椿本力三郎

THE FIRST SLAM DUNKの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.0
原作では脇役のリョータをあえて中心に据え、
彼の過去のウェットで人間的な部分へフォーカスしていく軸と
「最強」山王工業高校との対戦というチームとしてのクライマックスをもう一方の軸として同時に走らせることで原作の熱烈なファンにも新たな視点を与え、作品に分厚さを持たせるという映画的な演出。
それに加えて音響による臨場感の強調という映画「館」の最大の強みもフルフルに活かされている。
すなわち、映像化でも、アニメのリメイクでもなく、
正しく「映画化」であり、映画館で見るべき作品であることは間違いない。
また、この作品から受ける印象や感動は、観客が原作を「いつ、どういう熱量で受け取ったのか」に大きく左右されると思う。タイトルで「THE FIRST」と謳われているが、リョータ以外の登場人物(たとえば流川、三井、あるいは小暮)を主軸としたシリーズ化もあり得るのではないかと思った。ただ、リョータを前面に出した「スラムダンク」の再構成という、エッジの効いた企画を超えるには、相当な工夫が必要でははいかと思う。それくらい「ああ、その角度があったか!」という印象を受けた。
もちろん原作未読でも充分に楽しめる作品であることは蛇足ながら付記しておきたい。