本作の監督である今泉力哉と濱口竜介を知ったタイミングがほぼ同時期であった為、私は無意識で彼らを比較してしまう。
私は濱口竜介の作品であれば「ドライブマイカー」よりも「寝ても覚めても」、さらに「ハッピーアワー」が好みである。
作家性の高さ・濃さをそこに見ているのだろうと思う。
本作は、今泉力哉の作家性がフルフルに前面に出ており、
ここが彼の源泉なのだなと非常に腹落ちした。
繊細であり、残酷。
今泉力哉の一連の作品と作風は
これらのキーワードがキーとなっているように思う。
「mellow」にせよ、「his」にせよ、
「パンとバスと2度目のハツコイ」にせよ。
本作は冒頭の10分で一気に作品の世界観に引き込まれ、
そこで張られた伏線もきちんと回収される。
少し無茶な展開と人間関係の設定を通し、
粗さの残る役者の良さを見事に引き出している。
この「あえて」そういう役者をキャスティングし、
リアリティを際立たせる手法が、
初期の今泉と濱口の監督としての共通点なのだろう。