椿本力三郎

2046 4Kレストア版の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

2046 4Kレストア版(2004年製作の映画)
4.1
中英共同声明で明示された「2046」年は、香港にとって極めて重要な意味を持つが、1960年代の最後の数年間と「2046」年を、
現実とSF小説を行ったり来たりする中で対比し、その大きな変化と不安を強調することで1997年の返還を経た2000年代初頭の香港の空気感を描く。
「花様年華」の続編というよりも、スピンオフとして受け取った方が良いと思う。さらに「欲望の翼」の世界観が好みであれば楽しめると思うが、そうでなければ難解で退屈極まりないだろう。
それくらいウォン・カーウァイの作家性が前面に出ている作品。
(1997年の返還前後の空気感について、ウォン・カーウァイは「恋する惑星」「天使の涙」で描き出していると思う)

さて「2046」、まず役者が豪華すぎる。もうキラキラしていて彼らを見るだけで充分に満足だった。
トニー・レオンを軸にチャン・ツィイー、フェイ・ウォン、コン・リー。フェイ・ウォンのたたずまいからくる非日常感は、日本語の練習シーンで増幅され、それによって劇中劇のアンドロイドにまったく違和感なく接続される。
さて、木村拓哉であるが、この作品においても一切ブレずにキムタクだった。
他の役者と比べると当然のごとく「浅くて薄い」。キムタクは、日本のTV生まれのドラマ育ちだと痛感させられる。映画のスケールにまったく合っていない。声もそう、立ち振舞いもそう。なぜキムタクを起用したのかについては色々な大人の事情もあるのだろうが、あえて「浅くて薄い」存在を入れないと成立しないくらい、香港の俳優陣のバランスが濃すぎるとも言える。
金城武だとかえってバランスが取れなかっただろうと思う。