学生の頃初めて観た映像は、GHQにズタズタにされた不完全なものだった為その印象が長く残り、余り好きでは無い作品だったが、今回、修復版で観れた幸福に浸り乍ら小津安二郎監督の芸術性の高さに舌を巻いた。金沢の中学教師笠智衆は、妻を亡くし息子津田晴彦の成長を楽しみに過ごしていたが、修学旅行引率中の不始末の責任を取り辞任し故郷上田に戻るが、息子進学の工面の為上京、息子は中学寄宿舎に居残った。更に大学は仙台、教職は秋田と父子同居を望む佐野周二の願いは叶わぬが、温泉で落ち合い久々釣りを楽しむ二人。笠は、東京の囲碁クラブで同僚教師坂本武と再会、佐分利信、日守新一等教え子との同窓会に招かれた。佐野は、徴兵検査で休暇中上京し笠と暫く時を過ごすが、出勤しようとした笠が倒れた。病院で坂本の娘水戸光子との結婚を約し、満足感いっぱいで笠が息絶えた。秋田行きの汽車で佐野が、何れ坂本にも来てもらうと告げると水戸は涙した。
