佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

佐藤克巳

佐藤克巳

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父ありき 4Kデジタル修復版(1942年製作の映画)

5.0

学生の頃初めて観た映像は、GHQにズタズタにされた不完全なものだった為その印象が長く残り、余り好きでは無い作品だったが、今回、修復版で観れた幸福に浸り乍ら小津安二郎監督の芸術性の高さに舌を巻いた。金沢>>続きを読む

みかへりの塔(1941年製作の映画)

5.0

敗戦後早々に、戦災孤児を扱った「蜂の巣の子供たち」を製作した事を以てしても、清水宏監督の子供に対する中庸性は明白であり、社会で問題児とされた子供の更生施設に籠り縦横無尽のカメラワークで、信じられない位>>続きを読む

高原の月(1942年製作の映画)

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優しく慎み深い日本社会だった頃の記憶が蘇る様な心温まる佐々木啓祐監督の、日本アルプスの高原を舞台にした祖父坂本武と孫の長女高峰三枝子、長男大塚正義の家族愛ドラマであり、佐々木康監督の応援を得て音楽映画>>続きを読む

浪人街 第二話 楽屋風呂第一篇(1929年製作の映画)

3.0

浪人の悲叫を描いたマキノ正博監督作品だが、短縮版故か?見せ場少なく、マキノがよく陥る感情過多の欠点が露呈した様だ。平八マキノ登六の傍若無人振りには腹が立った。

浪人街 第一話 美しき獲物(1928年製作の映画)

4.0

断片8分の醍醐味十分、マキノ正博監督若き日の会心作疑い無しの傑作。マキノ崩壊寸前を救ったノンスター配役による、やけのやん八、壮絶な浪人のエネルギーの爆発が垣間見える。活弁入りでスピード感、リアル感共に>>続きを読む

豪傑児雷也(1921年製作の映画)

3.5

ドロンパと消える妖術使い三すくみの特撮で名高い牧野省三監督の代表作。大蝦蟇に変身の児雷也尾上松之助、宿敵大蛇丸市川寿美之氶、蛞蝓の妻綱手が加勢し、ワンポジションのカメラと歌舞伎の立ち回りの愉快さは日本>>続きを読む

十日間の人生(1941年製作の映画)

5.0

陽の当たらない名画とはこの作品を言うのかと感心した名匠渋谷実監督初期の傑作。日本の果て択捉島に漁の出稼ぎに行く事になった薄幸の娘田中絹代が、根室港?の宿屋女中をし乍ら滞在中に、山師の義父水島亮太郎が訪>>続きを読む

春雷 前篇 愛路篇(1939年製作の映画)

3.0

メロドラマの女王川崎弘子主演に相応しい佐々木啓祐監督作品の総集篇であるが、結構お腹いっぱい感があってこれ以上耐えられなかった印象。確かに、追っ掛け近衛敏明嫌さに川崎が途中下車した為、上野駅で待つ彼氏夏>>続きを読む

男の意気(1942年製作の映画)

3.5

中村登監督の手堅い演出と、脚本に吉村公三郎、木下恵介の協力を得て、隅田川支流河岸の回漕店を舞台にした江戸っ子気質の男気を描いた佳作。店主坂本武の衰えを見兼ねた支那から3ヶ月休暇で帰国した息子上原謙が、>>続きを読む

エノケンの鞍馬天狗(1939年製作の映画)

3.0

エノケン映画の標準以下のレベルだが、ラストの大立回りは鞍馬天狗榎本健一の運動神経の良さを発揮した痛快な場面となった。また杉作悦ちゃんを中心とした越後獅子の子供等が、梃子の踏板で投石の援護射撃でエノケン>>続きを読む

をり鶴七變化 前編(1941年製作の映画)

2.5

正直、石田民三監督で期待が高かっただけに落胆は半端無い。新人売り出しを負わされた様だが、当人にスター性の欠片も無かった。

放浪記(1935年製作の映画)

5.0

木村荘十二監督は、成瀬巳喜男がPCL移籍後恵まれなかった印象を受けるが、この頃は正しくPCLのエースだった。「放浪記」と言えば成瀬、高峰の作品が定評だが、私は本作の方が好きだ。義父と実母は行商でジプシ>>続きを読む

東京ラプソディ(1936年製作の映画)

