハリー」における躍動感と
最近の「運び屋」「クライ・マッチョ」の枯れた演技を比較すると
松田優作やショーケンには、もっと長生きして「和製ク
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怪物(2023年製作の映画)

4.4

是枝裕和監督作品には
「説明的過ぎること、それが時に露悪的であること」
という特徴があり、
相当警戒してシアターに向かったのだが、
本作においては音楽と脚本の2人の「サカモト」の影響で
それらの特徴は
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.3

余白が多い。
鑑賞後に印象的なセリフやシーンの意味を思い返して
ジワジワと迫ってくる。
ラストシーンのソフィーの笑顔に
シアターでも号泣したが、
数々の考察やレビューを咀嚼してから
もう一度見ると号泣
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アイリッシュマン(2019年製作の映画)

4.5

私は、是枝裕和監督作品とはまったくテイストが合わず、
彼の作品はほとんど見ているものの、だいたいがNG。
「万引き家族」もどこが良いのかさっぱりわかりません。
是枝作品のテーマの切り取り方は理解できる
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

4.5

母親でもあろうとする彼女なりの強さ、
半径3メートルくらいの視野、
せいぜい来週までの時間軸で構成された世界観。

マイスモールランド(2022年製作の映画)

4.1

難民問題とインビジブルピープル。
この作品のような理不尽を日常的に感じている人は多いのだろう。

主人公である女子高生は
推薦入試での大学進学を狙えるくらいマジメに高校生活を積み重ね、
クラスの友人か
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AIR/エア(2023年製作の映画)

4.3

痛快の一言に尽きる。
NIKEがブランドとしてイケてない時代に
「エアジョーダン」を通してジャイキリを達成するストーリー。
結果はわかっていても、
いや、わかっているからこそのスカッと感かもしれない。
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TAR/ター(2022年製作の映画)

3.8

ケイト・ブランシェットが
完全に主人公であるリディア・ターと一体化し
ドキュメンタリーのように淡々と進行していく為、
3時間弱の長尺が気にならない。
引き込まれていた証拠だろう。
作品の主題はまさに狂
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