てんあお

ワイルド・スピード ICE BREAKのてんあおのレビュー・感想・評価

4.2
悔しいかな面白いのだけど、面白さの成分が各々細かすぎて何から説明すべきか混乱する。

いわゆる一介の「GTA」をはたらく走り屋連中だった彼らが、どうして世界を救うような物語の主人公に成りうるのか。そもそもの原因はどこから来ているのか。

個人的には、主演のヴィン・ディーゼルが、過去に『リディック』と『トリプルX』という2つのシリーズ企画を一回は潰された怨念から、この種のアンチヒーロー企画の賛同者たちを巻き込んで、ブロックバスターと呼ばれるハイバジェット映画そのものに対し本格的に逆襲を始めたようにも思えた。

ああ見えてヴィン・ディーゼルという人物は、脚本家・映画製作、ビデオゲームのプロデュースまでこなし、それぞれの分野で会社も持っている。しかも筋金入りの(ビデオじゃないほうも含めた)ゲーマーでもある。マッチョだけれど、基礎部分にボンクラ成分を持つ、愛すべき(現在の主流に近いところにたどり着いた)映画人といえる。

ともかく、チンピラなノリで無茶苦茶であっても、その無茶苦茶加減が素晴らしいのである。

「ロック様」とジェイソン・ステイサムが場外乱闘寸前の舌戦を繰り広げ、そこにビンス・マクマホンばりに茶々を入れるのがカート・ラッセルという、よく分からんけどクラクラするような場面があったり。そうかと思えば、先日の『ジェイソン・ボーン』のお株を奪うような「神の目」を巡る件があり…。はたまた意外なところで大女優が出てくるは、お前は「子連れ狼」か!という展開があるわで盛りだくさんという…(このくらいならネタばれじゃないよね)。とにかくお腹いっぱいになること請け合いの一作。

そこはブルース・バッファーと言いたいところだけれども、その兄の名コール" Let's get ready to rumble! "とばかりにいろんなジャンルの精鋭がシノギを削る、そうは見えないけれどもやくざな世界が、スパイ亡きあとに蔓延っている、陽気なピカレスクというべきか。

ちなみに自分は5作目以降は記憶がおぼろげ(観ていない)けれど、それなりに楽しめる。むしろ前述のヴィン・ディーゼル関連作品や、あるいはビデオゲームの Forza Horizon 2(The Fast and The Furious の名前を冠したスピンオフもある)辺りに関する理解があった方がより楽しめるとおもう。素晴らしきボンクラ映画であり、ある意味 新世代のサブカル最前線なのかも知れない。
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