ピロシキ

テイラー・スウィフト:THE ERAS TOURのピロシキのレビュー・感想・評価

4.0
コロナ禍にアルバム2作、その後にもう1作。アルバムごとのツアー最近やれてないか、じゃあ今までのアルバム全部まとめて3時間超えのライブやるか で誕生したとかいうThe Eras Tour。同時期公開のビヨンセのコンサートフィルムのほうはその舞台「裏」をあえて見せる意図があったけど、テイラーのほうはひたすら「表」のみ一本勝負の3時間。でも観客である我々は、その裏に潜むテイラーの努力と苦悩と葛藤をすでに知っている。それらはすべては歌になり、エンターテイメントに昇華される(改めて歌詞を追うと特にコロナ禍2作は「死」がモチーフになっている曲もわりと多いことに気付かされる、知らんけど)。

うら若きカントリーシンガーとしてデビューし、アンチヒーロー・カニエにマイクを奪われ全米が味方になり……その後は、誰と付き合い誰と別れたかすらも、たとえ興味がなくても耳に入ってくるほどの注目度。しかしながらこのライブを目にすると、やっぱりこの名声は、周りが与えたのではなくテイラー自身が実力で勝ち得たものなのだと思わされる。あと改めて、音源に対してのボーカルの再現度が異様に高いことに驚く。ここまで意識的にやってるアーティスト、マイケル・ジャクソン以来では。ライブだからと変にひねったりフェイクを効かせたりせず、観客たちが何百回も聴いて歌ってきた原曲に沿う、ブレのない歌唱。そりゃ大合唱になって当たり前ヨ。

個人的に熱心に追いかけてきたわけではないけれど、特にFearless、Red、1989あたりに関して、やはりエモ汁は沁み出る。そういえば自分、テイラーと同い年だった。テイラーのeraはつまり、自分のeraでもあった。
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