佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

佐藤克巳

佐藤克巳

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春の饗宴(1947年製作の映画)

5.0

「ほろよひ人生」以来東宝のお家芸レヴューを前面に出したバックステージ物を、俳優復帰したばかりの池部良を新聞記者に、名門劇場閉鎖の噂と百万円宝籤当選者取材で、電気室技師藤原釜足、オペラ歌手轟夕起子、ジャ>>続きを読む

長屋紳士録(1947年製作の映画)

5.0

終始笑いっ放しのおかしみが、実父小沢栄太郎が息子青木放屁を引き取りに来てからの涙涙の感動は、名匠小津安二郎監督を以てしての人情喜劇映画の極地に達した傑作。占い師笠智衆が九段から連れて来た孤児を、長屋住>>続きを読む

春の目ざめ(1947年製作の映画)

5.0

石坂洋次郎原作「青い山脈」が同年連載され八住利雄、成瀬巳喜男がアイデア頂きの勢いで第1期東宝ニューフェイス久我美子を初主演に抜擢した、本家以上の出来映えの成瀬監督快心の傑作。旧制高等女学校生徒久我、木>>続きを読む

美はしき出発(1939年製作の映画)

3.0

コメディにも定評のある山本薩夫監督の原節子、高峰秀子共演の注目作だったのだが?キャプラ「我が家の楽園」を意識したのか?中途半端な凡作となった。

二人の世界(1940年製作の映画)

5.0

島津保次郎監督が、松竹で名作「兄とその妹」を撮った翌年に東宝移籍後製作された一本で酷評を叩かれた作品だが、父工作機械工場研究室長丸山定夫が、若い技師藤田進等の突上げと専務汐見洋等上層部の圧力の狭間に立>>続きを読む

東京五人男(1945年製作の映画)

5.0

精密爆撃により占領に必要な施設だけ残し焦土と化した東京の惨憺たる光景をロケーションの場とし、横山エンタツ、花菱アチャコ、古川緑波、石田一松、柳家権太楼の徴用工帰還五人組の活躍をミュージカル喜劇で戦争直>>続きを読む

續姿三四郎(1945年製作の映画)

5.0

黒澤明作品でも芳しくない評価が際立った作品だが、他流のボクシングと空手との対決の妙技の良さ、矢野正五郎大河内傳次郎が目指す柔の道、さいづち和尚高堂国典の姿三四郎藤田進の掟破りも許容する度量の大きさ、檜>>続きを読む

そよかぜ(1945年製作の映画)

5.0

松竹が本作でヒットを飛ばせば、東宝は翌月「歌へ!太陽」で対抗した様に、敗戦の鬱憤晴らしには音楽映画とばかりの鮮烈な明るさと爽やかさを持つ佐々木康監督の秀作だが、当時の評論家の酷評は凄まじかったらしい。>>続きを読む

敵機空襲(1943年製作の映画)

5.0

前年航空母艦よりのドーリットル空襲があり同年サイパン、グァム陥落で米軍のB 29の運用が可能になった事から、焼夷弾による空襲が想定された。米屋主人河村黎吉は、その情報を軍需工場技師上原謙から知らされ隣>>続きを読む

桃太郎 海の神兵(1945年製作の映画)

5.0

「桃太郎の海鷲」瀬尾光世監督の姉妹篇だが、より「ファンタジア」に迫ろうとした日本初の長篇アニメとしての価値が高く、不世出の天才漫画家手塚治虫に与えた影響が垣間見える野心作。冒頭からの猿、犬、雉に熊が加>>続きを読む

必勝歌(1945年製作の映画)

4.5

マキノ正博が草案者、田坂具隆総監督、清水宏脚本、溝口健二、大曽根辰夫、高木孝一、市川哲夫と監督が連なる松竹オールスターキャストの本土決戦に向けた緊張感漂う戦争映画の力作。神武建国以来の危機を提起し、外>>続きを読む

一番美しく(1944年製作の映画)

