てんあお

ウィッチのてんあおのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
4.5
2017.12.2~3 新文芸坐オールナイトで鑑賞
参った。これは想像以上に好い拾い物。

ホラーというよりも、オカルトとダークファンタジーの映画であり、何より「信仰」についての映画でもあった。『尼僧ヨアンナ』よりは取っつき易く、それでいてスコセッシ版『沈黙』ほどサディスティックではない(そう言えば だいたいの位置づけもイメージしてもらえるだろうか?)

少し脇道。有名なビデオゲームに『スカイリム』と言うものがあり、そこに登場する「ハグレイブン」という敵キャラクターがある。それらはいわゆる魔女のイメージではあるのだが、すでに人間としては扱われておらず「おぞましい化物」扱いされている。かつては人間、女だった筈なのに、みる影もないほどに醜く、言葉を用いることすらも儘ならない。なぜ 彼女たちは、そのようになってしまったのか? この『ウィッチ』は、その疑問に解りやすく答えてくれたように思える。

更に余談だけれど、この映画のトーンの低さは、その「おぞましい化物」のおぞましさを倍加させている。『ツイン・ピークス』ではないけれど、やっぱり暗闇に蠢くものに対する畏れは、大事なことだとおもう。

ロバート・エガース監督は、古い時代のホラー映画を観て育ったというが、この『ウィッチ』を観る多くの観客が思い浮かべるのはキューブリックの『シャイニング』だろうとおもう。周囲には「恐れ」があり、それらに漠と囲まれた登場人物たちが、神経衰弱する過程にこそ ホラーの源泉がある。

そして人知を超えるものを適切に「開帳」する術も、心得られている。素晴らしい。彼(等)の手によって、ノスフェラトゥが再び召還される日が来るのが待ち遠しい。
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