ピロシキ

マイ・エレメントのピロシキのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
3.8
ピーター・ソーン監督が韓国系移民二世のアメリカ人であることや、エンドロールの最後には写真とともに両親へのメッセージが添えられることからも、きっとすごくパーソナルな作品なんだと思う。その前提においてどうやら監督自身は「火」で、それに対する「水」はどうやら白人っぽい(少なくとも自分にはそう見えた)。そりゃ、火を噴くほど辛い食べ物を好む人々の文化には戸惑うだろうし、逆に「味変したら食えますよ〜」なんて軽々しく言われたらコノヤロー‼︎とキレるのも自然だろう。

そしてこの「火」と「水」の対比は、監督の目を通して見えたアメリカという国そのもの。たとえば、生まれと育ちの良さだけでたいした能力がなくとも行政の仕事に就けてしまう富裕層/男性。一方で、才能があれども自らのルーツを理由に夢を断念することを選ぶ貧困層/女性。または、それらを静観するお役所仕事のテキトーっぷり。それだけではなく、収入の安定しないアート系の仕事へと足を踏み入れることへの懸念、プライベートにガンガン首を突っ込んでくる親、門前払いを食らった展示会、街を襲う水害(トラウマのある場合は要注意)など、どこまでが監督の実体験なんだろうかと思いながら観ていた。

「心が通い合っていれば、互いが互いを滅ぼすことはない」。そんな教訓の土台にあるのは、移民としてアメリカに渡って根を張り、自らを生み育てて、アニメイターとしてのキャリアにも背中を押してくれた両親への、監督からの「最大級の敬意と感謝」であった。過去の大傑作『モンスターズ・インク』や『インサイド・ヘッド』によってこちらのハードルが上がりまくってしまっていたけど、世界設定をバーッと一気に見せる冒頭5分のスピード感にはやはり鳥肌が立ったし、大スクリーンで堪能するグラフィックの美しさにはやはり目を見張るものがあった。
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