8Niagara8さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

8Niagara8

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僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)

4.1

母や妹との思い出の美しさは皮肉でやるせないコントラストである。
水の撮り方はやはり一級品であり、彼の美的センスは既に確立されていて、後の飛躍が想像に難くない。溝口的な構図の美しさを感じることが多く、何
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暗殺の森(1970年製作の映画)

3.7

長いものに巻かれるマルチェロ。しかしながら、少年期のトラウマを引き摺る。
確かにそのコントラストははっきり見て取れるが、やはり彼と権力性というのは切っても切れない関係にある。
ファシズムと彼の存在が決
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残菊物語(1939年製作の映画)

4.6

映像的な充実度と美麗さに息を飲む。カメラワークに惚れ惚れし、長回しに釘付けにされる。

男女の直情的ではない、より深く揺るぎない悲嘆を帯び、情感溢れた愛憎劇。
芸能世界という枠組みが一層家や恋愛の堅苦
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リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

3.7

キャラクターの配置の妙。
ジョン・ウェインの渋さは当然ながら、ディーン・マーティンがめちゃくちゃいい。
スタンピーがなんだかんだで物語の中心に居続け、嫌味もなく重要である。

こういう話の西部劇ってあ
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青春群像(1953年製作の映画)

4.0

各人各様って感じでとっ散らかりかねないが、傍観的に我々と同じ視点を共有するモラルドのナレーションがありがたい。
年少者が一番冷静かつ尤もな観点を持つのはよくあることで、今回もその例に漏れず。

夢と未
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仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

4.7

殴られるような強烈さ。90分もないのにここまで重厚さを持たせることが出来るのは驚くほどである。

看護婦と役者の患者という本来の関係性が崩壊し、自己認識の倒錯が生む超人間的な世界。
パワーバランスの逆
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グラン・トリノ(2008年製作の映画)

4.3

イーストウッドの名優たる理由。

口が悪く、偏屈で人の寄らない老いぼれの人生の最後。最初は嫌気が差すほどだったのに、途中から彼に魅力さえ感じるようになっている。
死に囚われ続け、過去がトラウマでもある
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第七の封印(1956年製作の映画)

4.8

オープニングからめちゃくちゃかっこいい。
宗教映画であろうが、かなり分かりやすく見やすくもある。
死という逃れることのできない絶対的なもの。それは定められているものでありながら、実は我々の生に常にまと
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Here(2023年製作の映画)

4.7

ゴーストトロピックよりもこちらの方が個人的には好み。

二人がどうやって出会うのかなって感じで観てて、そこからの邂逅とその顛末が素晴らしく、ラストシーンも大納得。
映像、音の時に溶け合い、時に歪に反目
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.4

夜の映像がとても耽美的。
小さな不運が思わぬ出会い別れと結びつく。人が少ない夜の街だからこそ、その出会いは一層刹那的に感じられる。
それが何かを生むわけでもないが、飛躍のないリアリズムが彼女の生命力を
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ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

5.0

凄すぎて言葉がない。
完璧と言っても言い足りないほど、計算尽くされた美しい構図は惚れ惚れする。
映画の映像的極致がここにある。
自然があまりにも美麗であり、時間や空間から解き放たれた宇宙が広がる。
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658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

3.3

脚本、演出の強引さ、あざとさは気になるが、菊地凛子が凄すぎる。

陽子に原因がありながらも、人との温もりある繋がりというものが足りていなかったという。感謝を言葉に出来るようになったことも成長であり、人
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.1

リョーハとの出会いは最悪そのものだが、その後の展開に愛情や友情ともまた違う素敵なものを見た。
そこにはそもそもの旅の意味合い、一緒に来なかった彼女の存在が一度崩れ落ちたことが多分に反映されている。孤独
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グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997年製作の映画)

4.1

とても多義的なGood という言葉。

ウィルは過去にしか生きられず、未来や自分と向き合うことができず。
蘊蓄男に説教しながら、形こそ違えど自分もそれと変わらぬ言動をしているのが皮肉的でありつつ、痛々
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

3.9

ラストシーンのカタルシス。泣けた。
僅かな一夏の間に愛を知り、かけがえのないものを手にしたんだなと。極めて象徴的なシーンである。
学校だけでなく、家族でさえ排他的で息苦しいような日常で、こちらもそこか
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一晩中(1982年製作の映画)

4.0

夜中の仄暗さでもショットの美しさは変わらず。寧ろロマンチックさを湛え、この時間帯ならではの感情的な何かを呼び起こす。
固定されたカメラはドキュメンタリーチックで、我々に傍観者の視点を与える。
音はおろ
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いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)

4.6

最初から最後まで辛いがストレートで、かつ繊細な絶妙な脚本と演技。文句なしである。
こうしたテーマの作品はそもそも御涙頂戴的に病気や死にフォーカスしてしまうことも往々にしてありながら、ここにはそんな綺麗
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.9

ジュヴナイル映画としての大傑作。
この時期特有の肥大していくエゴを持て余す自分と、自分を分かってくれない周りとのギャップに怒りやジレンマを覚えながら、生きることの難しさ。

レベッカさえも傷つけてしま
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ジャム DJAM(2017年製作の映画)

