ragaさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

2.5

随所に見せ場を用意した冒険譚だが、各場面の尺が長いのでのっぺりした構成になってしまう。どうせスタントマンがやってるんでしょってなインディのアクションは正直ハラハラしない。結構仲間の命を犠牲にしてしまっ>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

3.5

ほとんど台詞が無い主人公の心情を通してある殺人事件の真相に迫っていく法廷劇は稀有な語り口として面白いのだが、次第によく分からない偶然性や言葉の真偽がノイズとなって物語の進行リズムを悪くしてしまう。説明>>続きを読む

惜春鳥(1959年製作の映画)

3.0

因習への抵抗を若者による社会の変革として定義づけるのはいいのだが、裏切りによって若者のコミュニティの崩壊する過程が、それまでの問題意識を矮小化しているようで尻すぼみ感が否めない。主要人物のホモソーシャ>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.0

マルチバースの概念を浸透させたアメコミ映画はそこからどうやってさらなる娯楽へと結実させるのか、繰り返されるメッセージは既視感でしかないけど、それを “陳腐” ではなく “運命” だと定義づける主軸が面>>続きを読む

ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

3.0

時代が変遷していく中で音楽創作への葛藤を抱くひとりの女性に才能と性の偏見が交錯していく。この設定は興味を抱くも、周囲の人物造形がそれほど深くないのでクライマックスで盛り上がらない。何を信じるのか、権威>>続きを読む

ワイルド・チェイス(2000年製作の映画)

3.0

トニー・スコット監督の後継者であろうアントワーン・フークア監督のポップな演出は小気味良いのだが、主人公と対立する金塊強奪犯とFBI捜査官リーダーのありがちな人物造形が魅力半減している。でも危機を切り抜>>続きを読む

ひとつの太陽(2019年製作の映画)

3.5

うまくいく人生は本当にあるのか。そんな悲観に暮れる日常ではなく、人びとはひたすらに生きる糧を手に入れようと勤しむ。目標を見定めるのではなく愚直をかたちにしようと励む。冒頭の暴力シーンをはじめ撮影の巧さ>>続きを読む

これからの人生(2020年製作の映画)

3.0

主演の黒人少年の表情が良い。人びとは誰かに認められて生きがいを見出す。金銭や偏見ではなく、真意にどれだけ愚直に向き合うことが出来るか、互いに過ちや失言に非を認めることが良き人生へと歩むことになる。
>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

3.5

何かひとつの仕事や目標に向かう情熱は素晴らしい。ただそこには障壁や挫折がある。諦めず向き合う姿勢と妥協を混同すると、当初の道程から外れてしまうことになる。ならば、異なる指針や休息もまたひとつの選択肢で>>続きを読む

タイラー・レイク 命の奪還2(2022年製作の映画)

4.0

今作も "痛い" 描写が健在のサム・ハーグレイブ監督、脱獄シーンの長回しショットやクライマックスの高層ビルの対決は趣向凝らしたアクションで堪能できる。ただラストの教会のバトルはもう一捻り欲しい。ここぞ>>続きを読む

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

4.0

主人公バリー・アレンは過去を変えてしまう罪悪を背負う。運命は変えられるのか、それとも抗えないのか、そこにテーマが込められていても悲観ではなく受け入れる大切さをしっかと描いている。地上最速ヒーロー・フラ>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.0

独自の世界観を醸し出す脚本を兼ねたポール・シュレイダー監督の演出は健在、この緊張感で静かな時間の流れが不穏と表裏一体となってクライマックスへとなだれ込む。シュレイダー脚本「タクシードライバー」(スコセ>>続きを読む

ケース39(2009年製作の映画)

2.0

子供に "何か" が憑いている。その恐怖が主人公を追い詰めていく。このホラーの筋立ては別段悪くないのだが、その迫り来る恐怖の描き方にグッとこない。もっと世間からの乖離があって孤立無援になれば良いのに結>>続きを読む

晩菊(1954年製作の映画)

3.0

四人の元芸者が金銭にまつわる世知辛い日常を生き抜こうとする。若さには負けるが、熟した洞察力は、不甲斐ない男性諸氏に呆れながら楽しむ術を模索する。虐げようとする男女差別はここになく、女性の強かさ、男性の>>続きを読む

ある結婚の風景(1974年製作の映画)

4.0

感情の起伏を露わにする会話劇は夫婦という男女の愛情のもつれに焦点を当てて描く。ここに社会背景はなく約50年前の作品だが古臭さを感じさせない。この作風を観ると、韓国のホン・サンス監督はかなり影響を受けて>>続きを読む

ジョニーは行方不明/台北暮色(2017年製作の映画)

3.5

人びとは家族という親近な間柄に諍いをもたらしてしまう。 些事が原因で譲歩をしない対立は良くないと感じるもなかなか前進できない現実にもどかしく結果を先送りしてしまう。平穏を求める家庭の営みが “水” と>>続きを読む

今日もまたかくてありなん(1959年製作の映画)

3.0

木下恵介監督が描く厭世観は現代の言葉ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)という戦争の傷跡を背景にしている。勤労に精を出すサラリーマンの出世欲は復興という名で戦争責任を欺く権力側の計略ではなかろうか。>>続きを読む

グローリー 消えた腕時計(2016年製作の映画)

4.8

各人物の不誠実、功績や保身を優先する言動に振り回される主人公ツァンコの姿は最後に変貌する。愚直な日常に抗うことなく過ごしていたツァンコの生活を周囲は無下に踏みにじる。それは彼を見下してしまう偏見であり>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

