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ソン・ランの響きのpandenのレビュー・感想・評価

ソン・ランの響き(2018年製作の映画)
3.4
東京国際映画祭TIFF2018で鑑賞。

伝統演劇カイルオンを通じて、血気盛んな男2人の友情を描く作品。
題名のSONG LANGは、英語表記SONG LOANなる足でリズムを取るための伝統楽器のことのようだ。
これはカイルオンによく使われるもののようで、作中でも印象的なシーンで登場する。(ただ私はその意味をよく読み取れなかった…無念)

80年代のベトナムの暮らしの鬱屈したイメージを、拙い家具と薄汚れた家屋、光の陰影や絶え間なく流れるプロパガンダのような音声放送で表現し、その中でもがく若い男2人を浮かび上がらせる"空気"の表現が見事。
ベトナムのその頃の背景が分からないと難しいかもしれない作品でありながら、この辺りはしっかりと伝わってきた。

また、カイルオンの演劇としての魅力も迫力十分。
男女共に、カイルオンの主演俳優2人の歌声が見事で、引き込まれた。
伝統楽器と共に現代風?の楽器も使われており、独特の和音になった音楽も良かった。これだけでも見る価値はあった。
いつかベトナムで本物も見てみたいが…
(現在は現地でもあまり見られる機会が無いようだが、続いてはいる様子)

話としては、高利貸しの借金取り役としてヤクザ扱いされるズンと、才能がありながらも未だ何か足りない若手俳優リン・フンが、
お互いの不器用さからか惹かれ合い、自然と共に過ごし、互いの心を交わす中で自分の思いに気づき、正直になっていく…という青春ストーリー。
これを当時のベトナムの、退廃的とも見える風景の中で描かれるため、美しく輝いて見える。

友情の綺麗さと曖昧さと危うさを考えさせてくれる良い作品でした。
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