3.6

奇想天外なジャムの珍道中って感じで。
そんな様子はおかしくもあり、時にシリアスでもある。
まあそんなジャムが引き寄せるのもただ者たちではなく。彼女の奇天烈さには笑える時もあるが、ある種の無神経さも感じ
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奇蹟の輝き(1998年製作の映画)

3.3

ロビン・ウィリアムズの良さはたっぷり。
家族愛の揺るぎなさと回想との行き来はよかった。
視覚的な見応えはある。

とはいえストーリーは単純だし、セリフが説明的すぎる感も否めない。
総合的にはこれくらい
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カルメンという名の女(1983年製作の映画)

3.8

音楽と映像の強烈な印象。
ある面単調さはあるものの、行われる人間たちのなすこと、言うことは複雑で難解であり、その両立もなかなか凄い。
時折挟まる演奏シーン、これによる反復が案外効果的で。
構図や色彩は
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ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

3.8

プロットとしても映像的にも重たく、なかなかに排他的とも言える。
リアリズムは確かにあるのだが、姉弟この二人に流れる痛みは決して分かるものではない。対照的ながら彼らが持つ愛は当然周りを傷つけもするし、そ
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ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)

4.1

ひたすらに第三者的視点を置きながら、ランジュの動機について説明的な展開でもある。
ひとりだけ、極めて特権的存在のバタラが居なくなり、ようやく民主性が確立されたかというところからのその崩壊が実に象徴的か
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まなみ100%(2023年製作の映画)

3.7

共感できない、エモくもない、男のしょうもなさをここまで見させられて、途中どうするんだと思いつつ、ラストの持ってき方に妙なカタルシスを覚える。
結婚式のシークエンスが最高だった。

薄っぺらい感じで、上
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ほとぼりメルトサウンズ(2021年製作の映画)

4.4

ノマド的な生き方が我々からすれば非日常的であり、現代で忘れ去られた人間の営為を浮き彫りする。いささかの憧れを抱くが、切り取られているのは綺麗な部分で、言及されていた通り実際のところは難しさもあるのだろ>>続きを読む

この日々が凪いだら(2021年製作の映画)

3.5

否応なしに過ぎていく日常。
その日々に翻弄され、身近な人に寄り添えず、自分が分からなくなる時もある。
理想や幸せと現実のギャップ
その切り取り方はリアリティのあるものだったし、共感できる。
止まって欲
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凪の憂鬱(2022年製作の映画)

4.6

かなり徹底した日常描写。盛り上がりはするけど日常の延長な感じが良い。
凪の愚直さがあってこそ、成立する感じだし、ここ以外の日常は自分たちと同じように辛いことも多いんだろうけど、幸せもあり得る希望的だな
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境界線(1966年製作の映画)

4.1

人間が持つ二面性とか二律背反的なものを戦争を下敷きに。
シャブロルの演出やっぱり好きだな。感覚的なところにめちゃくちゃ魅力を感じる。
それが象徴的なラストシーンの演出はクリティカルで風刺的で、鳥肌もの
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レディ・バード(2017年製作の映画)

3.8

グレタ・ガーウィグの離れ業。

レディ・バードと母を巡る物語とそこから見える女の人生。
セックスや中絶、子供を持つことに対してかなりクリティカルに描いていて、そこには必ずしも幸福が確立されていないこと
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いとこ同志(1959年製作の映画)

3.7

ひたすらの孤独感。
勉強が第一のはずが、女や遊びに惹かれるシャルル。そんな感じは若者らしくその特権でもある。ましてやプレイボーイないとこがいるから尚更。兄弟でもなくいとこというのが絶妙に感情を揺さぶる
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若者のすべて(1960年製作の映画)

4.5

父の死により都市にありながら、それをきっかけにして崩れていく家族。長兄は結婚して母や弟は二の次に。
そんな具合で兄弟それぞれに責任がのしかかる。光明が見えかけるだけに辛くもある。

シモーネは自らの弱
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ケープ・フィアー(1991年製作の映画)

3.7

下手なホラーよりよっぽど怖いし、ロバート・デ・ニーロの怪演は凄まじい。
カメラワークを筆頭に演出の巧みさは流石スコセッシと言ったところで、ラスト15分はエネルギーを奪われる。

力に物を言わせるだけで
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第三の男(1949年製作の映画)

4.4

友の死を追う正義感とそこからのショッキングな裏切り。それでもなお友を信じようとし、そこに恋慕の情も重なって、実に人間的なテーマを背負う。
愛情と友情。

分かりやすくも練られた脚本、流麗なカメラワーク
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気のいい女たち(1960年製作の映画)

4.2

本当に嫌気が差すほど下品な男たちとそれを許してしまう女たち。
許してしまうとまでではないのかもしれないが、にしても男性性の捉え方が的確。
極めて象徴的なのだが、プールのシーンは嫌すぎた。最初は笑えたオ
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ミカエル(1924年製作の映画)

4.5

ミカエルというより、ゾレの物語である。
彼とミカエルの愛憎半ばする関係はクィアネスを多分に漂わせ、1世紀の時間的隔絶を優に飛び越える説得力を持つ。
特にラストシーンの美しさは印象的かつ衝撃的でもある。
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黒い罠(1958年製作の映画)

4.5

オープニングシーンはもちろん、長回しによる映像の迫力が凄まじい。
人物描写のためのショットや演出が素晴らしい。
カメラワークや画の美しさは特筆に値する。
特にラストシーンはダイアログ、ショット、演出全
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