佐藤克巳

男の意気の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

男の意気(1942年製作の映画)
3.5
中村登監督の手堅い演出と、脚本に吉村公三郎、木下恵介の協力を得て、隅田川支流河岸の回漕店を舞台にした江戸っ子気質の男気を描いた佳作。店主坂本武の衰えを見兼ねた支那から3ヶ月休暇で帰国した息子上原謙が、傾いた店の経営を刷新しようとするが、家族内の軋轢を解消する難題も抱える。坂本に勘当された姉夫婦川崎弘子、元番頭徳大寺伸の復縁と、叔父河村黎吉仲人の妹朝霧鏡子の結婚問題で親子対立。それにライバル社との荷受競争、回漕店合併騒動が絡み、上原が独断専行して問題解決し支那へ帰る迄の緊迫感ある内容だった。また女番頭木暮実千代のラブコールを土産に去る上原を、二階の窓から見送る坂本、徳大寺と結末も美しいが、戦時下と有能監督の流出による松竹カラーの衰退を感じる一作となった。
佐藤克巳

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