ragaさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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ガンパウダー・ミルクシェイク(2021年製作の映画)

2.0

ナヴォット・パプシャド監督が構築する世界は独自ルールが支配する。その掟を守るもの、破ってしまうもの、その境界線や動機に際して主人公たちに苦悩が見えず “出たとこ勝負” で乗り切ろうとする浅薄な言動は、>>続きを読む

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)

3.0

格差が蔓延する世界は、東西問わず労働力をグローバルな土壌に追い込んでしまう。本当は家族や共同体といった地域での生活を望んでいるのに儘ならない現状は、やがて分断を生み憎悪や差別を育んでしまう。異なる慣習>>続きを読む

黒い潮(1954年製作の映画)

3.0

「下山事件」を新聞記者の視点で描くドラマは、松本清張の他殺説と異なる自殺説で切り込んでいく。もちろん真相は藪の中だが、下世話な思い込みによる報道への苦言が盛り込まれている。松本清張と通底する "見えざ>>続きを読む

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

4.5

勧善懲悪のストーリーはベタな展開で結末も分かっているのだが、そこに観客をうまくのせていく功績は、主演デンゼル・ワシントンの演技やアントワーン・フークア監督の演出によるものであろう。とにかく痛い描写や流>>続きを読む

ハント(2022年製作の映画)

4.0

80年代の韓国、安全企画部の海外班長パクと国内班長キムが、それぞれ組織内に入り込んだ北朝鮮の内通者を探す任務を秘密裏で奔走する。互いにスパイ容疑を吹っかけてくる、その対立構図から流転していく二人の心情>>続きを読む

燃えあがる女性記者たち(2021年製作の映画)

3.5

インドのカースト制度の外側にいる被差別民ダリトの女性たちが立ち上げた新聞社カバル・ラハリヤの取材姿勢が描かれる。電気などのインフラ問題や不法砕石現場を取り仕切るマフィアへの不平、レイプ事件の被害届を受>>続きを読む

熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)

3.5

ドキュメンタリー映画をリモートで演出する映画監督は国境に隣接した村に滞在しており、その村の慣習が起因する騒動に巻き込まれる。ドキュメンタリー映画に出演する男女にも問題が露呈して板挟みになる映画監督は、>>続きを読む

日本列島(1965年製作の映画)

3.0

アメリカという経済大国の裏仕事は果たして誰が首謀しているのか、そこがあまりに深遠で尻尾すらつかめぬ薄ら寒さを感じる。そこに正義とは何かという綺麗事で終わらない構成はいいのだが、テンポ悪い編集でイマイチ>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.0

ジョン・ウィックの逃亡劇は様々な犠牲を払いながら自由を求めて殺戮を繰り返す。当初の "復讐心" から事態は泥沼化して足枷となった運命からの解放が主題へと繋がっていく。社会との隔絶を求めた先にあるのは >>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

4.5

タイトルの「スティルウォーター」に幾層にも重なった意味が浮かび上がってくる脚本が巧い。人は正義感へ向かってもどこかでつまずいてしまう。その正義も他者から見れば、横暴な振る舞いに映ってしまう。愛と憎は決>>続きを読む

プロジェクトX トラクション(2023年製作の映画)

2.0

定石からはみ出さないストーリーに人情味を付け加えることで娯楽作の出来上がり、といった指標にケチをつけるのは野暮かもしれぬが、全てが安っぽく見える技巧の拙さ以上にキャラクターに深みを与えようとしない演技>>続きを読む

極道ペテン師(1969年製作の映画)

3.0

野坂昭如原作らしい "性" によって相手を惑わせる詐欺商法でのし上がろうとする主人公の奮闘劇。彼を中心とした集団は、とにかく軽いノリでやり過ごそうとするも、ひとりの命の犠牲をきっかけに行政の責任を問う>>続きを読む

ガチ星(2018年製作の映画)

2.5

競輪選手として主人公は何を原動力として発奮したのか、そこがあまりに唐突なのでこちらとの共鳴がイマイチ成就しないまま特訓へと向かう。"そこ" 大切なんだけど、一方的に ”こうだ” と言われても心揺さぶる>>続きを読む

グリーンフィッシュ 4K レストア(1997年製作の映画)

2.5

イ・チャンドン監督のデビュー作は、暴力によって物事を始末つけようとする集団に加わった主人公の暴走が描かれる。各シーン暴力で締めくくる割に主人公の苦悩が浅薄で面白みに欠ける。時折流れるメロウなBGMも悪>>続きを読む

バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

3.0

リチャード・リンクレイター監督のお仕事的な仕上がりなので、主人公自身の喪失した時間を模索する姿があまりに凡庸で、ご都合主義的な物語進行へと連なっていく。時間は常に進行する。安易にノスタルジーへと踏み入>>続きを読む

日々は、うたかたに(2021年製作の映画)

2.0

ファミリー向けの直球人情物語かと思いきや、ラストかなり心の闇へと陥ってしまう。これはある意味シャマラン的などんでん返し、物語進行や音楽の使い方からそんな気配一切なかったのに、”ほら、みなさん騙されたで>>続きを読む

ザ・インタープリター(2005年製作の映画)

4.0

ニコール・キッドマンとショーン・ペンの駆け引きで終始緊張感みなぎるサスペンス。次第にふたりの過去が明かされていくのだが、安易に回想シーンを挿入せず残された写真やキーワードで観客を真偽へと惑わせる手法は>>続きを読む

サンド・ストーム(2016年製作の映画)

3.5

イスラエルの辺境にある村の因習に抗う若者は、親の世代の諦念に違和感を感じ男尊女卑の営みに嫌悪する。ここではない別世界にしか活路はないのか。しかし家族というしがらみが決断を躊躇させる長女の苦悩が描かれる>>続きを読む

