ピロシキさんの映画レビュー・感想・評価

ピロシキ

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按摩と女(1938年製作の映画)

4.0

歩く二人を正面から捉える冒頭と、それと対になるラストシーン。それに加えてたびたび出てくる、滑らかすぎるパンショット。そして徳さんが、すれ違う彼女の気配を察して「ミュート」になるあの瞬間。嗚呼、是は藝術>>続きを読む

駅馬車(1939年製作の映画)

4.2

インディアンがめちゃくちゃに悪者扱いなのはいったん「時代のせい」として置いておいたとしても、冒険活劇としての『駅馬車』の面白さは、時代を超越している。馬から馬へと飛び移る正気の沙汰ではないアクションに>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.9

ポスター良し。幼少時の家族との記憶を目を閉じて反芻する主人公、そしてそれを隣から温かな眼差しで見つめるもう一人の彼。星の数ほどの出会いの中から、共に生きることを決めた2人…

主人公がクィアーになるな
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僕はキャプテン(2023年製作の映画)

4.0

マッテオ・ガッローネの作品を今まで一度も好きになったことはないけれど、これはもう。今までの作品同様に、非情な現実を叩きつける姿勢に容赦はない。とにかく視覚的にも心理的にもひたすらしんどいお話である。し>>続きを読む

これがロシヤだ/カメラを持った男(1929年製作の映画)

3.5

およそ100年を経て、正直、本当にこれがロシアかと言いたくなるような世界情勢ではあるけれど

カメラの三脚がヌルヌルと動き、ストップモーションまでやっていたのかと感動。技術のひけらかし、大歓迎、しかし
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ダークナイト(2008年製作の映画)

4.2

2008年公開当初は、IMAXシアターなんてテーマパークにしかないもんだと思っていたし、実際にそうだった時代。ここからノーランがIMAX撮影を始め、映画業界の変革が始まる。エポック・メイキングである。>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.2

『GIFT』では石橋英子氏のライブパフォーマンスと並列扱いだったサイレント映像が、こちらでは完全に劇映画として前面に出ているわけで、まさしく濱口ワールドの独壇場であった。たしかに『GIFT』はガッツリ>>続きを読む

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.7

邦題は的確かつ率直な訳。

「写真家ナン・ゴールディンvs.サックラー社」をめぐる、beautyとbloodshed。自らのアートを用いて、社がやらかした失態に抗議する。ピルケース投げたり処方箋ばら撒
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ローラ(1981年製作の映画)

3.4

ファスビンダーじゃなかったらそもそも観ようとすら思わないであろう絶妙につまらないお話(なんとリメイク)は、売春宿の便所から幕を開ける。ギラギラのライティングに彩られ煌びやかに着飾った女と、彼女を取り合>>続きを読む

フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

3.8

フォロウィング(尾行)を趣味とする男が、家宅侵入するコッブという名の男と知り合い、行動を共にし、しだいにコッブの言葉にフォロウィング(追従)するようになり、ついにはコッブのフォロウィング(模倣)を始め>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.2

パスト・ライブス(前世)の意味を紐解くような、終盤の横移動は美しい。でもごめんなさい、これはさすがに過大評価だと思う。うがった見方から抜け出すことができなかったのは単に自分の都合。しかし仮にもかつて勉>>続きを読む

ソドムの市(1975年製作の映画)

4.0

ついに観てしまった。ウンコはまだしも、やっぱり最もショックが強いのはラスト5分のシーンだった。罪のない無垢で美しい市民が、権力者から一方的に弄ばれ、虐げられる光景。そしてこのあとパゾリーニ監督が(まる>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

4.2

あとから解説に「全8章で構成される」と書いてあるの見て「どこが!?」と声出た。どこで章変わってたのか自分にはまるでわからなかった。意味を持たせようとすればするほど、わけがわからなくなっていく。あらすじ>>続きを読む

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)

4.4

Amazonで4,0000円超えの廃盤DVDを買うべきか否か、迷った末にようやく再上映の機会を見つける。面白かったとか以前にとにかく「みた…!」って感じである。ご飯食べてから観たら絶対寝るという確信が>>続きを読む

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作の映画)

4.6

邦題。置いてけぼりのホリディ。ちょっと待ってイが小さい…イが小さィ…

中盤からロードムービーになる構成も、音楽も、ところどころ同監督『ネブラスカ』を彷彿させる。ネブラスカ大好きな自分にとっては、無条
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

アラキスのフレメンたちからマフディーだと思われてムアディブだのウスールだのと名付けられたポールが、フェイダキンになったあとゼンデイヤといい感じになったりリサン・アル・ガイーブとして崇められたりする一方>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.2

声出して笑えるシーンの後に、すかさず訪れるシリアスなシーン。喜劇は悲劇と表裏一体、これがブラック・コミュニティの現実だ……ってちょっと待ちなさい。アメリカン・フィクションというタイトルを通して、逆説的>>続きを読む

ニモーナ(2023年製作の映画)

3.4

エキセントリック少女ガール。これといってたいした感想は浮かばないが、主人公の男子にナチュラルに彼氏がいる感じとか、新たなスタンダードを打ち出そうとする姿勢には畏れいる。ただ、ニモーナがやかましくいろん>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.9

