8Niagara8さんの映画レビュー・感想・評価

8Niagara8

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母のおもかげ(1959年製作の映画)

4.6

いやはや素晴らしい。
叙情的で、感動。
決して映像が訴えるものが多いわけではないが、自然な感情の発露は確かなるエネルギーを持つ。

純粋無垢な小さな義妹の存在がコントラストになり、少年の葛藤と情動の輪
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冬の旅(1985年製作の映画)

4.2

パンキッシュである一方、側から見れば怠けているようにも。
自由とは元来人間銘々に帰属するものであり、それを外的に規定など不可能なものである。ただし、その自由についてエゴを拡大し過ぎることの身勝手さも同
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ローラ(1981年製作の映画)

4.8

ファン・ボームは謂わば合わせ鏡的にローラとリンクしている。
資本主義における社会的な振る舞い、淫売的なその行為について彼は半ば自覚的に堕落していくわけであるが、それは彼の立場について政治的な外からの要
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

5.0

やはり絶対悪の否定か。
自然の雄大さにフォーカスする地平まで続くようなショットの数々。
圧倒的映像と会話劇による没入感に時間を忘れる中での、突然のラスト。あまりにも多くの余白を残しており、この世界の片
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.8

抑制的な節回しながら、寧ろ感情が迸るのを感じる。些細なきっかけで一気に感情が流れ出る。
そしてどれもロールプレイング的な要素が強い。
映像、演出も引き算で構成されているのを感じ、会話劇が一層際立つ。
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蛇の道(1998年製作の映画)

4.9

ヘビーで、あまりにもグロテスクであるが大傑作。
ニヒリズム、ショットの美しさ、緩急のついた展開、会話の面白さ、あらゆる黒沢清的要素が高い次元で噛み合うとこうなるというのをまざまざと見せられた。

杜撰
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セリーヌとジュリーは舟でゆく(1974年製作の映画)

3.8

凄かったけど、長いし、難しいし、大変だったな。
ちょくちょく笑えるシーンがあって助かった。
パリの街を眺めているが故に、SF的設定に移行していくのが、やや大変だった。白昼夢のようで、心地が良くなっても
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天使の復讐(1981年製作の映画)

4.0

トラウマというよりも変貌ぶりに釘付けに。
復讐が度を越して、残忍さが増す様は食傷気味だが、撃った後の画がすっきりしているギャップはかなりの皮肉である。
外に出る醜悪たる男性性というものに反目したが、そ
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彼女たちの舞台(1988年製作の映画)

3.5

めちゃくちゃ長いし、ストーリーは凡庸だけど、不思議な引力。
現実と虚構の境目が段々分からなくなるし、その外には映画という大枠もある。ミュージカルが大前提にある設定が効いている。
曖昧さを掻っ攫い、力強
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パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)

3.7

ビビットな映像。
街中での撮影がイカしてる。自然光の採り方がいい。
いかんせん長いんだけど、まあまあ見れた。
関係ない人たちが結局繋がっていく感じ好きだなー。
みんな側から見れば些細なことを追いかけて
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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

3.8

宗教の持つ強欲さをありありと。
カルト的側面もやはり大なり小なりあるのだという再認識させられる。
信仰に対する冒涜とも言えるような言動は誰でも閉口とするだろう。
権力に浴するとはこのことなんだろうなと
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メメント(2000年製作の映画)

4.3

結局観てなかったこれをようやく。
それでいてリアリティがあって、より実直な感じがして好き。
ノーランのテイストたっぷりだが、なんかこの時点でこれ作れてしまったら、もう変化球に走るしかなくなるなというエ
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蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳(1998年製作の映画)

4.3

復讐を終えた男の目的なき人生。
それは謂わば、終着を待つかのようなものである。『蛇の道』では生き生きとしていただけにそのギャップでもって新島の疲れが一層増す。
しかしながら、皮肉にもここでは死はどこか
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ガールフレンド(1978年製作の映画)

3.6

女という型にはまること。
ハマろうとするスーザンと図らずともそのレールに乗っかったアン。
このアイロニカルな設定の作り方がうまかったとは思うけど、アンを描くのはもっと丁寧なら解像度が上がっただろうに。
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HANA-BI(1997年製作の映画)

4.7

台詞の数も少ないし、引き算の美学を感じる。
西はニヒルで厭世的な雰囲気を纏うし、かなり疲れている。
『ソナチネ』よりも実直に愛を映している。

ラストシーンがあまりにも美しく、生身の人間を見る。それま
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男たちの挽歌(1986年製作の映画)

3.4

思ったよりストレートで泥臭い。
序盤のカッコよさがピークかも。札に火つけるところとか。
危うい男色的な匂いがするのは良かったな。

街の灯(1931年製作の映画)

4.3

凄いテンポ感。全く飽きない。
二人の関係を軸にしながらも、脱線に脱線を重ねるが、それぞれのカットがどれも面白くて、ブレない。チャップリンの姿はユーモラスでキュート、魅力に溢れる。
カメラは第三者的な視
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PASSION(2008年製作の映画)

4.7

会話劇であり、群像劇であり、どこか青春譚でもあり。
あまりにも残酷で生々しく、絶望する。
しかしながら、実にリアリティを持って解像度の高い映像が圧巻で思わず笑みも溢れる。
人間の狡さ、醜さも含まれるが
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回路(2000年製作の映画)

