椿本力三郎

アイアンクローの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.1
プロレスそのものではなく、プロレス興行を通して「マチスモ全開の世界観がアメリカンドリームによって正当化されることで生じた歪み」が、さらに「家族という呪縛」によって強化され、逃げ場がなくなった人たちが描かれている。
すなわち、ある時代の成功とその影について、そしておよそファミリービジネスゆえの強さと脆さ。
同じテーマであればボクシングにおける亀田兄弟とか、相撲、歌舞伎、落語、世襲の政治家、経営者とか「家族(あるいは家族的な何か)」から逃れられない人たちの苦悩と葛藤にも通底する普遍的なものが描かれていると思う。
レスラー役の役者が見事にビルドアップされており、かなり作り込んでいるのだがプロレスそのものの描写がわりとアッサリとしているのは、そこに作品の主題がないから、だろう。
マチスモとアメリカンドリームの象徴としてあの時代のアメリカのプロレスは非常にわかりやすい。A24 らしい作品。