椿本力三郎

エリザベート 1878の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

エリザベート 1878(2022年製作の映画)
3.9
事前知識ゼロで見たことを深く反省している。
もちろん歴史上の人物としてのエリザベートは知っていたが、
ミュージカルや宝塚歌劇団等の演目として
すなわちエンタメがエリザベートをどのように捉えてきたかについて踏まえてから見るべきだった。
完全に私の準備不足で受け取り切れなかった。

身長172センチでヨーロッパ随一の美貌と言われたルックス、
作中で医者に語らせたように「一般市民の寿命」である40歳を超えても心身ともにアグレッシブな生命力、
その一方で皇后としての古典的な務めはきちんと果たしているという、
あらゆる意味でエリザベートは「異端、規格外」。
その「異端、規格外」っぷりを先鋭的に(時に露悪的に)表現している。
(皇帝の、決して美しくはない若い愛人との対峙のシーンは
エリザベートの気高さと儚さを感じさせた)

エリザベートにとって皇后という役割が窮屈だったように、
現代においても王政や貴族的なものと「個」の緊張関係は、時折、メディアを騒がせる。
本作は、そこからさらに進んで性別や親族、親子関係すらもただの記号に過ぎない(≒アイデンティティの一部でありすべてではない)というメッセージをエリザベートのあり方を通して語らせている。