佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価

佐藤克巳

佐藤克巳

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果てしなき情熱(1949年製作の映画)

4.5

フェリーニ「道」を連想したが、市川崑監督のこっちが先。芸術家は、自分の身を切り刻んで創作するとの思いが前提で、作曲家堀雄二が、信州湖畔で出逢った令嬢折原啓子への思慕が「湖畔の宿」、3年後東京での再会が>>続きを読む

恋の十三夜(1949年製作の映画)

4.0

「をぢさん」渋谷共同、「ことぶき座」等通俗映画は名人級に上手い原研吉監督の、京都情緒たっぷりの舞妓折原啓子、学生池部良のすれ違いメロドラマの秀作。池部叔父北竜二が縁談相手令嬢月丘夢路等を伴って来洛、名>>続きを読む

獣の宿(1951年製作の映画)

2.5

「銀嶺の果て」に似通った黒澤明脚本が売りだが、時代劇ならいざ知らず後味悪いヤクザ映画の失敗作。鶴田浩二のアプレゲールな人非人ヤクザは酷すぎる。警視庁刑事清水将夫の捜査杜撰さが悲劇をもたらした。

野良犬(1949年製作の映画)

5.0

志村喬のベテラン刑事が余裕綽々で放つ駄洒落が愉快だが、中でもアプレゲールを「呆れケール」は、本作の本質を突いていた。戦後黒澤明監督作品に多く見られる大上段にヒューマニズムを構える感じが薄く、犯罪サスペ>>続きを読む

慟哭(1952年製作の映画)

4.5

佐分利信監督作品の初体験。戦後流行アプレ族の典型夏川文子を新人阿部寿美子を起用し、その劇団員で軽薄短小の小娘に幻惑されてしまった劇作家杉守修三を佐分利自身が演じ、看板女優木暮実千代の好意を逆恨みして女>>続きを読む

細雪(1950年製作の映画)

5.0

四姉妹物語を映画化するのは洋の東西を問わない様だ。キャサリン・ヘップバーンの「若草物語」に始まり、大林宣彦「姉妹坂」が最後と記憶する。私の好きな森永健次郎「若草物語」も本作が下地かと思われるし、阿部豊>>続きを読む

人間模様(1949年製作の映画)

4.0

アニメーションからデヴューの市川崑監督独特のタッチが妙に刺激するスクリューボールコメディの佳作だが、山口淑子の眩いばかりの美しさが際立っている。大陸から引揚の悲惨な出来事は、山口を騙した男でデヴュー伊>>続きを読む

夜の女たち(1948年製作の映画)

5.0

小津安二郎「長屋紳士録」に対し清水宏「蜂の巣の子供たち」、「風の中の牝鶏」に対しこの溝口健二監督の本作は、連動している気がする。生半可では無く、巨匠たちが雄弁を奮って訴えた社会的責任に敬意を表したい。>>続きを読む

わが生涯のかゞやける日(1948年製作の映画)

5.0

「スターウォーズ」そっくりのタイトルバックからいきなり、敗戦前夜青年将校森雅之が重臣井上正夫暗殺、令嬢山口淑子がナイフで応酬それから1948年、愛国新聞、キャバレー経営の背中の刺青ヤクザ滝沢修配下の、>>続きを読む

朱唇(べに)いまだ消えず(1949年製作の映画)

3.5

不倫一歩手前で踏み止まる因果応報を切実に感じさせる渋谷実監督の佳作だが、母高杉早苗、娘久我美子、元恋人佐分利信、妻杉村春子、久我の恋人佐田啓二、脇に望月優子、加藤嘉、三井弘次と豪華キャスティングが勿体>>続きを読む

女優(1947年製作の映画)

5.0

島村抱月を、小山内薫と築地小劇場を開設した土方与志が新劇運動の苦衷を知り尽くしたかの様な淡々とした演技は見事だったが、衣笠貞之助監督は、松井須磨子の生涯を被らせて山田五十鈴の演技力を更に磨きをかける作>>続きを読む

女優須磨子の恋(1947年製作の映画)

