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ノマドランドのkekqのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.4
観るのが20年早すぎた映画。自分もいつかこの作品に共感を持って接する日が来るのだろうか。

大きな喪失を抱えたまま時が過ぎ、もはや失ったものを嘆くことも慈しむことも取り戻すこともせず、老いていく肉体と共に乾いた荒野を彷徨い続ける。
他人にも自分にも大きな関心を抱かず、大きな期待も寄せないため、誰に対しても無私の優しさを持って関わることができる。
その反面、世俗の世界との関りを避け、無自覚に数多の欲と執着に絡まることを幸福とみなす資本主義の世界には冷たく背を向け続ける。

考えていけばいくほど、これは仏教の映画だ。
「諦める」という言葉には、ものごとへの願いを断ち切るという意味と、真理を明らかにするという意味があると最近知り、そのニュアンスがあまりにも当てはまり過ぎている。そう考えるとお寺も説法も持たず未分化な状態で放浪する気の毒な仏教徒のお話にしか思えなくなった。

アメリカでは最高の賞を取るほど称賛され、日本人の私には退屈極まりなく感じたのもそのせいかもしれない。仏教が退屈なのではなく、私たちにとってどことなく身近な既知の観念が描かれているだけなのだ。
最大の疑問は、どうしてこれをドキュメンタリーではなく映画として撮ったのかということ。フィクションである意味が全く分からない。この疑問を抱いたことにこの映画の価値があるのだろうか?

やはり20年観るのが早すぎた気もするが、20年後にはもっと楽しい映画を観て生きていたい。
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