佐藤克巳

エノケンのワンワン大将の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

エノケンのワンワン大将(1940年製作の映画)
4.0
エノケンこと榎本健一が、並々ならぬ意欲でオペレッタ喜劇映画を創出した経緯にまず敬意を表したい。初作「青春酔虎伝」でエネルギー漲る熱演を示したエノケンは、第2作「魔術師」で、「ほろよい人生」の木村荘十二監督のハイカラな手腕を得て魔術師を演じ、トリック撮影やアニメ導入によるマジックオペラ創出の快挙は凄い。本作は、中川信夫監督による心温まる忠犬物語で、同年「孫悟空」で共演の小さな天使中村メイ子の好助演を得て、土管に住み着くルンペン三太が、フランス映画「自由を我等に」や「巴里祭」よろしくの雰囲気を醸し出した秀作である。土管に乗って放浪の末、劇団員にスカウトされたが失敗し、街を歩いていると中村が豪邸に誘う。そこには軍用犬シェパードがいて何かと世話を焼いてくれた上に、手柄をどんどん挙げて有名になる。中村が劇団員の行李に忍び込み汽車で一路九州へ向かうと、忠犬とエノケンは猛烈に追走。警察で忠犬の持ち主がドイツ将校と分かり港での別れに郷愁が漂う。
佐藤克巳

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