ひこくろ

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0のひこくろのレビュー・感想・評価

4.1
内容はそのままに映像を刷新したリメイク作品。
ということだけど、その意味はあったんだろうか、と疑問に思った。

ぬるぬると動く3DCGは確かに目新しいかもしれないが、それが美しく魅力的かと言われると違うと答えたくなる。
ここからは、独断と偏見で。
攻殻機動隊の魅力は、ミスマッチなアンバランスさだと個人的には思っている。

硬派なSFの世界観と設定に対し、やけにハードボイルドなキャラたち。
ペタンティック(衒学的)に大量の情報が披露される反面、テーマは「生命とは?」というシンプルさ。
哲学的な対話が続く一方で、展開されるアクション満載のエンタメ要素。
映像に関しても同じだ。
未来の世界が手描きの2Dセル画で描かれるところこそ、この世界の肝になる。

が、この映画では映像を新しくしてしまったことで、その良さが失われてしまっている。
例えるなら、汚い建物がひしめくからこそ美しいクーロン城を、全部コンクリート製のきれいな建物で構成するようなものだ。
そこにはパッと見のきれいさはあっても、本質的な美しさはない。

少なくとも、当時、あの映画を観た時に感じた衝撃は消えている。
それは思い出だから、という単純な話でもないと思う。
だって、いくつか残っているセル画の場面にはまだドキッとした衝撃を憶えたからだ。

もっとも、話の内容自体は変わっていないので、面白さは少しも損なわれてはいなかった。
「生命とは何か?」という問いは、いまも古びないテーマとして考えさせられるし、キャラクターたちの格好よさも健在だ。
話の内容自体も古さは微塵もない。時代はまだこの世界に追い付いていない。

ただ、こちらの見た目の新しさは、僕は買わない。
どうせ観るなら、古いバージョンをやっぱりそのまま観るほうがいい。
そのほうが格好いいんだから。
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