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すずめの戸締まりのpandenのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

新海誠ファンとして、見なければならない映画があるのだ。
そう思っていたところ、やっと視聴できた。
前評判も悪くないので、わりと期待しつつ。

ここんところの「君の名は」「天気の子」と評判が良いままで来つつ、「秒速」のような尖ったのが無いなぁと思っていた。
そこで「震災による記憶を、こう落とし込んだのかという発見があった」などの感想を見かけてたので期待も膨らむ。

そして自分の視点でもまさにこの、「”震災”の受け止め方」を描いた作品として刺さった。
最後にもう一度タイトル表示されるんですが、あのタイミングが個人的には最高でした。
そこでタイトルを、深く理解した(自分なりに)。

だから、「行ってきます」なのかと。
だから、「戸締まり」なのだなと。

『すずめの戸締まり』は、
表向きは映画ポスターのような「異世界への戸を締めていく」物語なのだけど、
その中ですずめがたくさんの人に出会って、
おばさん(環さん)とも、震災時の記憶とも向き合って、
お母さんがいなくても、震災がどんなに苦しい経験になったのだとしても、
自分はこの十数年間生きてきたこと、
今は何気ない平和な日常を送れてること、
今の世界に大切な人が何人も作れて、好きな人もできたこと、
その自信を持って、当時の記憶の戸を開けて整理し直して、
もう一度「戸締まり」をして、本当の「行ってきます」を言えるんだなと。
そうやって、日常を送って来たことを自信にして、みんな「行ってきます」をしましょうよ、と背中を押しているような、
そんな印象を受けました。

もちろん全体的に、ファンタジー要素が強かったり(なんですずめが扉を開けられた?、人生に一度じゃないの?、要石はなぜ抜けた?etc)、
シーンの意味や伏線が回収されていないような、意味が分からんところもかなりあり、
ご都合感は全然あったんだけど(そういう批判的な意見ももちろんあった)、
この本筋の魅力に捕まってしまったら、その辺どうでも良くなっちゃったね。

でもね、震災に対して、少なくとも何かは思って来たことがある人には、
どう受け止めたら良いのか、辛い思いをした人たちはどんな気持ちでいるのか、などを考えたことがある人には、
ちゃんと刺さる描写を随所に入れてきてるわけですよ…
ほんと新海さんやりますねぇ!

人々が捨ててしまった町にも、大切な”みんなの暮らし”があったこと、
そこから何かの災害で仕方なく離れた人たちにも、寂しさはあれど、強い気持ちで離れ、今の暮らしを送っている現実があること、
そして「あの日言えなかった」または「言えたけど帰ってこなかった」、”行ってきます”がたくさんあったこと、
そういうことを思わせる描写で、こっちの心をゴリゴリ削ってくる。
削っといて、最後にすずめに、全て見て乗り越えてきたすずめに「行ってきます」と言わせて鍵を締めさせるわけですよ。

すずめだって、3.11からの日記帳が黒塗りで、
お母さんをずっと探して、「会えない」を「もういない」に整理できなかった自分があったわけで、
そこをずっと、「上手く言えない」わけなんですよね。
上手く言えなかったけど、その頃の自分に対して、「でも、また人を好きになれたよ」と言えて、それが鍵になって再出発出来たんだなぁと。
だから、3.11の黒塗りのページのあとに、カラーのページがあったんだろうなぁと。

黒塗りの先にカラーがあるよ、色彩は一度無くなっても、色づくことはあるから、まずは「行ってきます」しよう!と言いたいのかなと、
全てを見終わった後、そんなことを考えながら視聴後の余韻を楽しんでいました。



もちろんパンフレット買ったのですが、
やたら懐メロ、特に魔女宅押してくるなと思ったら、
魔女宅のイメージが元からあったんですね笑
道理でなんか見たことある包容力あるおばちゃん来たなと思ったんですよ…
おそのさんのイメージそのままでしたわ笑
おそのさん好きなのでそこもポイント高かった。
千香も良い子すぎて最高だったけどね。


目の前の嫌な記憶とか、どうにも出来ないこととか、狭い人間関係とか、
そういうの置いといて動いて見ると、意外と色んな人と良い出会いあるし、
なんであんなに嫌な気持ちになって攻撃的になっちゃったのかな~ってなるよね~
まぁ動いてみるの大事っすよね!って気持ちよいというか、
未来を明るく見たくなる映画ですね。

後日談的な、スタッフロール前の最後のシーンたちもとても良かった。
草太さんとくっついたのか曖昧な描写も良かった。あれくらいでいいっす。それも魔女宅リスペクトらしいけど笑
恋愛至上主義でなくて、それはまぁ一つの要素であって、そこだけじゃなくても大事なものいっぱいあるよね、って方が自分は好きですね。

新海誠監督の、これからまだまだ描きたいものがあって、いっぱい出してくれるであろうことに、期待しながら、
円盤買っちゃうかもしれないなぁと悩んで次回作待とうと思います。

完成度はやっぱり「君の名は」だけど、
私が好きなのは結局「秒速」だし、やっぱりこう綺麗すぎないパワーのある作品がまた来て欲しい。
そういう意味でも、秒速の次くらいに好きだぞ!「すずめの戸締まり」!

イケメンをイスにする謎展開というか、「イスにキス」「イスに座る」っていう新たな性癖を展開してきたことも最高でした。
もっと邪悪な性癖の扉を広げてくれ~~~
panden

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