3.5

溝口健二監督の田中絹代主演、島村抱月山村聰他俳優座一党出演の、新劇草創期の伝説的女優一号の物語。坪内逍遥東野英治郎人脈沢山で、早稲田懐かしい!が、作品としては可も不可もなし。

歌麿をめぐる五人の女(1946年製作の映画)

5.0

GHQ配下民間検閲支隊CCDのプレスコードを良くクリアしたなぁと思われる、戦後占領期の厳しい検閲に屈しない小津、成瀬と並ぶ溝口健二監督が、浮世絵師歌麿坂東簑助を取り巻く艶やかで業に深い女達を絢爛豪華な>>続きを読む

四人目の淑女(1948年製作の映画)

4.0

珍奇な雰囲気漂う渋谷実監督の戦後の価値観の変貌を問う風俗喜劇の野心作。6年振りに帰還した復員兵森雅之は、まるで「舞踏会の手帖」の様に音楽学校時代の四人の女友達を訪ねる。先ず出征前結婚を誓い合った華族令>>続きを読む

酔いどれ天使(1948年製作の映画)

5.0

黒澤明監督の映画スタイルが完成したヒューマンドラマの傑作。酔いどれ天使を自称する不遇の医者志村喬と結核を患い組若頭の地位を脅かされた三船敏郎の虚勢の張り合いがいつしか共感する仲になるが、泡が湧き出る湿>>続きを読む

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)

5.0

京橋フィルムセンターで牛原虚彦氏が語った清水宏評は辛辣だった。牛原自身、成瀬巳喜男、豊田四郎、五所平之助、島津保次郎等が松竹を去った原因が清水だと言われた。そんな人物的に問題があろうとも、ロードムービ>>続きを読む

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)

3.5

廃墟化した東京で歓楽街だけが栄える矛盾の中、戦時中からベーカリーカフェを経営する夢を語り合っていた若いカップル沼崎勲、中北千枝子は、戦後の惨めな生活に捥がく。楽しみにしていた日曜日も、二人合わせて35>>続きを読む

風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

5.0

ラヴストーリー「第七天国」に匹敵する感銘を受けた夫婦愛を描いた小津安二郎監督の比類の無い傑作。夫佐野周二の帰還を待つ田中絹代は、生活費にも事欠く中子供中川秀人が大腸カタルで入院、看護婦から十日分前払い>>続きを読む

お嬢さん乾杯!(1949年製作の映画)

5.0

1945〜48年の日本映画の長い低迷期から脱した事を象徴的に示した、俊英木下恵介監督の天に突き抜けるかの様な明朗快活な青春喜劇映画の傑作。また、「河内山宗俊」以来美貌を欲しいままにした原節子にして本年>>続きを読む

海軍(1943年製作の映画)

3.5

軍神横山正治少佐をモデルにした谷真人中尉山内明の、真珠湾攻撃の潜水艇攻撃で戦死する迄の一半生を描いた田坂具隆監督の力作だが、地味過ぎる印象は避けられない。GHQに押収され終盤の特撮による攻撃場面の欠落>>続きを読む

三百六十五夜(総集篇)(1948年製作の映画)

4.0

東京編78分、大阪篇74分だが、大阪篇を相当削って総集篇119分にしたものが現存するマスターらしい。小島政三郎原作本、主題歌も古賀政男で大ヒットし、本作も空前のヒットを記録、市川崑監督も監督昇進、クレ>>続きを読む

銀座新地図(1948年製作の映画)

3.0

「絹代の初恋」に河野敏子でデヴュー、田中絹代の妹で好演したが、その後やや低迷も戦後木下恵介の秘蔵っ子となり、本作でも目元ぱっちりの山口淑子似の美人振りを発揮した瑞穂春海監督作品の佳作。弟が売り出しの高>>続きを読む

地獄の顔(1947年製作の映画)

3.6

時代劇大曽根辰夫監督の歌謡アクション映画の佳作。「新雪」の水島道太郎が前科のある長崎の教会教師、同じく尼僧月丘夢路に、その妹でデヴュー作保母月丘千秋、主題歌「夜霧のブルース」を唄う水島弟分ディック・ミ>>続きを読む

シミキンのオオ!市民諸君(1948年製作の映画)

