ひこくろさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

ひこくろ

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魔女と呼ばれた少女(2012年製作の映画)

4.7

過酷、という言葉では到底足りないような現実の重さに震えが走る思いがした。

冒頭から残酷な現実は顔を出す。
わずか12歳の女の子が銃を渡され、目の前の両親を殺せと迫られるのだ。
断れば、代わりに鉈で痛
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マリといた夏(2002年製作の映画)

4.0

韓国のアニメ業界に疎いので、これが普通なのかどうかはわからない。
ただ、明らかに日本のアニメ作品とは違った質の映画だな、とは感じた。

フルCGで描かれる世界は、イラスト調のキャラクターデザインでもっ
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オーディション(2000年製作の映画)

4.3

いろんな意味で全編気持ち悪さに満ち溢れた映画だった。

まず、人間のゲスさが相当に気持ち悪い。
再婚相手を映画のオーディションにかこつけて選ぶのもゲスければ、気に入った子にだけ夢中になって話しかける様
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悪名(1961年製作の映画)

4.1

なるほど、これは和製のピカレスク・ロマン(悪漢小説)だ。

この手のものは話の筋よりも、人物がいかに魅力的かが重要になる。
その点、度胸があり、肝も太く、義理堅い主人公の朝吉は、魅力十分。
キリっとし
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画家と泥棒(2020年製作の映画)

4.4

芸術の意味を考えさせらる、とても奇妙なドキュメンタリー映画だった。

絵を盗まれた画家が、盗んだ泥棒に絵のモデルになってほしいと頼む。
という話自体がまず、とても不可解というか、不思議。
しかも、映画
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少年の君(2019年製作の映画)

4.7

中国(香港)青春映画の真髄を見たような思いがした。

思春期の少年少女たちはさまざまな思いを抱えている。
不安、焦り、苛立ち、怒り、葛藤、やさしさ、自己嫌悪、差別、闇、揺れ、迷い…。
それは簡単には言
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コロンバス(2017年製作の映画)

4.2

ものすごくセンスのいい映画だなあ、と思った。

映像も物語も会話も、ほとんど何も説明しようとしない。
でもそれは、必要な説明が省かれているというより、不必要な説明はしないという感じに見える。
何も説明
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海と毒薬(1986年製作の映画)

4.7

怖ろしい、としか言葉が出てこない。

患者を人として見ようとしない医者たちの姿がまず恐ろしい。
出世に役立つと思えば懇切丁寧に対応し、見込みがないと判断すればぞんざいに扱う。
人として見ていないから、
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スティール・コールド・ウインター(2013年製作の映画)

4.0

これは、韓国版の中学生日記だなと思った。

高校生たちの心情を描いていくというのではなく、何が起こったかをドラマチックかつストレートに描いていく。
その描き方はあまりにも直球過ぎるので、観ていて気恥し
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バリバリ伝説(1987年製作の映画)

4.0

あらためて「バリバリ伝説」は本格レースマンガなんだよなぁと思わされた。

当たり前だけど、80年代のアニメ作品なので、全体的に雰囲気はやや古い。
特に日常のシーンのエピソードがだらだらと続く感じや、女
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GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0(2008年製作の映画)

4.1

内容はそのままに映像を刷新したリメイク作品。
ということだけど、その意味はあったんだろうか、と疑問に思った。

ぬるぬると動く3DCGは確かに目新しいかもしれないが、それが美しく魅力的かと言われると違
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さまよう刃(2014年製作の映画)

4.3

法が犯罪者を裁けない時、被害者遺族が個人的に復讐しようとするのは果たして正義なのか。
この一点にテーマを集中させた、重く苦しい社会派ミステリーだった。

韓国映画にしては珍しくあまり凝った仕掛けや伏線
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パラドクス(2014年製作の映画)

4.1

力技で面白いって錯覚させられたような不思議な不条理ホラーだった。

出だしは完全に王道の不条理ホラー展開。
出口がなく一階の下が最上階につながった非常階段で、三人の男たちが途方に暮れる。
ひとりは瀕死
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ファウスト(1994年製作の映画)

4.2

ヤン・シュヴァンクマイエルの描く映画には、圧倒されるという言葉がよく似合う。

得意のストップアニメーション(コマ撮り)は、前作の全編見せつけるような「アリス」と比べると控え目で、どちらかと言うと、特
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海辺のエトランゼ(2019年製作の映画)

4.3

LGBTという言葉が当たり前のように使われる現在でも、やっぱり問題はそう簡単ではないのだと思わされた。

偏見や差別は日常の中にいくらでも潜んでいる。
家族との関係だってある。
相手のことを思えば「彼
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無慈悲な光(2021年製作の映画)

2.9

すみません。
久しぶりにボロクソに批判します。
気分を害する方はこの先は読まないでください。


設定や世界観は十分面白くなりそうなのに、それをまったく生かせていない。
これは、制作陣が台無しにしてし
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

4.4

ひたすらに想像力を刺激され続けるような映画だった。

羊が得体の知れない何かを産んだことはわかる。
でも、その姿がなかなか映されないので、何が異常なのかはわからない。
話が進んでいく様子を眺めながら、
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

4.4

理想的なマンガの実写映画化だった。

原作マンガを発売当初に読んだ時はかなりの衝撃を受けた。
内容もさることながら、絵の説得力がものすごかったからだ。
絵でしか語れないことを表現してみせたすごいマンガ
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時間回廊の殺人(2016年製作の映画)

