GyG

ロング・グッドバイのGyGのレビュー・感想・評価

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)
3.2
ラストシーンは原作の改悪だという向きがありましたが、再見すると映画脚本の流れからいって至極当然の結末だと思いました。

ではなぜあのように改作したのか?
おそらく70年前後のベトナム戦争による閉塞感とその反動としてのカウンターカルチャーの勃興が関係しており、アルトマンはそんな時代の流れをスウェルしたコンセプト=コメディー&勧善懲悪(今日のポリコレ)を得てM★A★S★H マッシュを撮り、次にロング・グッドバイを撮った、こんな流れかと思います。
製作者側は、原作通りに撮るならばヒッチコック、しかしダメだろうなと考えていたかもしれません、想像ですが。

それにしても、ロジャーの最後は凄まじかったですね。
霜だらけの瓶に入った冷え冷えアカビーチ※を浴びるほど呑み、悪態をついた挙句、この世の掟を突き付けられ観念、サインし破綻する。
ちょうど本作制作中にアメリカはベトナムから完全撤退したことを考えると、ロジャーはアメリカ的なものを象徴した人物だったように思います。

その見方が正しいとすると、アルトマンは前作マッシュで言い足りなかった部分を補完したともいえます。

※冷凍してることとアカビーチという名称から類推すると、欧州で乾杯時に使われる高濃度スピリットのアカビット類酒でしょう。
これをマグであの量摂取するのはハードボイルド過ぎて、いや漫画チック過ぎて思わず目が点になりました。
アルトマンのデフォルメ手法の面白さがよく表れている場面です。
GyG

GyG