kekqさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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リズと青い鳥(2018年製作の映画)

4.1

繊細すぎる。

ドラマは本当に大したことは起きておらず主人公ふたりが声を張ることもなく女子高生のグロテスクな内的葛藤を中心に砂浜の砂を手ですくうようにサラサラと美しく流れていく。

ただ、ほんの僅かな
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.5

アルコールの功と罪。

中年男性の危機を若者のような短絡的な発想で乗り切ろうとする切なさに溢れた物語。

テーマがテーマなだけに説教くささは否めないが、最終的にたいした反省も後悔も行動変容もしておらず
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.7

見るものと見られるものによる異色の闘い。新しい困惑と興奮に満ちた刺激的なエンターテイメントだった。

後半の最新技術で画面をブンブン振り回すアクションも超かっこよかったが、特筆すべきは前半の圧倒的なグ
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.9

「ランボー」と並ぶ放題の成功例。「THE PIANO」に「レッスン」を付けたことで語感が締まり、人間同士の生々しい営みが表現されている。素晴らしいセンス。

失語症で子連れの未亡人が会ったこともない新
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ライトハウス(2019年製作の映画)

4.1

閉鎖環境が育む凄まじい狂気と解釈の多重性を許容する実験的なプロット。陰気な中年男二人の会話劇がどうしてここまで面白いのか。鑑賞から一日たち他のレビューを読んでスコアが0.3上がった。

正方形の窮屈な
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神々の山嶺(2021年製作の映画)

3.9

山に取り憑かれた男たちの挑戦と狂気。
谷口ジローと日本へのリスペクトが過度に詰まったフランス産アニメーション。

「え?スタジオぴえろの新作?」と思わせるほど日本の描写がなんの違和感もなさすぎてヤバい
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.2

A24からのアカデミー賞に対する回答。
傑作ひしめく2022年を制したのは、驚くほど奇妙で驚くべきアイデアと戦略に富んだ怪作だった。なんだよ最高じゃねえか。

いまさら言及するまでもないが、現在この
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快楽の漸進的横滑り(1974年製作の映画)

3.5

アーティストきどりの可憐な子羊が宗教の手により淫靡な悪魔へと変貌していく皮肉で背徳的な物語。邦題が良い。

「これがワイの芸術や!」という主張を全面に出した作品が好きな人、難解で散文的なストーリー展開
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

3.8

人生の節目を切り取り、美しく繋げると映画になる。どこか既視感があるなと思ったらダニー・ボイルの「スティーブ・ジョブズ」だった。

時間を上手に使った演出がとてもインテリジェンスで面白いが、なんでもない
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ベルファスト(2021年製作の映画)

3.9

オープニングから本編に入る瞬間に「すごい!」と声がでてしまった。丁寧に丁寧に作り込まれた映像が本当に素晴らしい作品。

歴史に残る混沌に翻弄されながら、あくまで一つの家庭の日常にフォーカスが当たってい
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.9

人間の映像理解能力の限界に挑戦する映画。

基本的なルールはシンプル。ノーラン作品なのでマクロからミクロまで一分のツッコミも許さないほど世界設定をガチガチに作り込んでいるのも理解できる。だがいかんせん
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テリー・ギリアムのドン・キホーテ(2018年製作の映画)

3.6

ついに監督の宿願を果たしたドン・キホーテ。
「ロスト・イン・ラマンチャ」を経てそれでも作り切られたことに並々ならぬ思い入れが感じられる。

異なる現実世界の住人が現実世界とコミュニケートすることによる
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ルーム(2015年製作の映画)

3.5

これは…。もう少しファンタジックで暖かなドラマを想像していたら思いのほかリアル、それもリアルの一番キツい部位をわざと取り出して観客をイジメ抜くような映画だった。

前半パートが意外とあっさり終わり「え
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.3

殺した人間と殺したい人間。抑えた想いと抑えきれない想い。

特殊な舞台演出の現場を緻密に描きながら、硬くもつれた心の結び目がたがいに解れあっていく。

陶酔するほどリズミカルで、演技も演出もすべてがは
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.4

誰よりもウルトラマンを愛する人が誰よりもウルトラマンを愛する人たちのために作った映画。メフィラス星人のフォルムがかっこいい。

異常にこだわり抜かれた部分ととんでもなく雑な部分のギャップが激しく、ウル
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バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

3.9

いかにも中年らしい、しみったれた不安や憤懣を圧倒的な映像表現で堪能する174分。

「バードマン」からエンターテイメント性を捨て去り、メキシコと身内と自分自身に矛先を向けた無数のメッセージをかなり直情
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エヴォリューション(2015年製作の映画)

3.0

少年と女性しかいない島。なにかが起きているような起きていないような。
映像専攻の学生へのレポート課題としてよさそうな作品。

非常に寡黙な作品で、少なすぎる情報とタイトルからこの世界全体の設定を推察す
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映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ(2022年製作の映画)

3.5

東京に生きる普通の動物たちの異常なドラマ。テレビシリーズが大好きで、劇場版も十分に楽しめた。

ディスコミュニケーションを前提としたコミュニケーション。これだけ会話量が多いにも関わらず、すべてに漂う白
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洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.0