5.0

黒澤明監督作品で一番尊く美しい青春映画。光学レンズ製造工場に全国から集められた女子挺身隊の組長矢口陽子がリーダーシップを発揮し、生産ノルマ達成に向け懸命に労働奉仕する隊員達の健気さ、女子寮寮母入江たか>>続きを読む

愛の世界 山猫とみの話(1943年製作の映画)

4.0

中田秀夫「ラストシーン」で、撮影現場を取り仕切るのはチーフ助監督の権限と知ったが、本作は演出助手を市川崑が担当していて、青柳信雄監督らしからぬ斬新な映像感覚を支えたいたのではないか?と感じた。先ず、少>>続きを読む

雷撃隊出動(1944年製作の映画)

5.0

何度観ても心揺さぶられる戦争の核心を突いた山本嘉次郎監督、円谷英二特技撮影による戦争リアリズム映画の最高傑作。基地攻撃隊指揮水上藤田進、母艦攻撃隊指揮村上河野秋武、航空隊司令大河内傳次郎の参謀川上森雅>>続きを読む

加藤隼戦闘隊(1944年製作の映画)

5.0

山本嘉次郎監督、円谷英二特技の渾身をこめた、加藤健夫陸軍中佐藤田進の人間像を実録的に描いたセミドキュメンタリー戦争映画の傑作。陸軍名機隼の魅力を縦横無尽に展開した戦闘機部隊の実戦さ乍らの空中戦、空を劈>>続きを読む

俺もお前も(1946年製作の映画)

3.5

社員横山エンタツ、花菱アチャコの息のあった漫才芸風を、二人揃って一人前と下駄に例えて皮肉った社長菅井一郎の言辞を弄した偉ぶりに、二人は遂に堪忍袋の緒が切れて全社員の賛同を得るサラリーマン喜劇の佳作だが>>続きを読む

三十三間堂通し矢物語(1945年製作の映画)

3.5

東宝作品乍ら松竹下加茂で撮影と、終戦間際の厳しい環境がこたえたのか?成瀬巳喜男監督らしからぬ時代劇の不振作。もし宿屋女将が田中絹代では無く山田五十鈴だったらとも思えた。

愉しき哉人生(1944年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督の出世作「腰辯頑張れ」のゴム動力飛行機のフラッシュバックで親子対話する幻想的映像が思い出され、この作品のオマージュなのか?黒澤明「夢」の陳腐なファンタジーが想起された成瀬の牧歌的喜劇映画>>続きを読む

彼女の發言(1946年製作の映画)

3.5

戦後の風潮靴下と女は強くなったの典型長女田中絹代と入婿佐分利信、吉祥寺に別居次女水の江瀧子と夫高田浩吉の夫婦関係が危うい雰囲気と、母岡村文子の同族会社におもちゃの製造を進めたい佐分利と高田の思惑が絡む>>続きを読む

マライの虎(1943年製作の映画)

2.5

「シンガポール總攻撃」の現地ロケ副産物で出来上がった戦争アクション映画だが、演出が陳腐で物珍しさ以上のものは無かった。

芝居道(1944年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督芸道物映画の集大成。道頓堀五座が競う中、角座興行師古川ロッパは、日清戦争を題材とした新派劇で大当たりし、付人渡辺篤が割引券を街に配った案件に同業者志村喬が異議を挟んだが、儲け主義ではなく>>続きを読む

宮本武蔵(1944年製作の映画)

4.0

色々なバリエーションがある宮本武蔵映画だが、一乗寺の決闘から巌流島の決闘迄を史実のみの簡潔さが清い溝口健二監督の秀作。武蔵河原崎長一郎の武芸道一筋の名演に、仇討を捨て仏門に入る姉田中絹代の小間使いの美>>続きを読む

をぢさん/をじさん(1943年製作の映画)

5.0

配給制時代向こう三軒両隣の下町町内会の和気藹々感の絶妙さと、無類の世話好き好親爺工事監督河村黎吉としっかり者の妻飯田蝶子の名人芸の掛け合いが見事な渋谷実、原研吉両監督の人情喜劇の傑作。河村夫婦の恩人で>>続きを読む

怒りの海(1944年製作の映画)

