ragaさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.0

世界は言葉でつくられるのか。書籍やエッセイ、講義や過去の記憶、それぞれが言葉によって感情や光景を紡ぎ上げていく。その理屈はわかるのだが、果たして言葉は世界のほんの一端に過ぎない、えも言われぬ衝動や不合>>続きを読む

トリとロキタ(2022年製作の映画)

4.0

ダルデンヌ兄弟監督の語り口は、社会の不条理をしっかと定めている。今作ではベルギーの移民ビザ交付が非情な対処として露呈する。弱者の生活は何故保護の対象から漏れてしまうのか。民を選別する社会は本当に安全保>>続きを読む

エスター ファースト・キル(2022年製作の映画)

4.0

前作で見事騙された観客は今回エスターの出自はすでに知っているんでもう騙されないぞと思いきやまたも騙されてしまう着想が良い。こうなると冒頭からのチープさは意図的に観客をミスリードしてるんじゃないかなと勘>>続きを読む

劇場版 センキョナンデス(2023年製作の映画)

3.5

政治と日常生活は密接に繋がっている。その真価を問う選挙活動を通して立候補者の思惑を映し出す。実は今作でメスを入れるのは立候補者でも応援者でもない、普段政治に関心がない有権者である。こんな人間味を感じ取>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.0

マルチバースという主軸を通して、ジェンダーや家族観の既成概念を打破するテーマは好きなのだが、顔アップや細かいカットを繋ぐ編集のリズム感が私には合わない。冒頭から終幕まで乗り切れなかったので説明的台詞が>>続きを読む

アメリカから来た少女/アメリカン・ガール(2021年製作の映画)

4.5

台北に住む家族の諍いを憂うように映し出す撮影が印象深い。主人公の長女フェンが自身の主張と家族や社会との乖離で苦悩する心情を巧みに描いている。本当の望みは何か、自由という権利と行動に伴う責任との平衡にま>>続きを読む

インベージョン(2007年製作の映画)

2.5

未知のウイルスによって人類の感情が支配される。このSFは全体主義への警鐘を示唆して民主主義の脆弱性をどう乗り越えるのかが焦点となるが、かなりあっさりと解決してしまう。主人公の息子の救出と逃亡劇に終始す>>続きを読む

オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016年製作の映画)

3.5

世界タイトル獲得の夢を抱くボクサー、オリ・マキは次第に周囲の人々の期待が重荷となり、自身の進路に苛まれる。本当の夢を問いただす、それに気付く彼の清々しさが主題となる。ただ時折迎える彼の人生の分岐点にも>>続きを読む

女は二度生まれる(1961年製作の映画)

3.5

したたかな女性は性を糧にすることを躊躇わない。それがミソジニーの原因だと責められようが意に介さない。そこに矜持と不屈の姿勢が垣間見える。だからこそしたたかなのだ。男性は皆アホで意気地無しだと赤裸々にな>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

4.0

主演オリヴィア・コールマン、撮影ロジャー・ディーキンスの功績だけでも見る価値はある。ただ、物語としてつながりが悪く、時折疑問符が脳内をよぎる。黒人青年スティーヴンは何故入室厳禁な映写室に足を踏み入れる>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

4.0

ルカ・ヴァダニーノ監督は過去作から一貫して様々な愛のかたちを描いている。今作は精神と肉体、そしていのちを食べる欲望と人の命を奪う倫理の逸脱との対峙が主題となる。中盤の射的場のくだりまでは良かったのだが>>続きを読む

サンドラの小さな家(2020年製作の映画)

3.5

社会における弱者が結集してセルフで家を建てる計画を実行する。そこに様々な障壁があるのだろうが、基本良い人ばかりが登場するので、建築過程よりも主人公サンドラと別居中の旦那の話に重点を置いてしまい全体的に>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

3.5

高潮するお祭り映画は勧善懲悪ツッコミ上等で突き進むけど、後半似たようなくだりのリプレイが続くので食傷気味になる。正直尺を半分にすれば完成度高かったのに…とボヤくのは野暮なんでしょうね。なんやかや好きな>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.0

変態を突き進むバーホーベン監督健在なり。野心や嫉妬が瞬く間に伝染する修道院は厳しい戒律であればあるほど無軌道へと陥落する。病より恐ろしい人間の業の深さは現代にも通じる主題であろう。ベネデッタが言い放つ>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.0

恋愛は好きな人を四六時中思い耽るのではなく、普段は互いに粗が見えたり無骨な態度で嫌悪を抱くも時折親密になる瞬間の愛おしさにある。虚飾やトレンドで彩らないふたりの心情がテーマとして和んでくる。背景となる>>続きを読む

ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(2020年製作の映画)

4.0

偏見と差別、打破するべく民の声を結集しようとするブラックパンサー党と変革を恐れるFBI&警察の対立は次第に加熱する。FBIに懐柔された内通者・オニールの密告は果たして罪なのか、彼の苦悩は生涯つきまとう>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

1.0

チャゼル監督の映画愛を込めたエログロナンセンスな笑いが徹頭徹尾スベり倒して目も当てられない。登場人物それぞれが破滅する運命へと陥るが、そこに共感する要素が乏しい。大声出すだけの人物に魅力は無いのよ。横>>続きを読む

ブロンコ・ビリー(1980年製作の映画)

4.0

社会から疎外された者に尊厳はあるのか。拝金ではなく夢を与えることで自己を確立しようともがく主人公ブロンコビリーとその一行の足跡は、人々の思い出としてやがて消えゆく淡い記憶かもしれないが、彼らの信念は語>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