警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件(2022年製作の映画)

2.5

ドキュメンタリー作品には様々な構成があるが、関係者のインタビューと再現映像が主な構成というのは芸が無いと感じてしまう。リアルタイムで被写体を追いかけるのは難しいが、対象となる人びとの日常へと刺さりこむ>>続きを読む

傷だらけのふたり/恋に落ちた男(2014年製作の映画)

4.0

主人公を演じるファン・ジョンミンの魅力満載のラブロマンス時々バイオレンス物語。音楽も構成もかなりベタなのにしらけないのは、全編に漂う “境遇への怒り” が基軸となっているからであろう。要はロマンスにあ>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

2.0

今まで知らなかった史実を露わにする主題は意義あるものであり、加害側への考察が再び負の出来事を繰り返さない未来の拠り所となる。この惨劇を基軸に村社会という閉鎖的なコミュニティにおける “同調への安心感”>>続きを読む

クジラの島の少女(2002年製作の映画)

3.5

ニュージーランドの先住民族マオリ族がどのような慣習を大切にしているのか、そこに焦点を当てて伝統とジェンダー差別の認識を更新していく構成はベタだが面白い。だが主人公の娘パイケアと祖父母以外の人物造形が雑>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

2.0

交錯する男女の恋愛模様は、豊かさの陰にある情緒不安定が露呈する。彼らの躍動は損得勘定で判断している。果たしてそんな生活環境に幸せが訪れるのか、疑心が横行するコミュニティーから誠実さを取り戻すには自身の>>続きを読む

マザーズ(2016年製作の映画)

3.5

妊娠による情緒不安定な生活はホラー的要素が含まれている。「イレイザーヘッド」「ローズマリーの赤ちゃん」然り、そこからどうやって次の局面を迎えるのか、今作にはそこが欠けている。したがってカタルシスへと高>>続きを読む

リトル・チルドレン(2006年製作の映画)

4.0

過去は変えられない、だが未来は違うものになる。社会の片隅で虐げられる弱者は日常からの逃避を渇望する。そこに家庭という足枷があるかもしれぬが、振り切れる勇気があるか、振り切れぬ言い訳に妥協するか、その判>>続きを読む

MIFUNE:THE LAST SAMURAI(2015年製作の映画)

3.0

名優の軌跡を辿るドキュメンタリーは、賛辞や礼節へのこだわりに構成されていて、彼の名声に潜む苦悩は僅少でしか描かれない。ファンならば栄華の側面で楽しめるだろうが、映画という娯楽と芸術を兼ね備えた文化にお>>続きを読む

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)

2.5

おごり高ぶる誘拐犯はエスカレートして被害者の彼氏に自身の行為を承服させようとする。なぜそこまで承認欲求にこだわるのか、犯行の背景が全く見えない物語は、被害者の彼氏が起因するユルい終幕を迎える。彼氏も脚>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.0

女性たちが憧れるバービーをジェンダー差別や男性側が心酔する価値観の突破口とする主題はいいのだが、バービーたちが暮らすバービーランドが肝心な問題を綺麗事で収めようとする顛末に訝しむ。バービーもまた人間が>>続きを読む

死霊のはらわた ライジング(2023年製作の映画)

4.0

あの名作ホラーのエッセンスを踏襲した内容は、倫理観を無視した恐怖に包まれる。子供が登場するからといっても容赦なく殺意と血しぶきが吹き荒れる惨劇に不謹慎だが喝采する。ただ現代的なアイテムがドローンしか活>>続きを読む

HERO(2002年製作の映画)

4.0

原色を多用した映像美と史劇を絢爛に描くアクションが印象深い。"武" という暴力と "書" という非暴力の対比、"復讐" と "寛容" の葛藤がテーマとして引き込まれていく。この世界観はクリストファー・>>続きを読む

ダーク・アンド・ウィケッド(2020年製作の映画)

3.0

“何かがいる、もしや悪魔かも” という局面から一向に進展しないので退屈する。事態がエスカレートしたり立場が逆転するなどの起伏がないと、超常現象の羅列では物語性は希薄になる。そこに因果関係はなくてもいい>>続きを読む

金環蝕(1975年製作の映画)

3.5

ある入札工事に関連する贈収賄、政界と財界が互いの利権を求めて私腹を肥やそうと画策する。正義はのちに裏切り、告発は公にならず隠蔽される。体裁と保身に執着する為政者は有権者に目もくれぬ腐敗へ突き進む。解決>>続きを読む

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)

4.0

いつもと変わらない日常はルーティン生活で過ぎていく。そこに会話が無いのは、互いの信頼に繋がっている。説明的台詞を排した演出は、そこにリアリティを求める以上に主人公クリスと叔父の喜怒哀楽が垣間みえてくる>>続きを読む

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

2.0

各場面の登場人物の言動にしっくりこないのは脚本が拙いのか、演出が不出来なのか、"なぜそうなる" の連続は人物造形の浅さであろう。人物が活きてないから、背後(作り手)の "段取り" しか見えてこない為、>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.0

このシリーズの醍醐味、タイムリミットやトリック(とんち)は、あるっちゃあるけど、薄いんだよね、かなり薄い。手強きAIの恐怖もそれほどでもないし、ストーリーや脇役の魅力が及第点に届かないので、アクション>>続きを読む

ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K 完全無修正版(1975年製作の映画)

3.5

追悼ジェーン・バーキン。セルジュ・ゲンスブールの演出はぎこちなさが目立つが、取り扱うテーマがジェンダー問題に向き合った恋愛という現代にもしっかと通用する先駆的なメッセージが込められている。結構多い全裸>>続きを読む