8Niagara8

PASSIONの8Niagara8のレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.7
会話劇であり、群像劇であり、どこか青春譚でもあり。
あまりにも残酷で生々しく、絶望する。
しかしながら、実にリアリティを持って解像度の高い映像が圧巻で思わず笑みも溢れる。
人間の狡さ、醜さも含まれるが、そこには愛憎にある人間の本能的な部分をうまく描いている。
それは暴力的であるのかもしれない。学校でのシーンはとても重要なるものだった。暴力そのものよりも、その免罪符を得ようとする行為の方が暴力性を帯びていた。

やはり共依存的な関係は恋人にこそ可視化されるものである。騙し騙しやり合うことに慣れ切った生ぬるさは確かにある。
恋愛感情は本能的なものであり、説明的なものからはかけ離れている。しかし、いかんせん恋人関係は説明を要するという皮肉。
誰か許すことは感情とは対極にある、極めて理性的な行為である。特に恋愛行為とはパラドキシカルであるゆえ、困難なる行為なのである。しかし、自己を許さんとするのも事実であり。

絶対的悪というものがなかなか存在しないのが我々の生きる世界であり、だからこそ易々と傷付けることに無頓着だし、間違った自己愛に走り自分を守ろうとする。
しかし、根底に自分のことは何にもわからないかもしれないというアイデンティティの不安定さがあり、これがあらゆるシーンで効いている。
8Niagara8

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