佐藤克巳

東京五人男の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

東京五人男(1945年製作の映画)
5.0
精密爆撃により占領に必要な施設だけ残し焦土と化した東京の惨憺たる光景をロケーションの場とし、横山エンタツ、花菱アチャコ、古川緑波、石田一松、柳家権太楼の徴用工帰還五人組の活躍をミュージカル喜劇で戦争直後を風刺した斎藤寅次郎監督の面目躍如の傑作。アチャコ、エンタツは、買い出しに殺到した鮨詰めの汽車から降りバラック建の実家に帰り着いたら、忌中の張り紙に驚き葬儀を辞めさせたが、背負った荷物が軍需工場社長のもので女房はカンカン。やがて都電の運転手、車掌に復帰。ロッパは、学童疎開の息子のため農家に買い出しに出ると、都会の物不足にあざとい高勢實乗の嫌がらせを受けたが高堂国典には過剰過ぎるお土産を頂いた。息子が帰ると一緒にドラム缶風呂で「私の青空」を歌う。配給所に勤めた石田は、非能率の役所仕事に辟易、「呑気節」に興じ、酒場で働く権太楼は、元社長等の優遇と隊列の庶民との差別、メチルアルコール混入を知る。ある時台風が襲い、エンタツ、アチャコの屋根が飛ばされそうになり家が傾く。ロッパの家は濁流に流されチャップリンまがいの櫂を漕いで凌ぐが、元社長宅の倉庫が浸水、急場に駆けつけた五人組の交渉で隠匿物資は配給に供する事になった。石田の復興を誓う掛け声で町民のデモ行進が始まった。
佐藤克巳

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