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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのpandenのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

(04.04追記完了。タイトル考察だけは書きたかったので、これで満足しました。)

エブエブ、気になりつつ見れてない間にアカデミー賞取っちゃってちゃんと席取れるかな?と心配していましたが、大丈夫でした。
近所の某所でまた鑑賞。

前情報はコメディっぽいってのと反差別ネタが入ってるってくらいを雑に入れてた程度だったんですが、
おかげで打ちのめされました。
鑑賞中の一番の感想は「なんだこれは……」
新しい、確かに新しいです。
カオスな映画なのに表現の方向性は読めなくはない。引き込まれる何かはある。ちゃんと「画」で引き込んでくれる。
でもこのタイプは観たことがない。
「多様性な世の中で生き悩んでるかもしれないけど、変なことも気にせずやって、笑い飛ばしていこうぜ!なコメディカンフーアクション映画」でした。


特に前半は、レシートと地元の変な客に埋もれた郊外?のコインランドリー店を営む中国系家族の余裕のない生活を見せられるんですが、
そこからの無理矢理なSF展開についていけず、しかも設定が雑。
夫がスーパーマンな裏の顔があり夫じゃない。主人公の妻(エブリン)を並行宇宙から探しにきた…?
こ、これは厨二病的なセカイ系か…!!?
やばいの掴まされちゃったかなー…妻連れてきちゃったけど大丈夫かなー……と心配になりました。

ただまぁ『カメラを止めるな』みたいなケースもあるし、と見ていたら、
娘(黒幕?)が絡んできたあたりから怒涛のエフェクト、カオスな展開、笑い、伏線回収、溢れるやりたい放題感!
なるほどあなたはこれをやりたかったのね!?
とわかってきた中盤あたりから楽しくなり、
終盤には3回泣いてしまいました……
ダメなんだ私は、こういう話は…
自分の人間観と一致するものを読み取ってしまって、最後は大好きになってしまいました。

人を選ぶ映画だと思います。「エブエブ つまらん」とかの検索結果があるのも納得。
これ楽しめる観客以外置いてく作品だわ…
他の観客も終わった後、感想言いながら帰る人は稀で、静かな人多かったです。
RRRと真逆笑笑

以下は私なりの感想です。
読み取って考えたいタイプの私には、ピッタリハマりました。



まず昨今の多様性(良いとされる価値観が複雑に絡み合い増殖しすぎた)渦に巻き込まれ、
若者がアイデンティティを見失い、迷走してしまいがちな世の中を、
娘の迷走や、「全てを載せてカオスとなったベーグル(なんでも味付けできる人に個性を乗せまくって何が良いかわからなくなった若者のメタファー?)」を通して、
「こんな世の中じゃどんな生き方が良いかわからないよね?」と強烈に皮肉っているように感じました。

そして最低な選択ばかりして、今の自分は最悪な人生だと、
こんな洗濯しなければよかった!と感じている主人公エブリンや、その夫ウェイモンドも、
実は素晴らしいところがあるぞ、と。
これから選ぶ選択肢で、もっと変わるんだぞ?というのを、
並行世界の自分を下ろして比較する中で、
並行世界で「夫のやり方を真似て」、全てを肯定的に受け入れ、好転させるような行動をとってみたら楽しい展開になることを見る中で、
「生きるってこういうことじゃない?」と見せてる気がします。

娘の服装は終盤になるに連れてどんどん奇抜になるんですが、
エブリンの服はそのままで、けど表情や目の力だけが変わってくんですよね。
そんな大人の強さ、経験を重ねてそれを受け止めた人間の強さを、
実は娘は求めて母を探していたんだろうね、と。
そうやって親が、大人が、規範のように強く生きる「自分」を見つけて見せていくことが、今の多様性の世の中で大事なんだよね、と。
そう言っているのかなーと色々考えて見てました。

だってあんなに「変なことをして」も、特に問題があるわけじゃないし、楽しいじゃないか、笑えるじゃないか、観客の皆さんも笑ったんでしょ?
ソーセージの手の世界だって、新たな美しさや楽しさを見つけられるでしょ?
そんな気持ち悪い受け付けられない!と思う世界でもI love youって言えるでしょ?
ならどんな多様性でも受け入れられるし、生きてみれるよね。
酷い人に見えた人にも、良さは見つけられるよね。(監査官や夫の素晴らしいところが見つけられたように)

圧倒的な「変な行動」や「変人」の山と、
既成概念では「嫌な人たち」を見せつけまくった上で、
全部抱えてハッピーになる夫の生き方やそれに付き合ってみたエブリンの成長を通して、
多様性との付き合い方の一つの答えを見た気がします。
私は大好きでした。

タイトルの「EverythingEverywhereAll at Once」も、自分の解釈では
「今この瞬間の選択に、どんな未来も、どこに行けるかも、全部かかっている(だから過去でなく今の選択で先へ進め)」と捉えてます。
「二つの世界が重なったままの状態」や「素粒子」の話が出ていたように、おそらく意識してるのは「量子化」「可能性の重ね合わさった状態」を言いたいのかなと。
観測すると状態が確定する、不確定性原理になぞらえながら、
「選択するまで自分の可能性はどちらもあって、最良の選択なんてものはなくて、常にあるその重ね合わせを、意思を持って選択することが良い結果を導く」てことかなと。
娘を引き止めるエブリンが、最後に思い切って選択してぶつかったところで娘を引き戻せたシーンに、そんな想いを感じました。(ゴンゴンへのカミングアウトも、車の前のシーンも)



ただアカデミー賞取るほどか?と言われると、分からんけど笑



あと絶対監督は映画好きだなと思ったら、オマージュ入れまくってましたねやはり笑
マトリックスそのままが出過ぎてて嬉しかったです。ターミネーター2も笑
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