本土の内戦と孤島に住む隣人の諍いは、変革と保守の対峙に通底する。現状に満足しない者、現状を変えたくない者、それぞれが生活する社会はどのように折り合いをつけるのか。それが落語の世界のように間抜けと頑固の>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

2.5

最新鋭のデジタル技術を駆使するもキャラ設定や物語構成があまりに浅薄なので、どんどん先の展開が読めてしまって緊迫しない。この続編の真の主人公はわんぱく次男坊なのだから、彼の父親を超えられない苦悩に注力す>>続きを読む

母の聖戦/市民(2021年製作の映画)

3.5

治安が脅かされ、誘拐という卑劣な犯罪が蔓延する社会に、被害者の家族やその知人、そして加害者の家族に各々理不尽な現実が突きつけられる。それまで誘拐された娘の救済に奔走する母親がいつの間にか暴力に加担する>>続きを読む

ババドック 暗闇の魔物(2014年製作の映画)

3.0

エレベイテッドホラー(複雑なテーマなどが絡む高尚なホラー)というよりサイコロジカルホラーな展開で息子を守る母親が心身ともに追い詰められていくんだけど、冒頭からすでに母親の表情が病んでいるんだよね。「シ>>続きを読む

そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

3.0

主演の藤ヶ谷太輔のクズ男っぷりが良い、これだけ憎たらしい人物なのに、やがて好感を抱いてしまう稀有な役者だと感嘆する。物語は主人公・裕一の不甲斐ない行動が流転するロードムービー形式なのだが、クライマック>>続きを読む

ホール・イン・ザ・グラウンド(2019年製作の映画)

4.5

習慣や決まりごと、家庭生活で見せる所作は安らぎの一端を担う。それが破られた時、人は不安になる。その心理を突いてくるホラーはよく練り込まれた脚本と映像の奥深さによって成就する。息子の変貌なのか、自身の病>>続きを読む

ヒッチハイカーKAI:手斧のヒーロー、その光と影(2023年製作の映画)

2.5

メディアに囃し立てられたホームレス青年の顛末は双方の落胆しかないのだが、私たちが勝手に作り上げた人物像なのだから早計な判断でしかない。ニュースネタとして消費しようとした情報社会の罪へと展開すれば面白く>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

3.5

調査報道に携わるふたりの記者とフォローする編集部の人々は、時折被害者側の人権や加害者側の牽制に苛まれながらも弱者を救うべく社会を変えようと決起する。保守を語る権威主義は心の弱さをひた隠しているだけなの>>続きを読む

花咲くころ(2013年製作の映画)

4.0

ダンスシーンという理屈抜きの感情表現に卓越する演出は、世情や慣習に虐げられた女性へ寄り添う視点をブレずに表現している。そこに信念や打算が衝突しても尚、優しさを失わずに生き抜こうとする健気な少女の心情が>>続きを読む

緑の山(1990年製作の映画)

2.0

アルプスの山にある村に突如知らされる放射能廃棄物処理場の建設計画は、安全性を疑う反対派と将来のエネルギーへの賛同を求める建設推進側との意見対立を描いていくが、これといった打開策や計画への進展がないまま>>続きを読む

非常宣言(2020年製作の映画)

4.0

ソン・ガンホ&イ・ビョンホン&チョン・ドヨンの豪華共演と言いたいところだが、明らかに "別撮り" で進行するパニック物語は、ウイルステロの恐怖から人間の心の弱さへと移行する主題の面白さに釘付けになる。>>続きを読む

山の焚火(1985年製作の映画)

4.5

山の中腹で暮らす家族は、季節の移ろいと将来の不確実性に身を委ねて生活を重ねていく。信教と倫理は人が戒める規範であり、大自然の視野では "それ" は関係無い。ならば禁忌など存在しなくていい。命の大切さが>>続きを読む

カンフースタントマン 龍虎武師(2021年製作の映画)

4.0

香港カンフー映画産業の栄華と衰退の時流が現場に携わった人々の言葉で綴られていく。当時の作品に心酔したファンにとっては見覚えがあるスタントマンや製作者の映像に歓喜するが、"一見さんお断り" ってな不親切>>続きを読む

流れる(1956年製作の映画)

3.5

女性は生き抜くための覚悟をどう見据えているのか。ここに正論を掲げるのではなく世知辛く金銭問題に妨げられても踏ん張っていく姿を描いていく。時が解決するかもしれないが、矜持を損なわず運命に抗おうとする女性>>続きを読む

自由への道(2022年製作の映画)

3.0

家族のもとへ帰る為に奴隷労働から逃亡する男の物語。主人公が追っ手の捜索からサバイバル知識でかいくぐるもクライマックスの戦地で逆襲する局面は “気合い一本” で立ち向かうのは如何なものか。そこはなんらか>>続きを読む

ブラザーフッド(2004年製作の映画)

3.5

戦闘シーンの迫力は珠玉の出来栄えであり、ハリウッド映画に影響を受けている物語構成が飽きさせない趣向を凝らしている。日本だと兵隊さんの美談に終始するだろうが、今作では自国・韓国の権力側の批判も欠かさず描>>続きを読む

風前の灯(1957年製作の映画)

3.5

セルフパロディもあるワンシチュエーションコメディ。郊外の一軒家で起きる身内の愛憎は全てが金絡みという世知辛さを滲み出す。これが昭和30年代の世相であっても現代とさほど変わらない人間の業を感じる。喜劇の>>続きを読む

ホワイト・ボイス(2018年製作の映画)

3.0

自虐を含めた黒人ユーモアは、怒りの矛先を身内へと転換してしまうと誰の溜飲を下げてしまうのか。それじゃいけないと修正してもSF的風刺では現実味が薄れて苦笑しかない。差別を主題にしているけど、アイデンティ>>続きを読む