2.0

過ぎ去りし夏、リゾート地に訪れた父娘の時間は当時撮影したビデオ映像を数年後再見すると見落としたピースに気づく、という設定に説明的台詞を排除した演出はいいのだが、腑に落ちない場面がノイズとなってしっくり>>続きを読む

ゴールデン・ジョブ(2018年製作の映画)

3.5

世界を駆け巡る義賊ファミリーは仲間の裏切りによって歯車が狂い出す。物語の展開に目新しさはないが、ツボを押さえたアクションを披露して退屈させない。演出はこれでもかとベタだが、娯楽のエッセンスが詰まってい>>続きを読む

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

4.0

音楽だけでなく芝居や絵画などの芸術分野に様々な功績を残したデヴィッド・ボウイの数多ある映像や言葉を編集して表舞台と陰に秘めた心情のジレンマを垣間見せる構成に感嘆する。当時の彼はエキセントリックな振る舞>>続きを読む

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)

2.5

現役引退したクリードの敵は “保身”、彼は隠していた過去にどう対峙するのか。この主題はすごく良い、ただ物語の構成が緩慢で刺さりこみが甘い。現れた旧知の友との対決へ向かう話の強引さはまだ許せる、しかし家>>続きを読む

イマジン(2012年製作の映画)

3.5

世界は見えないけど、自身が想像する世界に足を踏み入れたくなる。視覚障害の人びとは好奇心やまぬ外界とのふれあいを誰の介助もなく歩んでいきたい。しかし現実にはリスクは潜んでいて、保護する側が安全を優先して>>続きを読む

資金源強奪(1975年製作の映画)

4.0

悪漢だらけの犯罪ドラマは東映の十八番であり、ユーモアを加味させた内容は結構軽いタッチに仕上げている。”悪漢だらけ” というのは最後のどんでん返しで効いてくる。思いっきり俗なオチは人間味があって良い。様>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.0

主人公・ターの音楽への傾倒は、自身の性への執着によって困惑へと向かう。人びとを圧倒する音楽の芸術性は果たして人生の変革をもたらすのか、そんな変化が社会の規範や時勢によって画一化してしまう共同体の暴力性>>続きを読む

揺れるとき(2021年製作の映画)

3.5

主人公ジョニー少年の好奇心は、現状の生活からの解放と性への関心が交錯した成長へと駆け抜けていく。理想へとたどり着かない現実に悲観せずにもがく姿は、弱者の運命をほんの少しでも変える世の中であってほしいと>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

3.0

マーベル映画ぞっこんでもない私でも今シリーズは見届けようと臨む。冒頭のレディオヘッド楽曲シーンは良いのだが、以降の構成の粗さが目立つ完結編には心満たされない。”ラストの大団円ダンス”(スターウォーズ >>続きを読む

せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.0

おきくが住む長屋の造りは美術チームの功績として作品の世界観を堪能できる。糞尿売買を生活の糧とするふたりの男が舟を漕いだり台車で農村まで移動する姿も映像として面白い。しかし脚本がのっぺりした構成なので魅>>続きを読む

マルメロの伝言(2019年製作の映画)

4.0

パヴカは事実を隠してしまう。”それは間違っている” と諌めたくなるが、彼はその場しのぎの言葉や即席の虚言で取り繕う選択をする。それは己の自信の無さや相手を信用していない不実である。そこで事態は収まるわ>>続きを読む

ジェニーの記憶(2018年製作の映画)

4.0

ドキュメンタリー作家ジェニファー・フォックスの初フィクション作品は自身の過去を題材にした性的虐待の回顧録である。年の離れた男性との愛情は受け入れた美談として過去を綴じていたはずが深層では異なる記憶とな>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.0

ズームインアウトを多用した撮影やリズム感を意識した編集は、ショーン・ベイカー監督の非凡な演出として退廃的な物語を湿っぽくなく仕上げていく。ただクズな人々がワンスアゲインを夢見る自己中心性にどう落とし前>>続きを読む

ビッチ・ホリデイ(2018年製作の映画)

2.5

倫理の欠如は笑い話の範疇ならば許せるが、人権を無視したり人命の軽視を是とするならば、その代償は何かを提示しなければ、観客側には不快感しか宿らない。その不快感を肯定するのであれば、我儘が横行する社会をど>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.5

サイコサスペンスが展開する前半から倫理の脆弱性を問う後半へと突き進む構成に感嘆する。誰もが自分が正しいと主張する、ここから社会の歪みは止め処ない不穏へと突き進んでいく。現在進行形の狂気はどこかで誰かが>>続きを読む

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男(2017年製作の映画)

3.5

戦争によって犠牲は避けられない。苦悩する政治家の迷走は退屈しない構成だが、プライドによって命の尊厳を踏みにじっていいのだろうか、そこに疑問符を投げかけることをしなければ、戦争という愚行を美談にすり替え>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

4.0

バスケ好きじゃなくても一度は耳にする “エア・ジョーダン” というシューズはどのようにして世に生まれたのか。私たちは結果は知りつつも、生産側であるNIKE関係者が様々な障壁を経て変遷する思惑を面白く描>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.0

世界は言葉でつくられるのか。書籍やエッセイ、講義や過去の記憶、それぞれが言葉によって感情や光景を紡ぎ上げていく。その理屈はわかるのだが、果たして言葉は世界のほんの一端に過ぎない、えも言われぬ衝動や不合>>続きを読む