ピロシキさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ピロシキ

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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.4

どちらに肩入れするのも難しい。善人も悪人もいない。それぞれが、自らの正義のもとに動いているだけ。やがて、それを他者にも受け入れてもらえることを望む。当然うまくいかない。だから憤る。そこから暴力が生まれ>>続きを読む

春のソナタ(1989年製作の映画)

3.5

冒頭、独りきりの主人公が自宅に帰るまでの5分程度のシーンに、セリフはなし。その後イトコと再会し話し始めてからエンドクレジットまで、セリフしかなし。誰かといるときは基本的にあぁでもないこぅでもないと喋り>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

3.8

睡眠導入映像、以上。でもいいのだけど、なんだか心から突き放す気にもなれない不思議な作品だった。お話はどうであれ、バッチリ構図がキマりまくった映像の数々に魅了されたのだと思う。冒頭から『TAR』でそっく>>続きを読む

熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)

4.1

"熊注意"の標識について問われた村人が「夜道に皆んなを出歩かせないようにするためのもんです。本当には出やしませんよ」などと返すシーンがあった。『熊は、いない』はパナーヒー史上最高に、怒ってる作品だった>>続きを読む

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

3.7

砂糖をむさぼり食う素っ裸の私、第1部
一糸纏わぬ姿だが肉感的には映らない女
女にとっては、それが日常

私を拾ったトラック運転手の彼、第2部
カメラに映らない場所で絶頂に達する男
男にとっては、それが
>>続きを読む

ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.0

15年ぶりぐらいの再見、もはや未見。こんなに染みるとは、と我ながら驚く。まだまだこの頃は「七光り」と言われまくっていたであろうソフィア・コッポラ、こんなの作って出してきたらそりゃ皆んなひっくり返るやろ>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.3

前作「フレンチ・ディスパッチ」は、大枠となる1つの話の中に小さな話を3つも詰め込んでいたせいで、なかなかついていくのに大変だった。そしてこの新作は、大枠の1つの話とそれにまつわる劇中劇が交互に進行し、>>続きを読む

十戒(1956年製作の映画)

3.8

なぜか急に火がつき、ついに完走。ちなみに海が割れるあのシーンまで3時間15分かかる。いくらなんでもさすがに長いが、その後ヘブライ人たちが40年も荒野を彷徨ったことをサラッと1分で紹介するのは、いくらな>>続きを読む

アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー(2022年製作の映画)

4.0

基本的に全部回想、そのうち半分は回想の回想、そしてときどき妄想、みたいなお話。お話と言ったって主人公の少年が家族と一緒に地元をウロウロしたり家族に内緒でNASAに行ったり月に行ったりするだけのなんてこ>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.3

チリで実際に起こったあまり宜しくないツラい歴史を揶揄していることはあとで調べてなんとなくわかったが、もはやそんなことはどうでもいい。全然理解は追いついてないが、無理して追いつく必要もないしそもそもでき>>続きを読む

(2021年製作の映画)

3.4

もはや「ヤバい」ぐらいしか言葉が出てこないけど、何がヤバいってこんな気持ち悪い映画見に行くためにわざわざ川崎まで行った自分がヤバいし、ド平日のド昼の回にもかかわらず前方の席を除いてほぼ満席だったことが>>続きを読む

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

3.8

アルチュウオンナのショウゾウ、なんと愉快なタイトル。実際に蓋開けてみたらほんとにアル中の女を追いかけ回すだけの映画になっており、これまた愉快。だいいち「飲酒旅行」などという四字熟語、初めて聞いたし。片>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

4.2

『2001年宇宙の旅』を真似た冒頭。「バービーの出現によって女の子たちの世界は劇的に変わった!」という過去から、最終的に「そろそろ人類はみな立場も性別も超越した"スターチャイルド"にならなければならな>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.0

ジャームッシュなら「なんか銃拾っちゃったんよね〜」からユルユルなロードムービーが始まりそうなもんだが、こちらはなかなか容赦がないお話し。悪いことといったら人の物こっそり盗むかモーテル代滞納してるかぐら>>続きを読む

淑女と髭(1931年製作の映画)

3.1

先日横浜でやってた小津安二郎展に行ってきた。原節子を絶賛する直筆の手紙とか、山中貞雄との出会いと別れとか、かなり胸熱な展示の数々にグッときたのだけど、それとは別に軽い衝撃だったのは、サイレント時代の小>>続きを読む

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)

3.5

ブレッソンが案外普通の映画を作っていた、初期の代表作。若き聖職者による自分語りが全編にわたってナレーションとなり、台詞もそこそこ多いのだが、もはやそれすらなくなってしまった後期の作品と比較すると、やは>>続きを読む

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

3.8

ピーター・ソーン監督が韓国系移民二世のアメリカ人であることや、エンドロールの最後には写真とともに両親へのメッセージが添えられることからも、きっとすごくパーソナルな作品なんだと思う。その前提においてどう>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.8

