佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

佐藤克巳

佐藤克巳

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桃太郎の海鷲(1943年製作の映画)

5.0

日本初長編アニメーション映画の快挙を成し遂げただけの価値ではない。桃太郎に率いられた犬、猿、雉の戦闘員に、兎の整備兵を巧みに擬人化して愛らしいキャラクターを創造し得た当時のアニメーターは凄い。瀬尾光世>>続きを読む

新雪(1942年製作の映画)

5.0

幻の映画にやっとめぐり逢えた嬉しさ、124分のうち74分しか残存しないもの哀しさ、だけど鑑賞後の清涼感は半端では無い心地良さ。名匠五所平之助監督の最良作であった可能性は高いと思われ、神戸市六甲界隈の風>>続きを読む

音楽大進軍(1943年製作の映画)

3.5

楽器店員古川緑波、渡辺篤の慰問団音楽会発案と、日本の代表的な音楽家の出演交渉を、歌手志望の岸井明を交えてドタバタ喜劇振りを展開する。最後まで指揮者岡譲二の交渉が難航し、崖から落ちた3人組を他所に、中村>>続きを読む

待って居た男(1942年製作の映画)

5.0

脚本小国英雄、マキノ正博監督の名作「昨日消えた男」続篇だが、前作以上の豪華配役でロマンティックコメディ色が更に高まった捕物帖物時代劇の傑作。宿屋若主人大川平八郎が、妻山根寿子をつけ狙った犯罪捜査を江戸>>続きを読む

鞍馬天狗 横浜に現る/鞍馬天狗 黄金地獄(1942年製作の映画)

4.0

戦前の「七つの顔」に匹敵する荒唐無稽な伊藤大輔監督のアクション時代劇の快作。明治四年西郷隆盛が筆頭参議だった頃、大蔵大輔井上薫も関わったとされる藤田組贋札偽造事件がヒントになったのか?横浜の外国商社社>>続きを読む

緑の大地(1942年製作の映画)

5.0

国策映画と見下す傾向がある様だが、ハリウッドの「海外特派員」「カサブランカ」だって国策映画じゃないか。巨匠島津保次郎監督、脚本の戦後共産党系山形雄策も、中立的にスケール感溢れる人間ドラマを構築した稀に>>続きを読む

美しき隣人(1940年製作の映画)

4.0

満州開拓団を描いた同年「大日向村」より遥かに優れた大庭秀雄監督の、瑞々しい映像感覚と慈愛に満ちた恋愛映画の秀作である。東京のBG妹水戸光子が、兄笠智衆出征で実家が母飯田蝶子一人になるのを理由に退職し、>>続きを読む

ふるさとの歌(1925年製作の映画)

3.0

溝口健二監督最古の残存フィルムで価値の高さは認めるものの、文部省推薦のふるさと賛美を推奨する意図が見え見えの凡作。主人公木藤茂の、小学校卒業式答辞を読んだ秀才が家貧しく進学出来ずに地元残留の農村青年を>>続きを読む

朝日は輝く(1929年製作の映画)

4.0

1時間40分上映時間中の25分余りであり乍ら、度肝を抜かれるスピード感、斬新な映像の連続。おそらく後半、船舶火災のセミドキュメントドラマが展開するのだろうが?魅惑に満ちた大阪朝日新聞の宣伝効果抜群の溝>>続きを読む

虞美人草(1935年製作の映画)

3.5

溝口健二監督の凡作。月田一郎主演は、妻山田五十鈴の推しだろうか?配役が小粒で演出にも熱を感じないし、夏目漱石原作で成功作をあまり観ないのは何故だろう?

