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キャロル・キング ホーム・アゲイン ライブ・イン・セントラルパークのGyGのレビュー・感想・評価

4.0
☆ピアノ
キャロルのピアノはアタックするときは強烈に、トレモロがほしいところではマシュマロのように軽く柔らかく体に染み込ませるようなタッチになり、そのメリハリの付け方、剛柔の使い分けは実に自然です。
だから何回聞いても快いんだと思います。
本作の制作者もその辺はよくご存じなようで、「みて下さい、これがキャロルのトレモロです。世界初公開です」、みたいな撮り方してるシーンが数分間ありまして、刮目してみたら(ちょっとおおげさです)、腕は完全脱力、運指は単純な反復連打ではなく軽くリズミカルにタッチするだけ、マシュマロがポンポン飛び出すその瞬間を初めてみました。凄かったです。

☆声
本作冒頭のドキュメンタリー部分で、彼女のヴォーカル中音域にフルートで吹き上げるような感じの野太い音色が聞こえるカットがあります。
聞いた瞬間「ブレンダ・リー?」と思わず空耳、後日聞き直してみると他の曲にもこの音色がひそんでいるのが分かり、大声系ではないのにパワーのある声の源泉の一つがこれかなと思いました。

☆曲
It's Too Late 
曲中盤までは若干惜別感ありますが、通して聞くと恨みつらみ感は皆無。
実にサッパリした別れ歌です。
※VEVO(BBC)版では、最後はdoo la la doo da daとハミングしながら終わりを告げるという更に明るい別れ歌になっています。

You’ve Got A Friend
キャロルの真髄曲だと思います。もうゴスペルです。

Smackwater Jack
後述します。

☆音楽以外のこと
本作の冒頭、会場のセントラルパークが映し出され、パンしていく感じで往時のタイムズスクエアが映し出されます。そこにある三大ビルボードのうち2つは日本企業の広告でした。更にパンしていくと今はなきWTCの巨大ツィンタワーが。
世の無常を感じました。懐かしさはゼロ、感じるのは無常のみです。

Smackwater Jackは彼女にしては異質感のある楽曲です。
おそらくヒルビリーの一部にみられるアウトロー的な人々のことを歌っていると思われます。
テイラー・スウィフトが反トランプを掲げて運動を開始し、直ぐにキャロルも参加しました。この辺は日本でも報道されましたが、ヒルビリーについては多様性をもった存在であること、アメリカを分断する可能性もある課題なこと等により日本ではあまり紹介されていないですが、最近のSNSでの動きと絡めてSmackwater Jackを聞くと、これは伝法な部類に属するヒルビリーを歌ったメジャーでは最初の曲なのかもしれません。
※位置づけの難しいジョニー・キャッシュは対象外
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