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パラサイト 半地下の家族のpandenのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

映画館での視聴を逃して待っていたので、Netflix公開と同時に即視聴。
ガッチリ掴まれました。
格差社会の皮肉を、テンポの良い展開と笑いで見せてくれて油断していたら、圧倒的な後半の展開にぶん殴られ、作中の家族と一緒にどん底まで叩き落されて、一緒に希望を見つけようとしてしまう。
そんなパワーある映画でした。本当に何故正月にこれを放映しようと思ったのか?w(褒めてる

本作はよくある「貧乏人の成り上がり物語」を描くコミカルな前半と、
パンドラの箱(ドア)が開き、タイトルの意味を知るシリアスな後半の構成になっている。
これを完全に半々の時間で計算して作ったと聞いて、どこまで考えて作り込んだのか恐ろしくなる。

半地下の家族のささやかな幸せと、そこに舞い込んだ一攫千金へのチャンス。
圧倒的な豪邸へ家庭教師として入り、どんどん家族を送り込んで信頼も得ていく様は、「騙される金持ち」と「したたかな貧乏人」の構図として、
両さんを見てるかのような楽しさがある。
初めに「半地下の家族」が、貧乏だけど家族睦まじく、ずる賢く隣家のWiFiも利用する暮らしぶりで、観客を等身大に引き込んでいるので、どうしても味方になって見てしまう。
ここまでが「パラサイト」の部分としての面白さだったんだなと、後で分かった。

だから家政婦のおばちゃんが叩き出される時も、かわいそうと思いつつ「金に意地汚い奴め」なんて悪者扱いしておりました…
だからおばちゃんが戻ってきて、妙な動きを見せた時も、「何かあるな…」と思いながらグングン画面に引き込まれるしかなかった。

本当にテンポがよく飽きない作りで、カメラの視点も素晴らしかった。
※どうも「地下の人」と「地上の人」でしっかり分かれた構図にしていたらしい?そこも計算づくかい!

本作のキーワードはいくつかあるが、
「半地下」と「計画」と「におい」が印象的な3つだと思う。
何より、どちらも「儚い」ものとして強烈に描かれている。

「半地下」は最初の時点で、「半分地下の生活のことかな」と分かるような、家族の生活シーンから始まる。
地上より半分潜った家の食卓から、地上の足元が見える窓の風景が見える。
これで「なるほど~」と思って油断していたら、本当の「地下」の住人が出てくるんだから油断出来ない…
そして「地上」の豪邸は、そもそも生活スペースが2階中心な上に、通りは坂で、作りも堅固だから雨が来てもびくともしない。
その生活に安住していたら追い出され、結果的に転がり落ちて戻った「半地下」の家は、全て水浸しで流されきって、トイレも逆流して地獄の状態。
地上に上がりたいって思いを踏み潰され、それでも最後まで夢見る主人公ギウが痛ましい。
この対比を「半地下」一言でわかりやすくしているのは凄い。

「計画」の方は、もちろん息子のギウが考えていた「パラサイト計画」なのだけど、途中から「計画にない」ことが起き始め、最後には父や妹に「計画なんてするから!」「また計画計画って!」と怒鳴られる始末。
途中まで「計画」のおかげだと喜んでたのに…
最後には全て崩壊して散り散りに逃げて、それでも父だけは助けられたのか…?と思わせておいて、実はこれも「妄想中の計画だった」とオチが付く。
完全に失敗どころか、妹まで失い、父は軟禁、母もボロボロで、それでも残るのが、始まりでもあった息子ギウの「希望に向けた計画」。
最後の救いにしているようで、恐らく観客の誰もが救われた感じがなかったはず。これだけ完膚無きに失敗したと見せておいて、まだ息子に計画と希望を持たせるの、監督も酷い人や…
絶対に成功しないであろう計画が、成功した妄想まで一緒に見せられて終幕した後の観客の後味たるや。

そして「ニオイ」。
これは最初に豪邸の息子が「この人達同じニオイがする~」と気づく可愛いレベルのものだった。
だから半地下の当人たちも全然気づかず、洗剤を変える?なんて話をするくらいだったのが、
しまいには豪邸の父まで気づいてしまう。
事あるごとに、「確かに彼は運転は上手いし喋りも一線を越えないが、”ニオイだけはその一線を越えてくる”んだよな」と、「半地下の人」には分からない「違い」を見せつけてくる。
これが父ギテクの怒り、越えたはずの格差を、より一層越えられない”根本的な違い”として見せつける。
「ニオイは消せない」だけでなく、「ニオイのある本人は気づかない」って描写は、本質であるからこそ恐ろしい。
これまでの「半地下でも賢さは鍛えられるし、それで逆転デキるのだ、富裕層と貧乏人はそんなに変わらないのだ」と見せていたものを一変させ、
培ってきた感覚、習慣の差は、いくら着飾っても隠せないと分からせる。
結果として、最後の惨事に繋がってしまうのが、誰も悪いと思えずやるせない気持ちにさせる。

この後味の悪さと、「格差は超えられそう」と見せておいて「超えられない何か」を見せつけたのがエグい。エグすぎる。
だから結構な数の人が「きつくて見られない」と言ってたんだろう。
そんなエグい映画ですが、自分の中ではこの一年くらいの最上位に位置できるものでした。(filmarksに感想書きたくなったわけだし)

ソン・ガンホ(父役)の演技も素晴らしかったので、『タクシー運転手』もアマプラで見ちゃったからそれもこれから書きます。
やー、韓国映画良いですね。ドラマも最近脚本の良さでも話題になるけど、邦画ももっと頑張って欲しい。

万引き家族とよく対比されるけど、
背景も描き方も展開も全然違うので、どちらも見て楽しみましょう!というスタンスです。(私は)
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