佐藤克巳

望楼の決死隊の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

望楼の決死隊(1943年製作の映画)
5.0
旧制水戸高校在学中からバリバリのマルクス主義者今井正監督が、満州で暗躍する金日成ら抗日パルチザンの武装ゲリラ共匪が、鴨緑江が氷結する機に乗じて渡河、日朝国境警備隊との死闘を克明に描いた西部劇風アクション映画の傑作であり、キネ旬ベストテン男今井自身の最高作だろう。警部補高田稔と妻原節子は母危篤の電報を受けるが、極寒の緊迫した情勢から帰国せず留まる。新任巡査斎藤英雄は、銃暴発のミスや仕事の不満から退職を願い出るが高田は断固拒否する。新年を迎え原が用意した雑煮を隊員に配ると、先輩巡査清水将夫が、スパイに撃たれて犠牲になった朝鮮人隊員の墓前に雑煮を供え仏壇の扉を開くと高田の母の真影があった。原は、雑煮の餅米は斎藤の母からの差入だと明かし隊員の結束が固まる。満州帰りの部落住人菅井一郎がスパイに撃たれ、その息子の情報からいよいよ共匪が迫り、原が銃を手にするクライマックスへと向かう。なお平時の部落民が楽しそうに滑る河上スケート等、日本統治下朝鮮の風情が満喫出来る優れものであった。
佐藤克巳

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