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ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのGyGのレビュー・感想・評価

4.0
「ミーム」の提唱者リチャード・ドーキンスのパブリックトークは迫力がありました。
図書館が果たす使命にはミームと重なるところが多々ある、従って伝えたい内容も多く立て板に水的語り口になる。
至極当然なことです。

各部門のサービスが紹介される中、就労支援サービスも図書館サービスとして位置づけられており、その内容も充実しているのには驚きました。
元々ニューヨーク公共図書館(NYPL)は、アメリカで興った「Go West」運動が終焉を迎えた19世紀末、設立が発議されたようです。
新天地を失った人たちの定住運動、いわゆるセツルメント運動(手に職を、頭に知識を!)が盛んになってきたころです。
NYPLはリテラシーの涵養だけでなく、就労支援も大きな柱であという考えが今も根付いているさまには感銘を受けました。

映画タイトルにある”Ex Libris”は本好きには蠱惑的な響きがあります。
単に所有を表すだけでなく、「これは人間共通の文化財なんだ」という意味を感じるせいなのかもしれません。

原題ではそんなイメージをもつEx Librisを主タイトルに、NYPLを副に置いています。
そこに製作者側の思い入れを感じるし、また映画「薔薇の名前」の重厚な図書の世界も連想して、座りのいいタイトルに思えてくるのです。
一方、邦題の方は主・副が倒置しているため、NYPLの今現在の姿にスポットをあてた映画、という風に思えます。
以上は個人的な思い込みですが、倒置云々は誤訳ではなく何か具体的な意図があってのことだと考えています。

かなりの長尺物ですが、彼我の違いを考えさせられるいい映画でした。

補遺
アメリカンポップの「Go West」は西漸運動に因んだ歌詞になっており、フロンティアがまだ存在した頃の高揚感を今に伝えるような曲です。
最近発売のHMVリマスター版は元気さが更にアップしてました。
2024選挙戦用?
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