まあ面白いドラマ!
1956年東京。生き詰まった若いふたりが流れついた遊郭洲崎パラダイス、その入り口にある飲み屋と蕎麦屋の物語。男の駄目っぷり、女の業の深さ、そして寒々しく輝くネオンサインのフォントが
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スキャンダル(2019年製作の映画)

3.7

アメリカ最大のテレビ局がいかに腐って狂っているかのその部分を最大限に誇張して喧伝する映画。これを堂々とメジャー映画に仕立てるこの国の感覚は壊れすぎていて素晴らしい。

同じ山の頂きへと歩む3人の女性。
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

3.9

これは邦題がいい仕事。「燃ゆる」「女の」「肖像」。リズムと古語の引っかかり、生と死を同時に暗示させる言葉のエネルギーが高い期待を抱かせ、余すことなく応えてくれた作品だった。

描く者と描かれる者の視点
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.4

青春ドラマとしてとても清々しく、歌声は心に響く説得力があり、ロケーションも美しく、お父さんが最後まで手を緩めることなくキツメの下ネタをかまし続けるのも素晴らしかった。

とはいえこのDiversity
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.5

90年代半ば。自分の無力を嘆く少年とクールでヤバいギャングたちとの交流。この時代がここまでノスタルジックに描かれることに少し驚いた。

当時世界中が憧れた西海岸のカルチャーを担う若者たちの厳しい現実、
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ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(2016年製作の映画)

3.9

ニューヨークが誇る知の殿堂。その営みの断片を様々な側面から切り貼りし続けた3時間半。ドキュメンタリー定番のナレーションやテロップはほぼ無く、インタビューも一切なし。ただひたすら「図書館に用事があって何>>続きを読む

ジョン・ウィック(2014年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

なにも考えずに観られる映画が観たくなり鑑賞。期待以上になにも考えずに観られる映画でとても面白かった。

シリーズ化も納得の斬新かつ素晴らしい点がたくさんあるが、せっかくなので最大の敬意をもってツッコミ
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風が吹くまま(1999年製作の映画)

3.8

イランのすごい僻地からお届けするロードムービー兼お仕事ムービー。アッバス・キアロスタミ初体験。

これはいい退屈。
主人公が基本「待つ」ことを使命としており、悪意を感じるほど似たようなシーンがループの
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.3

こんなことあるのか。2時間ずっとずっと面白かった。

冒頭から畳み掛けるような圧倒的密度の見せ場に次ぐ見せ場、ドラマに次ぐドラマ、そしてオマージュに次ぐオマージュ。80年代のご都合主義で勢い任せのエン
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セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター(2014年製作の映画)

3.8

映画監督が写真家を撮る映画。映画で写真を観るというのもあまりない体験だが、写真だけで映画が成立するほど一枚一枚のエネルギーがみなぎっている。

「PINA」のときも感じたが、ひとりの人間の歴史と内面を
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

うああああこれは凄い…。なんという脚本力と演出力。冒頭からの不可解さと不穏さに一気に引きずりこまれ、中盤からラストにかけてのドラマの緻密さに苦しいほどハマってしまった。

とてもパーソナルな復讐劇であ
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はちどり(2018年製作の映画)

4.3

こんな映画素晴らしいに決まっている。1994年韓国、14歳女性の濃密な日常。

とにかく画が静かで陰鬱。民度が低く仲も悪く性格も悪い家族と退屈な学校の描写が延々と続く。なのにずっと見てしまう。丁寧に丁
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タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら(2010年製作の映画)

3.5

人相の悪いおじさん2人VSパリピ大学生、誤解が殺戮を生むキャンプ場での豪快な悲劇 inカナダ。

基本的にはすごい勢いでドタバタ人が死ぬのを楽しむコメディだが、疑心暗鬼に駆られた人間がどこまでも誤った
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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

3.9

これは、詰め込み方が上手すぎる。
実話ベース、戦争、スパイ、世紀の発明、友情、努力、恋愛、発達障害に同性愛まで絡めてこの見応え。全ての要素に説得力があり、エンターテイメントとしてちゃんと面白い。

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ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

3.7

老いて知る世界。
マイノリティとして、人間として生きることの過酷さを描き続けてきたアルモドバル監督の辿り着いた境地。

今まで許せなかった人たちや今まで感謝を伝えきれなかった人たち、ひとりひとりに慈し
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ディザスター・アーティスト(2017年製作の映画)

3.7

ひどすぎることでカルト的人気を誇る映画「THE ROOM」ができるまでを描いた伝記映画。世界最大の商業映画の生産地でありながら、やはりアメリカは映画に対する愛情も造詣もとても深いことを思い知らされる。>>続きを読む

アリス・スウィート・アリス(1977年製作の映画)

3.3

70年代の独特の空気感が不気味で心地よいサイコ・サスペンス。”スラッシャー”と銘打たれているが残酷描写は婉曲的で、多面的な心理描写により重きが置かれている作品。

主人公アリスを中心に全員の行動原理が
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ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

4.2

試写会で鑑賞。これは、良かった。誰もが共感できるお仕事あるあるを散りばめて非モテの恋愛がらみのわちゃわちゃがあって最後は都合よくみんなが幸せになる大団円!みたいな映画では全くなかった。普通に胃が痛くな>>続きを読む