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アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のpandenのレビュー・感想・評価

3.9
「英雄なき戦場」というサブタイトルは、見終わった後だと少し印象が変わった。
英雄なんてもので戦争が決まるわけではない、と、戦争の冷たさ、どうにもならない大国の暴力を感じさせるような映画だった。

冬戦争を終えた後の、継続戦争で振り回されるフィンランドと最前線の兵士たち、というのが舞台。
フィンランドの民謡?と思われる不思議な弦楽器の音楽が静かに響き、森林の中で生きるために闘い続ける男たちの葛藤を包んでいたのが印象的だった。
少し薄暗く落ち着いた全体の雰囲気は、この北欧音楽によるものもあるかもしれない。

初めはフィンランド軍の快進撃が気持ちよく、前線を指揮する若い下士官が主人公のように見える。
出てくる兵士たちのデコボココンビ感も楽しく、戦争は辛いけど仲間と命を守りあって切り抜ける!なんてまさに英雄映画に見えるのだけど、段々と戦況の変化が不穏な空気を醸し出す。
そんな中、いつの間にか主人公は英雄に憧れる若い大尉から、その下につく、実際の戦果を上げている老兵に変わっていく。
美しかったチームがどんどん削られ、希望が消えていく。

前線の兵士たちのやりとりを、生活臭が目前に漂うくらいまで細かく描いている映画は少ないように思う。
そのおかげか、キャラの個性が強くない兵士たちにも自然と気持ちが入ってしまい、だからこそ後半の怒涛の展開で打ちのめされた。
希望を持ったフィンランドも、兵士も、下士官の若いエリートも、みんな平等に戦争で打ちのめされる。
それでも生き残る奴はいるし、フィンランドは唯一国土を奪われなかった。
そこから読み取るものは何か。

暗い映画が苦手な人には厳しいかもしれないが、
正直に前線の姿を写そうとした作品として、引き込まれるものがあった。
政治色は強くないので、変に肩の力を入れずに、まで見るのはどうだろう。
私は継続戦争に興味が出てきたので、冬戦争と一緒にちゃんと勉強しようと思いました。
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