4.0

映画、レコード、ラジオ、雑誌、文学等可憐に咲いた昭和ロマンの末年に誕生した名曲東京ラプソディを題材に同時ヒットした伏水修監督の音楽映画の秀作。洗濯屋の若旦那藤山一郎が、銀座ネオンの舞台裏でアコーディオ>>続きを読む

エノケンのワンワン大将(1940年製作の映画)

4.0

エノケンこと榎本健一が、並々ならぬ意欲でオペレッタ喜劇映画を創出した経緯にまず敬意を表したい。初作「青春酔虎伝」でエネルギー漲る熱演を示したエノケンは、第2作「魔術師」で、「ほろよい人生」の木村荘十二>>続きを読む

エノケンのちゃっきり金太 前篇(1937年製作の映画)

5.0

多芸多才な山本嘉次郎監督と日本喜劇王榎本健一コンビが最も息の合ったスピード感溢れるミュージカル喜劇映画の傑作。ちゃっきり金太は記憶違いかも知れないが、西郷隆盛の財布を擦り損なったが許され更生した人物で>>続きを読む

白鷺(1941年製作の映画)

5.0

泉鏡花の艶やかで哀叫たっぷりの世界を堪能させて貰った島津保次郎監督の東宝オールスター級の贅沢な傑作だが、戦後弟子の豊田四郎が再集した原版より30分程度短縮されたものらしい。柳橋料亭のお嬢さん入江たか子>>続きを読む

木石(1940年製作の映画)

4.5

明るく抒情溢れる作風に定評のある五所平之助監督にしては重々しい作品ではあるものの伝染病研究所を舞台にした人間ドラマとして秀逸な出来栄えだった。動物舎で動物実験を積み重ね伝染病研究を進める医師夏川大二郎>>続きを読む

秀子の車掌さん(1941年製作の映画)

4.5

成瀬巳喜男監督が、井伏鱒二原作を肩の力を抜いて軽々と描いて観せた田園スケッチの秀作。田舎のバスはオンボロ車の運転手藤原鶏太と車掌高峰秀子は、ライバル車に客を奪われ迷走状態。ラムネとかき氷大好き社長勝見>>続きを読む

なつかしの顔(1941年製作の映画)

3.5

田畑広がる農村に子供達が遊び、友達のゴム動力飛行機が木に引っ掛かり、取ろうとして落下した弟小高たかしが、足を怪我して自宅療養中に、空高く飛ぶ複葉の練習機に夢中。母馬野都留子が、亀岡の映画館で日本ニュー>>続きを読む

女医の記録(1941年製作の映画)

4.5

現代日本人は哀れ。美しい郷土を太陽光発電や風力発電で破壊し、コロナワクチンの害悪も問わず恐怖を煽られ、LGBTや移民政策、嘘八百の少子化対策を推進する利権と公金チューチュー社会。この頃内務省主導とは言>>続きを読む

結婚の生態(1941年製作の映画)

4.0

若き原節子が、新鋭今井正の誠実な演出に応え、文学少女の子供っぽい婚約者から、夫となった新聞記者夏川大二郎の献身的な教育の成果と、未亡人で洋裁店経営姉日暮里子の適切な助言を経て家庭の妻の自覚が芽生え、出>>続きを読む

兄の花嫁(1941年製作の映画)

5.0

兎角、評論家連中の島津保次郎監督の東宝作品の評価は低いが私はそうは見ない。入江たか子、山田五十鈴、原節子、高峰秀子と錚々たる陣容が整った東宝で、成瀬巳喜男と並ぶ柱としての貢献は高いと見る。本作は、その>>続きを読む

エノケンの法界坊(1938年製作の映画)

4.5

おそらくエノケン人気で再映を繰り返し劣化が著しい状態乍ら、斎藤寅次郎監督は、初期のチャップリン擬きの榎本健一のキャラクターを創り上げ、歌舞伎「隅田川続悌」の法界坊を客体化して、キビキビしたミュージカル>>続きを読む

簪(かんざし)(1941年製作の映画)

4.5

清水宏監督が、名作「按摩と女」を土台に山中の宿の夏休みのくつろいだ時間を、子供横山準の宿題日記に綴った詩情溢れる人生模様を編んだ傑作。蓮華講団体客が下部温泉に宿泊し去った後、長期滞在者の一人で温厚な傷>>続きを読む

