ragaさんの映画レビュー・感想・評価

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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

4.5

子供は可愛い。その反面優しくない言動を振る舞う。
住まいが流転する9歳の少女ベニーは怒りのコントロールができず周りとのトラブルが絶えない。大人たちのベニーに対する愛情や倫理観を礎にした救済は、喜びや感
>>続きを読む

プーサン(1953年製作の映画)

3.0

おっとりした予備校教師の野呂は度重なる不運に見舞われても生き抜こうとする。理念や願望と反する現実にも耐える。メーデーに参加するのは害悪だと職場が仕打ちする掟ならば、いずれこの社会は没落するのだろう。理>>続きを読む

車夫遊侠伝 喧嘩辰(1964年製作の映画)

4.5

心地良いリズムを礎にした編集とローアングルや引きのショットを効果的に映し出す撮影は加藤泰の技量の見せ所であり、強引な物語展開が逆に主人公・辰五郎と喜美奴の気っ風の良さに通底していく。また西川組の親分の>>続きを読む

ああ爆弾(1964年製作の映画)

4.0

リズム良く進行するサスペンス喜劇。渡世人の孤独と政界へ臨む金銭欲を良い塩梅にミックスすれば、社会の滑稽さが浮き彫りになっていく。労働に勤しむ主人公の息子のあっけらかんとした表情も良い。世間を恨めしく思>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.5

もう一度会いたい亡き両親との邂逅、そこに安易なファンタジー要素よりも、当時言えなかった自身の本心を告げる勇気と許しを乞う息子の真摯な心情が丁寧に描かれる。ここに社会の片隅に潜むマイノリティの葛藤もあり>>続きを読む

貴公子(2023年製作の映画)

3.5

謎の人物 “貴公子” の人物造形が良い。スタイリッシュでありながらも変態チックなズレがユーモアを醸している。見せ場も良い塩梅に散りばめていて退屈しないが、物語展開としてあまりに浅薄な各登場人物のマウン>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.5

人は容易く決断できない、するのが怖い。他者に決断してほしくなる。受け身になってしまう心の弱さ、狡さ、そこにドラマがある。クライマックスのウーバーを待つ2分間、運命の決断を互いに欲するノラとヘソンの所作>>続きを読む

フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

3.0

時間軸を錯綜する構成から同期していく編集は見もの。真相がわかるトリックが終盤に用意されるも腑に落ちない箇所があってモヤっとする。鑑みるとノーラン監督はこのくらいの小品が似つかわしく、最新作のような大作>>続きを読む

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

4.0

写真家ナン・ゴールディンは声をあげる。鎮痛剤オキシコンチンを巧妙な手口で販売促進して多大な利益を得るパーデュー社を創設したサックラー家に対して、その薬物乱用による中毒を経験した人や過剰摂取による死亡者>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.0

あまりにも多すぎる登場人物にも関わらず矢継ぎ早な場面転換やアップの多用、一部を除いて鳴り止まぬBGM、この演出はどうよ、”核実験成功” からの展開はなんとか盛り上がるのだが、前半の構成に退屈してしまう>>続きを読む

ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007年製作の映画)

4.8

幸せとは自身が感じるものである。他者がそれをジャッジしていいのか。不遇な家庭環境はその人の自己責任に陥りやすく、容易く人権を軽視してしまう。その判断は正しいのか。弱者となる子供への冷遇は許されない、し>>続きを読む

ザ・シークレットマン(2017年製作の映画)

3.0

政権と警察機関、決して馴れ合いになってはいけないというフェルトFBI副長官の矜持は、大統領の横暴に憤りマスコミへのリークへと向かう。民主主義とは何か、ウォーターゲート事件の捜査を通して権力の腐敗と国民>>続きを読む

パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間(2013年製作の映画)

4.0

ジョン・F・ケネディ暗殺事件を通して周囲の人びとが混乱していく過程が描かれる。医療従事者、シークレットサービス、FBI捜査官、8ミリカメラで事件を撮った服飾店の男、そして容疑者オズワルドの兄と母親、報>>続きを読む

ファーストフード・ネイション(2006年製作の映画)

3.5

ファストフード店の裏側を暴く物語は、食という生活の要が、経営者側の私利私欲に侵食されて劣悪な労働環境が横行する格差社会の一端を垣間見せてくる。その安さ、美味しさ満足する陰で何を犠牲にしているのか、見え>>続きを読む

罪と悪(2024年製作の映画)

2.5

「ミスティック・リバー」を想起させる物語内容はまだしも、肝心の真相を全て説明的台詞によって仕上げてしまう脚本に難がある。この閉鎖的なムラ社会を忌み嫌う少年たちの思惑はどのような将来を目指していくのか、>>続きを読む

ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア(1987年製作の映画)

5.0

時代や社会情勢が人びとを容赦なく呑み込んでしまう。抗う術はどこにも見当たらず、翻弄されても自己肯定でしか拠り所がない悲運を主人公・溥儀の言動を通して私たちにも問いかけてくる。自由とは。幸せとは。これは>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

2.5

主演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが好きすぎて、最近縁遠かったベッソン最新作に臨む。主人公の不遇な少年時代からの設定は良いのだが、ほとんど回想シーンになってるのでテンポ悪いし、クライマックスの危機も>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.0

夫の死が事件へと進展して裁判にて隠された事実が露わになる。不幸は時に人びとの好奇心へと向かい、確固とした証拠もないまま妻は容疑者へと突き出される。果たして判決は如何に…というあらましは良いのだが、テン>>続きを読む

トレマーズ(1990年製作の映画)

