椿本力三郎

ローマの休日 4K レストア版の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

4.5
粋なストーリーでした。

それが嘘だと分かっていても
相手を傷つけないために
そして損得勘定を超えて
どこまで誠実に振舞うか、
それが男の本当の優しさであること。
大人の女性が嘘をついてまで守りたい何かがあったのだから。
そのダンディズムをグレゴリー・ペックが見事に体現している。
ダンディズムとマチスモの本質的な違いを感じました。
途中からアン王女も気づいていたように思うのだけれども
この男女の機微に落語の「芝浜」を想起しました。

そもそも本作のオードリー・ヘプバーンは
女優として一番バランスよく輝いていた時期ではないだろうか。
王女を演じることに何の無理も違和感もない。
彼女が躍動している様子が画面いっぱいに見られるだけでも眼福。
ぜひシアターで。

今回のレストア版には、
作品の最初と最後に淀川長治による本作の解説が入っています。
わずかな時間ですが、それも味があって非常に良い。
周辺情報の提供によって作品に深みが出るだけでなく、
淀川の本作への「愛の熱量」に刺激を受ける部分があった。
いや、そちらのインパクトの方が大きいかな。
いずれにせよ、淀川長治のおかげで映画体験がさらに豊かになった。