気がつくと前作からもう5年経っているが、イーサン・ハントの身体能力と女好きっぷりはそのままに、大胆さと無茶苦茶さはなんならパワーアップしていて焦る。

終盤の列車のシーンなんて、もはや「やり過ぎ」を通
>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

3.7

ダルデンヌ監督が好んで淡々と描きそうな題材(元ロゼッタ、エミリー・ドゥケンヌも出ておられる)。主人公の悲しみが中盤から徐々に膨らんで最後に爆発するような展開は、ものすごくダルデンヌ的だった。それに見慣>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.3

宮﨑駿が『フェイブルマンズ』を作ろうとしたら『レディ・プレイヤー1』ができちゃった、みたいな映画。「君たち」なんて呼びつけてくれちゃって、さぞかし老人特有の説教臭さに溢れた教育アニメーションなのだろう>>続きを読む

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

4.2

「こわくない…」とそんな笑顔で言われましても、子どもの頃に見たあなたは相当怖かったんでございますよ。アニメーションとはいえ、これは戦争映画なんだもの。人が死に、動物が死ぬ。赤い血が出て、青い体液も出る>>続きを読む

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

3.7

「こんな時間が一生続けばいいのに」が、本当に一生続いてしまったらそれはそれで困る。とはいえ、ここに出てくる人々はそんなに困っているようには見えない。相変わらず、タイムループという異常事態にもかかわらず>>続きを読む

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)

3.4

観客として最初から全てを観ていた自分が理解するより先に、あとから出てくる登場人物たちが神がかり的な飲み込みの早さで状況を理解し、タイムループで遊び始める。2分後の未来が見える、などというありえない状況>>続きを読む

To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)

3.3

主人公レスリーの行動や言動に対して、こちらの忍耐力が試される2時間。そのうちの1時間50分ぐらいは、やはりイライラしてしまった。イライラしたって仕方ない、彼女はアルコール依存症というれっきとした病気な>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

3.8

泣く暇も笑う暇もないほどに、矢継ぎ早に繰り出されるシーンの数々。アニメーションで表現し得る領域の限界に挑んだ結果、実写パートにまで踏み込んでしまったのは草。マルチバースなのだからもうなんでもあり。>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.2

クリスティアン・ムンジウの「汚れなき祈り」を思い出した。大昔の話と見せかけて実はめちゃめちゃ現代の話、というやつ。舞台は2010年、iPhone4が発売した年。一方で、世間から切り離された村の女性たち>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.6

将来のスターを信じるナイキの社員、部下を信じるCEO、息子を信じる母親。それぞれの信念が、ビジネスという枠組みの中でぶつかり合う。会話の応酬のテンポは小気味よく、キャストのパフォーマンスの安定感も相ま>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.9

構成うまい。…うますぎるぐらい。わかりやすく心を打つ。…わかりやすすぎるぐらい。

3部構成。前半はあらゆるシーンがとにかくぶつ切りで、何の意図があるのかと考えつつも胃のキリキリするような展開が続き、
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.8

「自分自身がかつて父親から受けたような愛を、今の私は自分の子どもに与えてあげられているのだろうか?」主人公ソフィが過去を紐解くためのスタート地点は、そんな自問自答だったのかもしれない。現在の彼女が子ど>>続きを読む

雄獅少年/ライオン少年(2021年製作の映画)

4.3

5時に夢中で岩井志麻子が大絶賛してたのを受けて、細かいことはあまり考えず、とにかく劇場へ向かった。正直なところ、ストーリーは山も谷も含めて「たぶんそうなるんだろうな」が「やっぱりそうなったな」に変わっ>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

リディア・ター氏がどれほどの努力や苦労の末に今の地位を手に入れたのか、それはほとんど語られない。既に思いのままに行使できる権力と、それを脅かす自らの過去の所業。「バッハに興味はありません」と言う男子生>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.2

静かで穏やかな時間の流れと、残酷で容赦のない物語のコントラスト。これは、我が物顔で動物や自然を蹂躙する人間たちに向けられたアラートだ。腹が立ったら壊す。使えなくなったら棄てる。人間さまの都合に振り回さ>>続きを読む

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.7

マリオが何度も失敗しながらトレーニングコースをこなすシーンで、ボニー・タイラーの「ヒーロー」が流れる。製作側が空耳アワーの「兄が疲労」を意識して選曲していたら素敵だなあと思う。弟を救うために、兄は疲労>>続きを読む

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

3.3

冒頭から、歯のないおじさんによる魂のロックナンバーをフルコーラスで聴くことになる。絵画教室、おじさんのギターソロ、ダンス教室、ピアノマンの独唱。自由を謳歌しているように見えて…実は全然そんなことない事>>続きを読む

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

3.9

京都が舞台なのに誰一人関西弁を話さないし、大学はどうやら不特定なのにキャンパス内にガッツリ立命館大学と書いてあったりして、冒頭から細かいところがいちいち気になってしまって困った。しかしながら物語が進む>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.7

貧困。被害に遭った女性たちの親が「あんな娼婦、私の娘じゃない!」と言いながら泣きじゃくるシーンに居た堪れなくなる。貧困を生き延びるために、あるいは幼い子どもを養うために、娼婦になることを選ぶ女性たちが>>続きを読む