4.0

海軍造船官、東大総長だった平賀譲の死翌年製作された今井正監督の中立的立場で描かれた人間ドラマの佳作。平賀大河内傳次郎等海軍の宿願八八艦隊が、華府軍縮条約で英米の圧力で潰され、無残にも廃艦、建造中止、軍>>続きを読む

不沈艦撃沈(1944年製作の映画)

4.5

東宝よりマキノ正博監督、小国英雄脚本、丸山定夫が参加し、国策映画不得手の松竹が、開戦前の諏訪?の魚雷製造工場での海軍からの要請倍増生産達成に揺れる現場の状況が克明に描かれたオールスター娯楽映画の力作。>>続きを読む

還って来た男(1944年製作の映画)

5.0

軽佻派を標榜する二人、織田作之助脚本、川島雄三監督による夢のデヴュー映画作品と云うだけで無く、私見では川島の最高傑作ではないかと考えている。南方帰り軍医佐野周二が、故郷大阪に向かう汽車で出逢ったハワイ>>続きを読む

ことぶき座(1945年製作の映画)

4.0

戦中隆盛を誇った芸道物映画に浪曲師二代目広沢虎造をジョイントするプロデュースしたマキノ正博好企画を、腕は確かの原研吉監督が名演出した秀作。8年前に釧路でことぶき座で看板を背負った浪曲師高田浩吉が、劇場>>続きを読む

決戦の大空へ(1943年製作の映画)

5.0

八住利雄の脚本が絶妙なのか?早撮り名人渡辺邦男監督にしては、志願制の海軍飛行予科練習生の育成、略称予科練の訓練日々を丹念に清々しく描いた青春映画とも見れる戦争映画の傑作。土浦海軍航空隊を舞台に、班長高>>続きを読む

サヨンの鐘(1943年製作の映画)

4.0

1938年、台湾台北州蘇澳郡蕃地タイヤル族の村で起こった事故で命を落とした、少女サヨンの実話を清水宏監督が映画化した佳作。西条八十作詞、古賀政男作曲の歌になり哀悼の鐘まで設置された美談が語られる。美し>>続きを読む

私の鶯(1943年製作の映画)

5.0

巨匠島津保次郎監督の満州映画協会・東宝共同製作、日本劇場未公開作品である本作は、ロシア革命、ボルシェビキ革命を経て満州事変、キメラ満州国建国迄の白系ロシア人亡命社会を描いた壮大な歴史劇であり、ロシア音>>続きを読む

蛇姫様(1940年製作の映画)

4.5

川口松太郎新聞小説を原作に正続篇怪奇時代劇大作を大幅に省略した総輯篇なので、ひのき屋千太郎長谷川一夫の妹で琴姫入江たか子のお側に仕えるおすが山根寿子の死と、琴姫の守護神で猛毒のあるからす蛇の存在がはっ>>続きを読む

家光と彦左(1941年製作の映画)

4.0

名君徳川家光長谷川一夫、天下の御意見番大久保彦左衛門古川ロッパ、知恵伊豆松平伊豆守黒川弥太郎、政治顧問南光坊天海汐見洋のお馴染みキャラクターが、時代考証抜きに宇都宮城釣天井事件のスペクタル要素をメイン>>続きを読む

望楼の決死隊(1943年製作の映画)

5.0

旧制水戸高校在学中からバリバリのマルクス主義者今井正監督が、満州で暗躍する金日成ら抗日パルチザンの武装ゲリラ共匪が、鴨緑江が氷結する機に乗じて渡河、日朝国境警備隊との死闘を克明に描いた西部劇風アクショ>>続きを読む

すみだ川(1942年製作の映画)

2.5

メロドラマの女王川崎弘子にも翳りが見られる明治物歌謡映画の凡作。

無法松の一生(1943年製作の映画)

5.0

富島松五郎🟰坂東妻三郎、吉岡敏雄🟰長門裕之の域に達した完璧な無法松の一生。不幸にも内務省とGHQの検閲を受けながら、惜しまれて夭折した伊丹万作の魂を受け継いだ稲垣浩監督の、年老いた人力車引一筋の無法松>>続きを読む