マリヤのお雪(1935年製作の映画)

4.5

西南戦争は、アメリカ南北戦争に相当する国内を二分する内戦の歴史上最後の戦い。その人吉での西郷軍と官軍激戦の渦中、呑み屋の酌婦お雪山田五十鈴とおきん原駒子が逃走の算段を練り乗合馬車に乗り込むと、区長代理>>続きを読む

折鶴お千(1935年製作の映画)

5.0

サイレント期映像のほとんどが失われ、泉鏡花の世界を描いて第一人者の溝口健二監督の「瀧の白糸」と並ぶ価値ある一作であり、山田五十鈴、夏川大二郎主演のフレッシュさと人生流転の残酷さ女の悲哀が凝縮された傑作>>続きを読む

(1929年製作の映画)

3.5

34分版、字幕不鮮明ながら、母川田芳子、長男小藤田正一の哀愁をそそる名演は感動的だし、なんと言っても、高峰秀子4歳デヴュー作にしてミシンに悪さをしたり習字の墨で顔を汚したりのやんちゃさは、お涙頂戴物だ>>続きを読む

人生は六十一から(1941年製作の映画)

2.0

昔よくテレビで観た吉本新喜劇の原点の様なギャグが頻繁に見られた斎藤寅次郎監督の凡作。唯一傑作なのは、月田一郎発明の自動洗濯装置かな。

翼の凱歌(1942年製作の映画)

5.0

戦後散々ぱら左翼プロパガンダ映画を撮りまくった山本薩夫監督が、当時右も左も挙国一致で祖国防衛に勤しんでいた頃の、陸軍戦闘機隼の試験飛行を見事に捉えた山本の最高傑作であり、実機をふんだんに使用した日本映>>続きを読む

大日向村(1940年製作の映画)

3.5

現代の価値観で過去を断罪するやり方には同意出来ない。狭隘な農地で一毛作しか出来ない長野県山間部の大日向村で、山の伐採、養蚕、出稼ぎ、女工と苦心惨憺の挙句借金が嵩む貧しい村が、満州開拓団による分村で残留>>続きを読む

兵六夢物語(1943年製作の映画)

4.5

山椒は小粒でもぴりりと辛いの兵六榎本健一は、並の兵六玉では無かった。頓珍漢の息子エノケンに、母からの和尚中村是好宛への手紙を持って、鹿児島城下から心岳寺へ向かう途中、吉野の山に棲む狐の化け物に驚かされ>>続きを読む

指導物語(1941年製作の映画)

5.0

国鉄で35年間勤務のベテラン機関士丸山定夫と10年間勤務の機関助手北沢彪が、陸軍鉄道連隊の機関特業員二等兵藤田進に熱気溢れる指導を行い、藤田の人間的成長を促し無事出征する迄の感動ドラマを、熊谷久虎監督>>続きを読む

鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

3.0

最近評価の高いマキノ正博監督作品だが、あくまでもB級時代劇ミュージカル映画の域を出ない。なお支離滅裂感は否めないが、ディック・ミネ、服部富子の歌は収穫。

或る女(1942年製作の映画)

5.0

吉村公三郎と双璧の松竹のホープ渋谷実監督が、寄席お茶子田中絹代の波瀾の人生を古式ゆかしく描いた女性映画の力作。席主坂本武と娘木暮実千代の御好意で救われた田中が、10年前を回顧。上方に下る芸人徳大寺伸か>>続きを読む

ハワイ・マレー沖海戦(1942年製作の映画)

5.0

アメリカの国民的映画が「風と共に去りぬ」なら、我が国ならおそらく本作である。真珠湾攻撃への賛否もあろう国策映画であろうとも。散々植民地主義で世界中を食い荒らした人種差別主義国英米に一撃を与えた世界史的>>続きを読む

続南の風(1942年製作の映画)

5.0

戦後自由謳歌を讃美した獅子文六は戦中の最中でも、清水宏「信子」に続き本作に於いても清々しい青春の息吹を歌い上げた原作を提供していた事に感銘を受けた。自由は決してアメリカさんから頂いた物ではなく、日本独>>続きを読む

(1941年製作の映画)

5.0

1930〜35年昭和農業恐慌が癒えてもまだまだ苦境の東北農村が描かれ、その出身青年将校のクーデターにより腐敗政党政治を打破、軍部が大陸に引き寄せられ、軍馬調達が責務となった背景がある様だ。山本嘉次郎監>>続きを読む

幼き者の旗(1939年製作の映画)

3.0

支那に伍長で出征した父を慕う長男小高まさる、次男小高たかしが、母沢村貞子の里に引越し祖父汐見洋に可愛がられる。長男転校先の先生から手渡された出征の旗を高々と掲げる。父戦死の悲報も杞憂に終わり、元気いっ>>続きを読む