3.7

ホラーなんだけども、やはり構図が美しい。映像美。頽廃的な映像が良かった。
黒沢清らしいニヒリズムに直結するような閉塞感がどこかミレニアム前後のそれとリンクするようにも感じる。
今観るからあんまりだが、
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家族の肖像(1974年製作の映画)

3.6

外側から見て、そして、そこの中に入り込んで、家族というものを細分化し捉える。
家族だから運命を共にしなければならない。喜び、苦しみ、感情その全てを共有せねばならないわけで、それができないのならば、血縁
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日本の夜と霧(1960年製作の映画)

3.4

当時の共産党組織のの欺瞞と限界を感じた。
そもそものイデオロギーを共有しながら、その中で様々な分断が生まれる。
長々と理想と現実を語り白熱する議論から、学生たちの生身の心情と闘争には多少なりとも真実性
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罪と罰(1983年製作の映画)

3.9

終盤にかけてひたすらにかっこいい。
このハードボイルドさ具合はカウリスマキにしか出せないなと思いつつ。
顔に寄ったショットも彼らしい。
犯罪は揺るがず存在しつつも、人間世界の不幸も対照的にあり。
登場
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はなればなれに(1964年製作の映画)

4.2

若さ溢れて、瑞々しくダサく軽薄ながら、それがまたいい。それこそ軽妙洒脱。
刹那的な3人の姿。
ショットがいちいちかっこいい。
ダンスシーンは言わずもがな、ルーヴルのシーンも最高。
文字通りスタイリッシ
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美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

4.3

生命力を強く感じた。
あらゆる死を背負うナン・ゴールディン。ラディカルでパンキッシュな過去を持つ彼女だからこその説得力があった。
題の通り、美なるものと殺戮性が同じところに孕む現実の捉え方が上手かった
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県警対組織暴力(1975年製作の映画)

4.1

エモーショナルでもあり、重厚感ある人間ドラマ。
ホモソーシャルな世界で、さらに男色的な交錯が実に魅力的。
警察とヤクザ。対照的なはずの両極が反目しながらも、接近する様はインモラルでありながら、時代性も
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カリスマ(1999年製作の映画)

3.9

木を燃やすシーンは最早『サクリファイス』だし、内容的にも相通ずるものがある。
黒沢清的ニヒリズム。
この世システムの再構築を含め、人間世界の堅持を望みながら、むしろ終末に近づく。
加害性と自由。その両
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キッド(1921年製作の映画)

4.3

血は繋がらずとも、親子なる関係は築かれるわけである。万引き家族にも通ずるような精神性。
放浪するチャップリンは卑しいかもしれないが、勇敢で、ファニーで、愛に溢れる。
ファンタジーも感じさせる半ば強引な
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AWAKE(2019年製作の映画)

3.7

目に見えないけど途轍もなく熱い。
吉沢亮と若葉竜也が対照的ながら、好演で大仰にならずに自然で。
過去からの因縁やリベンジ、プロとしての意地、いろんなものがありながら、結局将棋への情熱と負けず嫌い。
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

3.6

ホラー演出に拍子抜けしつつ、その中で何とか普遍性を見出す。とはいえ、ホラーになる展開も不自然ではないように辻褄は合っている。
暗いながら傍観的な映像は見易く、気付いたらエンディング。
人の温もりを追い
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絞死刑(1968年製作の映画)

4.0

かなりどぎついブラックコメディ。
と言いつつも、この世界の歪みを看破している辺りは流石である。

映像はかっこいいし、長回しの見応えがある。
ただいささか冗長さを感じ、メッセージ性はかえって薄まったが
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放浪記(1962年製作の映画)

4.6

高峰秀子の名優たるわけはこういうところにあるよなと思いながら楽しんだ。
感情豊かに俗人的なキャラクター。
彼女が林芙美子を演じ文字通り記念碑的作品である。

産みの苦しみとは正にこのことで、全編の多く
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.2

こりゃ凄いわ。
良作サスペンス。

途中だれるかと思いながら、寧ろ終盤に向けて加速度的に面白くなっていった。
筋がいいし、ある種二転三転するのもテンポ良く。
いい意味で軽いコミカルさはありながら、中身
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四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

いささか演出が過剰に思いつつ。
カメラを向けることは眼差しを向けることである。そこから逃げ続けるのは彼の弱さである。目の前の人に向き合うことはない。
画面に蔓延るセルフィッシュはなかなか強烈で、人間の
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.8

ケイリー・スピーニー良かった。
美しいし、画面を一層映えたものにする。

概観を捉えた部分もあるけど、『エルヴィス』と対になるような感じが個人的に好印象。
プリシラという人間の悲哀に満ち満ちていて、彼
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ZOO(1985年製作の映画)

3.7

猥雑な雰囲気は何故か引力が強く、脈絡もないようなのに不思議と見続けられる。
シュールだけど、台詞の感じが好きだった。
それらに加えて、マイケル・ナイマンの仕事を筆頭に音楽の攻撃性が凄まじい。
変態性た
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.9

めちゃくちゃホラーなテイストも特に後半はあるけど、一周まわって楽しんだ。
もう文字通り狂女なんだけども。

ショットが強烈であまりに良くて、序盤で傑作だと確信してしまった。
内容より映像が素晴らしくて
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