山に取り憑かれた男たちの挑戦と狂気。
谷口ジローと日本へのリスペクトが過度に詰まったフランス産アニメーション。
「え?スタジオぴえろの新作?」と思わせるほど日本の描写がなんの違和感もなさすぎてヤバい。
ふた昔ほど前の東京、平成の頃に嗅いでいたタバコ、排ガス、古い工業オイルの臭いのする都会のごみごみした雰囲気が不快なほどよく描けている。
人、特にオッサンの日本人臭さが秀逸で、日本映画や日本の風俗について相当調べ上げているのが伺える。このレベルで日本人がフランスのドラマを描けるとは到底思えない。
登山のシーンはまた別の生々しさがあり、山を登ることがいかに常軌を逸した命知らずの行為かが嫌と言うほど伝わってくる。
もし自分の子供が登山家になりたいと言ったらこの映画を見せて思いとどまらせたいほど。
変なところで感動しまくれるが、アニメ作品としても見応えがあり、ドラマもとても良かった。バンドデシネ→ジャパニメーションの歴史的な流れが垣間見えるのも価値が高い。