団栗と椎の実(1941年製作の映画)

3.5

「子供の四季」から抜粋した一篇かの様な清水宏監督の小品。都会っ子を養子にした義父大山健二が栗の木に子供を登らせ、遂には田舎の餓鬼大将を参らせるで終わる。

お絹と番頭(1940年製作の映画)

3.0

野村浩将監督、田中絹代、上原謙の「愛染かつら」トリオの喜劇作品で期待したが、今一歩の印象。与太者トリオの磯野秋雄、三井秀男、阿部正三郎の揃い踏みは前半で終わってしまい、終始受けたのは小林十九二の左肩を>>続きを読む

花は偽らず(1941年製作の映画)

4.0

傑作「暖流」の二匹目のドジョウを狙った安易さは窺われず、技有りの好編となった大庭秀雄監督の瑞々しい作風が心地良い。親戚関係の社長夫妻大山健二、岡村文子からの縁談に気が乗らない事務員徳大寺伸は、タイピス>>続きを読む

西住戦車長伝(1940年製作の映画)

5.0

同年東宝「燃ゆる大空」が戦闘機空中戦ならとばかり、松竹は戦車地上戦で対抗したが、シンプルさに於いて前者の勝ち。前半の戦車の破壊力は戦況逼迫を打破する決め手を印象付けたが、後半は西住中尉上原謙の人格や勇>>続きを読む

旅役者(1940年製作の映画)

4.0

成瀬巳喜男監督の「サーカス五人組」の姉妹篇の様な小品だが、きりりとした落語の上手さのある佳作。本年成瀬は、千葉早智子と離婚してスランプだったのかも知れないが、釜足改めて藤原鶏太の馬の前脚役者の悲境を描>>続きを読む

雪子と夏代(1941年製作の映画)

4.0

戦前多くの吉屋信子作品が映画化されたが、青柳信雄監督の本作は、東宝二大看板女優競演で貴賓と優雅さに於いて稀に見る秀作となった。戦死した夫の家から自立して洋裁店を営む入江たか子の下へ、同じく夫を亡くした>>続きを読む

信子(1940年製作の映画)

5.0

左巻き大島渚が絶賛する「女の園」だが、戦前にだって立派な女学生映画が存在していた事を証明する清水宏監督の青春映画の傑作。女学校新任教師高峰三枝子は九州から上京、親戚の置屋女将飯田蝶子宅に下宿、校長岡村>>続きを読む

元気で行かうよ(1941年製作の映画)

3.5

高杉早苗が38年に結婚引退し桑野通子、高峰三枝子にベテラン田中絹代を加えた3人が看板女優に、佐分利信、上原謙と三羽烏の一人佐野周二が本年召集され帰還第一作となった松竹オールスター映画の話題作。爽やかな>>続きを読む

お加代の覚悟(1939年製作の映画)

4.0

巨匠島津保次郎監督の7巻物小品だが中身の濃い松竹置き土産の一作。日本舞踊師匠三宅邦子は湯豆腐でちょっと一杯傾けると、戦地の夫と一人語らう仕草の粋な事。その夫に頼まれて写真を撮る若旦那上原謙に、ポーと赤>>続きを読む

絹代の初戀(1940年製作の映画)

4.5

大甘かも知れないが、テレビ映画「木下恵介劇場」迄続く典型的大船映画のお手本であり昭和の黄昏。証券会社常務佐分利信から歌舞伎の切符を貰った煎餅屋を営む姉田中絹代が一目惚れ、その会社員妹井川邦子に縁談話。>>続きを読む

小島(こじま)の春(1940年製作の映画)

4.5

癩病を扱った功罪はあるだろうが、癩病患者を晒し者にする扱いでは無かった点は確か。豊田四郎監督の力作だが、俳優陣の健闘が支えた名作。長島愛生園女医夏川静江の心温まる演技を始め、癩病患者菅井一郎、杉村春子>>続きを読む

そよ風父と共に(1940年製作の映画)

5.0

前年「まごころ」で少女思春期映画の良作を撮った成瀬巳喜男が脚本、譲った形の弟子山本薩夫監督作品初期の秀作。学も無く浪花節好きの風呂屋を営む父藤原釜足と、ハイカラ好き女学校四年生高峰秀子の温かい親娘愛が>>続きを読む