本作は連続殺人鬼の女性が主人公であり、
「そういうシーン」は、これでもか、これでもかと出てくる。
しかし何かがおかしい。
あまりにもわかりやすすぎる展開とどこかで見たようなステレオタイプな「そういうシーン」の連続。
グロテスクではあっても、怖さがない、まったくない。
「ただただ人がたくさん死んでいくコント」のような。
もちろんコメディとして描かれているわけではない。
テイストは、正しくホラー映画である。
いや、テイストではなく、フォーマットというべきか。
この点、毒親がとか、女性の情念がとか、
パーソナリティ障害がとかそういう角度から真面目に本作を分析しているレビューも多数ある。
しかし、これ、同じA24作品で言うなれば、
クオリティのさらに低い「ミッドサマー」として受け取るべきではないか。
細かい所作や表情、セリフに意味を込めているように「見せている」だけで大した意味はないと思う。意味を求めた時点で「負け」のような気がする。
豚の丸焼きにせよ、ワニにせよ、
無駄にグロテスクな描写が多いのも「ネタ」として受け取るべきであろう。
本作の途中から苦笑の連続で、
ラストの主人公の表情を見るともう爆笑するしかなかった。
A24と言えば、最近であれば「アフターサン」のようにトラウマになるくらい心をえぐってくる作品もある一方、
このような「どうしようもない」作品もある。
この振れ幅の大きさこそ、A24の魅力とも言えるだろう。
個人的にはもう二度と「ミッドサマー」は見ないと思っていたが
本作を通してある意味でのA24っぽさへの適切な距離感と温度を得られた。
また機会があれば、見直しても良いかなという気持ちにさせられた。
もちろん爆笑する為に。