椿本力三郎

ビニールハウスの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
4.1
まったくキラキラしておらず、
地味で不器用でやることなすことすべてが裏目裏目に出る女性が主人公。
最初から最後まで不幸と絶望しかない作品。
ポン・ジュノの「パラサイト」を意識した「半地下はまだマシ」というフレーズについて上映中はずっと違和感があったものの、
ラストシーンの「とことんまでの空回りと絶望」を見て、
この女性の生活が家族と疑似家族によって支えられていたことがわかり、
家族へのアプローチに違いはあれども
たしかに家族を描いているという点において「パラサイト」と通底してることにやっと納得ができた。
自ら不幸を呼び寄せているとしか思えないが、
一生懸命にただただ生きていることがなぜか自傷行為になってしまっている。一方で、ここまでひどくはなくてもこういう人っているよなとも思わされる。
1時間40分の上映時間の中でほんの一瞬だけこの女性が輝くシーンがあるが、
それは疑似家族ではなく、実の家族である息子を想っているときのこと。
ラストシーンの余韻の作り方がとても良いが、切ない。