4.5

未来を予見した「不思議な国のプッチャー」の夭折の天才漫画家横井福次郎原作の同名映画化した川島雄三監督の荒唐無稽ナンセンス喜劇の野心作。「ひょっこりひょうたん島」に「ハレンチ学園」を併せた様な、一時一世>>続きを読む

ろくでなし(1960年製作の映画)

3.0

この頃は日活最盛期。松竹ヌーベルバーグったって中平康を越えられない。日活に対抗出来たのは、監督では篠田正浩、俳優では三上慎一郎、桑野みゆき、加賀まりこ、岩下志麻ぐらい。未だに「狂った果実」の足元にも及>>続きを読む

陸軍(1944年製作の映画)

5.0

第二次長州征伐で長州から襲撃された小倉の老舗質屋主人笠智衆は、尊攘派で奇兵隊監軍山縣有朋とも親交があり、息子横山準は奇兵隊贔屓。小倉藩士原保美は、「大日本史」を託して、白村江敗戦を機に防人を常駐して以>>続きを読む

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)

1.0

GHQ民間情報教育局の民主主義啓蒙プロパガンダ映画に加担した黒澤明監督の大嫌いな作品。京大事件もゾルゲ事件も悪辣な創作であり、戦時の看板俳優大河内傳次郎、藤田進、原節子を貶める為にGHQに媚びを売った>>続きを読む

春の饗宴(1947年製作の映画)

5.0

「ほろよひ人生」以来東宝のお家芸レヴューを前面に出したバックステージ物を、俳優復帰したばかりの池部良を新聞記者に、名門劇場閉鎖の噂と百万円宝籤当選者取材で、電気室技師藤原釜足、オペラ歌手轟夕起子、ジャ>>続きを読む

長屋紳士録(1947年製作の映画)

5.0

終始笑いっ放しのおかしみが、実父小沢栄太郎が息子青木放屁を引き取りに来てからの涙涙の感動は、名匠小津安二郎監督を以てしての人情喜劇映画の極地に達した傑作。占い師笠智衆が九段から連れて来た孤児を、長屋住>>続きを読む

春の目ざめ(1947年製作の映画)

5.0

石坂洋次郎原作「青い山脈」が同年連載され八住利雄、成瀬巳喜男がアイデア頂きの勢いで第1期東宝ニューフェイス久我美子を初主演に抜擢した、本家以上の出来映えの成瀬監督快心の傑作。旧制高等女学校生徒久我、木>>続きを読む

美はしき出発(1939年製作の映画)

3.0

コメディにも定評のある山本薩夫監督の原節子、高峰秀子共演の注目作だったのだが?キャプラ「我が家の楽園」を意識したのか?中途半端な凡作となった。

二人の世界(1940年製作の映画)

5.0

島津保次郎監督が、松竹で名作「兄とその妹」を撮った翌年に東宝移籍後製作された一本で酷評を叩かれた作品だが、父工作機械工場研究室長丸山定夫が、若い技師藤田進等の突上げと専務汐見洋等上層部の圧力の狭間に立>>続きを読む

東京五人男(1945年製作の映画)

5.0

精密爆撃により占領に必要な施設だけ残し焦土と化した東京の惨憺たる光景をロケーションの場とし、横山エンタツ、花菱アチャコ、古川緑波、石田一松、柳家権太楼の徴用工帰還五人組の活躍をミュージカル喜劇で戦争直>>続きを読む

續姿三四郎(1945年製作の映画)

5.0

黒澤明作品でも芳しくない評価が際立った作品だが、他流のボクシングと空手との対決の妙技の良さ、矢野正五郎大河内傳次郎が目指す柔の道、さいづち和尚高堂国典の姿三四郎藤田進の掟破りも許容する度量の大きさ、檜>>続きを読む

そよかぜ(1945年製作の映画)

5.0

松竹が本作でヒットを飛ばせば、東宝は翌月「歌へ!太陽」で対抗した様に、敗戦の鬱憤晴らしには音楽映画とばかりの鮮烈な明るさと爽やかさを持つ佐々木康監督の秀作だが、当時の評論家の酷評は凄まじかったらしい。>>続きを読む

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