4.0

プロットがしっかりしてるので退屈しない、さらに恐怖場面のチラ見せ具合が巧い。主人公・バレンタイン(ケヴィン・ベーコン)が突如起きたパニック騒動に奮闘するも他の登場人物の造形があまり深く刺さり込んでない>>続きを読む

ハッピー・オールド・イヤー(2019年製作の映画)

4.5

断捨離がテーマとなるも意識高い系の表層的なライフスタイルの物語ではなく、その負の面となる主人公の家族や元カレとの行き違いを主軸とする構成が巧い。部屋にあふれたモノを捨てる、しかし記憶や情は捨てることが>>続きを読む

ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008年製作の映画)

4.0

老いと時間は常に進行する。後戻りできない人生は後悔で悲観するのではなく自戒の先にある新たな一歩を踏み出す気概にある。奇妙な運命を背負うベンジャミンは決してめげない。自身に過ちがありながらも新たな人や生>>続きを読む

ビューティフル・ライフ(2023年製作の映画)

2.5

推しのデンマーク映画もピンキリであることを認識する。物語構成は良い按配なのだが、かなりナルシシズムに傾倒したサクセスストーリーなので興醒めする場面を散見してしまう。それは主人公エリオットが何の落ち度も>>続きを読む

アインシュタインと原爆(2024年製作の映画)

3.0

人は皆何かしらの悔恨を抱く。人道的に過ちを犯していても人は生きる術を模索する。本当に裁かれるのは誰なのか、という責任追及よりも自責の念に苛まれる人への許しを私たちは前進する道程として抱くべきであろう。>>続きを読む

彼方に(2023年製作の映画)

3.0

主演デヴィッド・オイェロウォの演技が印象に残る。しかし固定観念から一歩抜け出せていない物語進行に “短編だから” という言い訳が聞こえそうだし、冒頭の娘のダンスをクライマックス伏線回収しない趣向の無さ>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

3.0

偶然は必然なのか、植物(自然)と文明(人工物)という対比と交錯から男女の出会いという主軸は良いのだが、物語にどう帰着させるのか、ここでは主題を提示する趣向が物足りない。あくまで穏やかに進行する日常の有>>続きを読む

スクリーム6(2023年製作の映画)

3.5

各所のネタは面白いのだが、物語の構成がイマイチ、特に終盤真犯人が解ってからのくだりが凡庸な仕上がりになってしまっている。もっとトンチ効かせるようなオチが欲しいのよ、スクリームファンとしてはね。あくまで>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.5

オーソドックスな少女の成長物語に映画的手法を詰め込んだ上質な作品。田舎で暮らす親戚夫婦のルーティン生活にカメラアングルを変えて繰り返すことによって少女コットから見る世界の変化を描いている。さらに無駄な>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.0

時間と記憶は真相へたどり着けるのか。事実は時に変容する。(歴史修正ではない)それは受け手側の感情が移ろい、過ちを許し禍根は薄らいでいく。人やモノの見方は価値観同様変わる。それは無節操という安易なスタン>>続きを読む

ナイアド ~その決意は海を越える~(2023年製作の映画)

4.0

幾度となく未踏の海峡横断スイミングへと挑む主人公ナイアド(アネット・ベニング)の奮闘を描く。彼女の心の傷は人生をかけたチャレンジ精神へと向かわせる。彼女の熱意に惚れ込む周囲のチームメンバー、彼らにもま>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.5

人は皆、完璧な生き物ではない。何かしら心身にかけているものがあり、それを怪我や障碍、病などの言葉によって区別、判別しようとする。しかし、その言葉にもグラデーションがあり、人は思い込みによって見誤ってし>>続きを読む

ダム・マネー ウォール街を狙え!(2023年製作の映画)

3.5

格差社会と資本主義の疲弊によって市井の人びとは諦めムードに包まれている。そんな現代の株式市場で富裕層へ挑発する主人公キース、彼が次第にマネーゲームから資本主義の核心へと学んでいく成長が主軸となる。彼同>>続きを読む

エグザイル/絆(2006年製作の映画)

2.5

ホモソーシャルな男たちはいつまでも少年のままでいるのだ。と定義されても彼らはもれなく大人の世界にどっぷり浸かってしまい、裏切りやしがらみで関係は崩れかけていたのに、強引にリセットしてしまう独自ルールに>>続きを読む

ブレイキング・ニュース(2004年製作の映画)

3.5

冒頭の長回し撮影による銃撃戦が圧巻、舞台は強盗団が立てこもる団地へと移り物語は混迷していく。強盗団と特捜班の刑事、そして組織犯罪課の女性指揮官、お互いに顔は見えないままメディア中継していくくだりは面白>>続きを読む

ザ・ガーディアン/守護者(2022年製作の映画)

4.0

娯楽作品の要として構成はシンプルで良い、さらに各シークエンスにどれだけ魅力あるネタを詰め込めるか、であり、
・10年前の主人公が敢行する暗殺場面(暗闇でナイフに懐中電灯をくくりつけて格闘する光と陰のコ
>>続きを読む

殺人者(コロシ)を追え(1962年製作の映画)

3.0

奥行きをみせる撮影が印象深い。強盗殺人犯を逮捕すべく若手とベテラン刑事が団地に住む情婦を隣棟で張り込む、窓から見える情婦や違う部屋の住民の生活を覗き見る設定は、ヒッチコック監督作品「裏窓」のモチーフに>>続きを読む

最悪な子どもたち(2022年製作の映画)

3.0

低所得層の人びとが生活する団地を舞台に”あるドラマ” が撮影される。地元の子供たちをキャスティングした過程で、大人の撮影スタッフの至らなさ、子供の演者としてのもどかしさ、それぞれが葛藤する。虚実の境界>>続きを読む

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