より鮮明になった映像のお陰もあり、もはや新作。2000年製作だが時代性は皆無で、むしろ民衆が蜂起して街に火の手が上がるシーンなんて、ついこないだのニュース映像みたいで、もはや現代。〈街の広場に現れるサ>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

よくできた法廷ドラマ。それも、たいした毒味のない、たいした風刺もない、ただのよくできた法廷ドラマ。その範囲を出なかったんだが、あれやこれを差し置いて何がそんなにパルムドールだったのか、あれやこれを差し>>続きを読む

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

3.6

くしくも今朝、"本物かどうか見分けがつかないような" 動画を生成するオープンAIの「SORA」が誕生したというニュースを目にして、この作品にも親和性を覚えることとなった。恐るべきスピードで進化するAI>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.3

体感209分。総じて意味不明。ラストだけ声出そうになったので増星。謎だらけだがもはや解き明かす気もなく、謎は謎のままで結構。個人的な妄想の具現化に莫大な予算が投じられる、アリ・アスターとA24との信頼>>続きを読む

カラーパープル(2023年製作の映画)

2.9

大雨のなか乱暴に家を追い出され、ショットガンまで突きつけられて大ピンチの妹に向かって姉が言い放つ「手紙書いてネェ〜〜!!」に、不謹慎ながら派手に吹いてしまった。たしかに妹が出て行かないと物語は動かない>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.1

一度で覚えられないような苔の名前を完璧に暗記している彼女だが、二度も出会って心を通わせた彼の名前は、知らない。それでもいいのだ。スープの温かさが胃にも心にもやさしい、ある出会いについてのお話。日にち経>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

その気になったら2,3日(つまり2,3晩)で撮れるかもしれない、かなりミニマルな作り。終電乗り過ごしたおかぁちゃんがなんとかして朝方に帰宅するまでの間に、いろんな人と出会い関わって、良くしたり良くされ>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.7

いくらなんでも、良すぎやしないか。個人的にはK点超えの(『ケイコ』を超える)傑作だ。

中盤から我慢できなくなった隣のおねえさんがチラチラスマホを触り始めていたけど、なんならその眩しい光すら、オリオン
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.4

嗚呼。31年間映画製作から離れていたビクトル・エリセ。主人公はまさしく監督の分身。それにしても、デブュー作「ミツバチ」からちょうど半世紀を経て、アナ・トレントが放つあの一言。正直、あの一言のためだけに>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.7

グラシネ池袋IMAX、上映後自然に起こる拍手。我慢して大人しく座っていられた自分を褒めたい、脳内絶叫上映。クリアな映像と音像いや、バカでかい画面とバカでかい音に圧かけられまくって、終始幸福。なんか途中>>続きを読む

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

3.8

相変わらずの入れ子構造、今回は"劇中劇中劇中劇"にまで層が分かれ、最初から最後まで途切れぬフラッシュ暗算並みの爆速字幕スーパー。不親切にも程があるし、しかも肝心のお話自体も別に魅力的ではない。でもやっ>>続きを読む

彼方に(2023年製作の映画)

3.3

18分はあっという間。楽しかった思い出も、悲劇も、あっという間。でも愛する家族を失ってからも続く人生は、長い。なぜ自分だけいつまでも生きているのかと、「生き残ってしまった」ではなく「死に後れてしまった>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

ウェス・アンダーソンとテリー・ギリアムを掛け合わせた、みたいな海外評を目にしたけど、何をおっしゃる結局超ランティモスだった、話題の新作。やっぱり出てくる奇天烈なダンスシーンあたりからズボッと吸い寄せら>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.5

家族以外の誰かから注がれる愛によって、少女が成長を遂げていく。キム・ボラ監督の大傑作『はちどり』を思い出す。

この子が黙っているのは、必要なことしか話さないから。みんなもこの子みたいだったらいいのに
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テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR(2023年製作の映画)

4.0

コロナ禍にアルバム2作、その後にもう1作。アルバムごとのツアー最近やれてないか、じゃあ今までのアルバム全部まとめて3時間超えのライブやるか で誕生したとかいうThe Eras Tour。同時期公開のビ>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.7

男性の腰抜けっぷりは意図的に強調され、圧倒的に芯の強い女性像が際立つ。これは、2023年にAppleスタジオから生まれた、巨匠による2つの大作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、そしてこの『ナポレ>>続きを読む

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(2011年製作の映画)

3.6

最終作の、しかも終盤で、一作目からずっと張られ続けてもはやとっくにビヨンビヨンにたわんでいた、スネイプに関する「伏線」がようやく成仏する。ハリーもハリーで、まだ背も伸びきらないうちからあんなに「スネイ>>続きを読む

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(2010年製作の映画)

3.6

ここまで物語に華を添えてきた主要人物にもかかわらず、最期のシーンすら与えられず、「実はさっき死んだ」の事後報告で右から左へ受け流される、ムーディの死の悲報。ところどころアッサリしすぎてコケそうになるぐ>>続きを読む

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