8Niagara8

ローラの8Niagara8のレビュー・感想・評価

ローラ(1981年製作の映画)
4.7
ファン・ボームは謂わば合わせ鏡的にローラとリンクしている。
資本主義における社会的な振る舞い、淫売的なその行為について彼は半ば自覚的に堕落していくわけであるが、それは彼の立場について政治的な外からの要請によるものであると言える。
そうしたことからファン・ボームはローラにある種のシンパシーも抱きながら、同族嫌悪的な憤怒でもって接したとも映る。
ファスビンダーらしい美的な映像とこうした猥雑さのコントラストが見事。この危うげなバランス感覚はファスビンダーだからこそのものであると。

戦争が影を落とし、社会的な腐敗が見て取れる。しかしながら、全編を見渡せば、それはメタ的に眺める視点に立脚していることが分かる。事を荒立てなければ、社会や物事は機能するという皮肉。
こと当事者にとっては、穏やかな言動に合理性があるのも確かなのである。
そこに資本主義の下世話さを見る。
体面は良く、物事は進んでいくが、それにより内部でのデカダンスは隠される。
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