3.5

前半と後半とで違う映画を観ているかのような感覚を受けた。
前半はなんと言うか、とても欲張った大味なホラー映画。
例えるなら、エクソシストとアザーズと残穢と呪怨を乱暴に一緒くたにまとめたような映画という
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コリーニ事件(2019年製作の映画)

4.5

二重、三重の奥深さにひたすら圧倒される法廷ミステリーだった。

冒頭、殺人を犯した後で何とも言えない表情を浮かべるコリーニのシーンからまず引き込まれる。
続いて、新米弁護士ライネンの登場になるが、彼が
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トゥルーノース(2020年製作の映画)

4.7

戦時中かと疑うかのごとき、極貧の強制労働と拷問の数々。
人々は奴隷のようにこき使われ、逆らえば簡単に殺されしまう。
人としての尊厳も自由も権利も何もない。
それが、北朝鮮でいまも現在進行形で続いている
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カセットテープ・ダイアリーズ(2019年製作の映画)

4.4

何も知らずに観ても、ブルーススプリングスティーンが大好きになってしまうような映画だった。

ブルースの音楽と出会うまでのジャペドは、毎日をただ諦めて生きている。
家ではイスラム流の厳格な家父長制を振り
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おちをつけなんせ(2019年製作の映画)

2.5

演技だけじゃなくて、創作もしたいし、自分ならできると思ってしまった役者さんが、好き勝手に作った典型的な駄作だと思った。

美的センスはあるのだと思うけど、それはとりとめもなく脈絡もない話を圧倒するほど
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イージー★ライダー(1969年製作の映画)

4.1

こういうのを、スロームービーのはしりって言うのかなあ、と思った。

主人公の二人が謝肉祭を目指すロードムービーなんだけど、基本的にはヒット曲をBGMに延々と走るバイクの様子と流れる風景が映し出される。
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エマニエル夫人(1974年製作の映画)

3.4

一世を風靡し、ある世代の人たちにとっては「エロ」の代名詞とも言える作品だけにずっと気にはなっていた。
今回ちゃんと観てみて、ああこれはたぶんフリーセックスの考えを根底に敷いた映画なんだな、と思った。
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ザ・ファブル 殺さない殺し屋(2021年製作の映画)

4.3

方向性が定まるだけで映画の印象ってこんなに変わるんだと思った。

シリアスとギャグの狭間でゆらゆらしていた前作に比べて、今作は完全にシリアス寄り。
それがいい感じで世界観を作り出し、映画の面白さにつな
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そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

4.3

映画史上これ以上はないんじゃないかってぐらいの主人公のみみっちいクズっぷりがおかしくて、終始ニヤニヤが止まらなかった。

主人公の裕一は生き方が適当で、人生に真剣に向かい合わなければならない場面になる
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永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)

4.1

ウィレム・デフォーの役作りがとにかく圧巻。
見た目だけでなく、挙動や話し方など、ゴッホとはこういう人だったんだろうと思わせるほどの説得力に満ちている。

映画の作りはかなり独特で、よくある伝記映画のよ
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阪急電車 片道15分の奇跡(2011年製作の映画)

4.2

かなり実験的なことをやっているのに、それがまったく気にならない、まるで職人芸のような良質な佳作だった。

冒頭から8人の人物の事情が、最寄り駅とともに描かれる。
それが終わると、今度は阪急今津線の路線
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生きちゃった(2020年製作の映画)

4.5

石井裕也の映画にはいつも共通の色があるような気がする。
決して派手にならず、むしろとことんまで地味なのに、そこに強烈な毒が見えるのだ。
と言っても、それは仕込まれた「あからさまな毒」ではない。
日常の
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ある天文学者の恋文(2016年製作の映画)

4.3

持っている恋愛観次第で、見方が真っ二つに分かれてしまうような気がした。

天文学者のエドは、若き恋人のことを思い、彼の死後にもメッセージが届くように手配する。
恋人のエイミーがいつどんなことをするかを
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ブラック・レイン(1989年製作の映画)

4.5

いやあ、じつに面白い刑事映画だった。
アメリカの刑事と日本の警察のやり取りを描くことで、ちょっとした異文化コミュニケーションの様相を呈している。
文化の違いから、お互いがお互いを認められず、どちらもが
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星の子アルフェ(2012年製作の映画)

4.3

きれいごとでは済まされない現実がとても重い。

障害を持った5歳の女の子アルフェは、話すことも覚えることも上手くできない。
でも、そんなことを気にする様子もなく、屈託なく無邪気に自由に生きている。
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ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)

4.3

人間としての強さをまざまざと見せつけられた思いがした。

収容所(ラーゲリ)に入れられ、強制労働を強いられながらも、主人公の山本は決して希望と明るさを失わない。
「必ず帰れますよ」と笑顔で語り、本人自
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波と共に(2016年製作の映画)

4.2

小説で例えるなら行間を読ませるような映画だと思った。

登場人物は三人。彼らの素性はわずかに台詞の一部から読み取れることしかわからない。
彼らは考えていることを口にしないし、行動にも起こさないから、直
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震動(2013年製作の映画)

4.4

聾啞の問題をこんなにも自然体で描いた青春映画はちょっと珍しい。

差別が強調されるわけでもなく、聾唖がことさらに取り上げられるわけでもない。
主人公の春樹と直は当たり前のように手話で語り、ごく普通の日
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