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青春18×2 君へと続く道のひこくろのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.4
旅の感覚と初恋の甘酸っぱさが凝縮されたような映画だった。

各駅停車の電車に乗り、普通の乗客に混じってごとごとと揺られていく。
終電まで乗り続け、降りた駅でどうしていいのかわからず途方に暮れる。
途中で気になったところがあれば、降りたってかまわない。
目的もゴールも曖昧な計画のない旅。
青春18きっぷで旅行をした経験のある人なら、この感覚は余計に伝わると思う。

そんなジミーの旅を通して、過去のアミとの思い出が描かれる。
これがまたたまらなく甘酸っぱくて微笑ましい。
カラオケ屋でバイトをするジミーの前に、ある日、現れたバックパッカーのアミ。
「働かせてほしい」と頼み込み、住み込んでしまう彼女と、ジミーとの関係は、恋愛とも呼べないほどにプラトニックに進展する。
片言の日本語と、中国語が入り混じる会話が、さらに二人の関係の愛らしさを際立たせる。

アミの視点から感じられる、海外旅行の楽しさもこの映画の魅力のひとつだろう。
こちらの旅の感覚には、日本の鉄道の旅とはまた違うものがあって、やはり「旅」を思い起こさせる。
「旅」のなかで出会う人は、普段出会う人とは意味合いが違う。
もう二度と会わないかもしれないし、その時だけの関係性しかないかもしれない。
でも、だからこそ、余計に関係は濃くもなる。
そういう「旅人」同士の関係性が、ジミーとアミにも見えて、それがまたとてもいいのだ。

結末は大半の人が想像する通りのものだと思う。
そこに意外性はないし、だろうなあという気持ちにもなる。
それでも、涙がこぼれてしまうのは、全編にこの「旅」の感覚があるからな気がする。
単にお涙頂戴もの、とはくくれない魅力が確かにあるのだ。

そして、その後の展開には素直に驚かされた。
こっちはまるで想像していなかったし、納得もさせられた。
なるほど、これがあるからこその、あの想像通りの物語なのか、とも思った。

にしても、宣伝の難しい映画たよなあ、これは。
予告編は完全に恋愛寄りに作られていたけれど、あれだと観る人を相当に選んでしまう。
正直、僕は予告編を観た時には、あまり観たいとは思えなかった。
かと言って、旅を前面に押し出すのも、また違う気もする。
予告編の正解は、見終わってもわからない。
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