どの時代どこかの場所にひっそりと、しかし必ず咲く花を心眼的にローアングルで撮った映画かと思います。
心眼的というのは、私が映画の表層的な面よりも、それが何を表しているのかに注視していたという意味合いです。
また、映画「茜色に焼かれる」や、ケラワックの「オン・ザ・ロード（路上）」と重なる部分があるようにも感じました。
この二つは登場人物の内的な世界を正規化・平仄化せずベタに表現してるからです。
ただ、茜色では永瀬正敏演ずる風俗店長、路上では街灯の下にいた髭男のような、仲介者や精神的超越者がいましたが、本作では不在でした。
それは、マナは自分たちのしていることが等価交換ではなく擬制交換ということを認識しており、何かを救済しようとする意思を持つまでには至らなかったし、何かを変えようとする意思や志向は希薄だったように思うからです。
本作は貧困や高齢者問題などを実話ベースで描くのに主眼が置かれていたようであり、「希薄」を感じるのは当然かもしれません。
映画終了後に思ったこと。
千佳、遠くまで逃げなくていい、いつかマナは戻ってくる、それまで待てばいいし金はその時返せばいい、誰に返すかは君とマナで決めればいいこと。
そんな風に感じました。