父ありき 4Kデジタル修復版(1942年製作の映画)

5.0

学生の頃初めて観た映像は、GHQにズタズタにされた不完全なものだった為その印象が長く残り、余り好きでは無い作品だったが、今回、修復版で観れた幸福に浸り乍ら小津安二郎監督の芸術性の高さに舌を巻いた。金沢>>続きを読む

みかへりの塔(1941年製作の映画)

5.0

敗戦後早々に、戦災孤児を扱った「蜂の巣の子供たち」を製作した事を以てしても、清水宏監督の子供に対する中庸性は明白であり、社会で問題児とされた子供の更生施設に籠り縦横無尽のカメラワークで、信じられない位>>続きを読む

高原の月(1942年製作の映画)

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優しく慎み深い日本社会だった頃の記憶が蘇る様な心温まる佐々木啓祐監督の、日本アルプスの高原を舞台にした祖父坂本武と孫の長女高峰三枝子、長男大塚正義の家族愛ドラマであり、佐々木康監督の応援を得て音楽映画>>続きを読む

浪人街 第二話 楽屋風呂第一篇(1929年製作の映画)

3.0

浪人の悲叫を描いたマキノ正博監督作品だが、短縮版故か?見せ場少なく、マキノがよく陥る感情過多の欠点が露呈した様だ。平八マキノ登六の傍若無人振りには腹が立った。

浪人街 第一話 美しき獲物(1928年製作の映画)

4.0

断片8分の醍醐味十分、マキノ正博監督若き日の会心作疑い無しの傑作。マキノ崩壊寸前を救ったノンスター配役による、やけのやん八、壮絶な浪人のエネルギーの爆発が垣間見える。活弁入りでスピード感、リアル感共に>>続きを読む

豪傑児雷也(1921年製作の映画)

3.5

ドロンパと消える妖術使い三すくみの特撮で名高い牧野省三監督の代表作。大蝦蟇に変身の児雷也尾上松之助、宿敵大蛇丸市川寿美之氶、蛞蝓の妻綱手が加勢し、ワンポジションのカメラと歌舞伎の立ち回りの愉快さは日本>>続きを読む

十日間の人生(1941年製作の映画)

5.0

陽の当たらない名画とはこの作品を言うのかと感心した名匠渋谷実監督初期の傑作。日本の果て択捉島に漁の出稼ぎに行く事になった薄幸の娘田中絹代が、根室港?の宿屋女中をし乍ら滞在中に、山師の義父水島亮太郎が訪>>続きを読む

春雷 前篇 愛路篇(1939年製作の映画)

3.0

メロドラマの女王川崎弘子主演に相応しい佐々木啓祐監督作品の総集篇であるが、結構お腹いっぱい感があってこれ以上耐えられなかった印象。確かに、追っ掛け近衛敏明嫌さに川崎が途中下車した為、上野駅で待つ彼氏夏>>続きを読む

男の意気(1942年製作の映画)

3.5

中村登監督の手堅い演出と、脚本に吉村公三郎、木下恵介の協力を得て、隅田川支流河岸の回漕店を舞台にした江戸っ子気質の男気を描いた佳作。店主坂本武の衰えを見兼ねた支那から3ヶ月休暇で帰国した息子上原謙が、>>続きを読む

エノケンの鞍馬天狗(1939年製作の映画)

3.0

エノケン映画の標準以下のレベルだが、ラストの大立回りは鞍馬天狗榎本健一の運動神経の良さを発揮した痛快な場面となった。また杉作悦ちゃんを中心とした越後獅子の子供等が、梃子の踏板で投石の援護射撃でエノケン>>続きを読む

をり鶴七變化 前編(1941年製作の映画)

2.5

正直、石田民三監督で期待が高かっただけに落胆は半端無い。新人売り出しを負わされた様だが、当人にスター性の欠片も無かった。

放浪記(1935年製作の映画)

5.0

木村荘十二監督は、成瀬巳喜男がPCL移籍後恵まれなかった印象を受けるが、この頃は正しくPCLのエースだった。「放浪記」と言えば成瀬、高峰の作品が定評だが、私は本作の方が好きだ。義父と実母は行商でジプシ>>続きを読む