ロッツォ國友

ローマの休日 4K レストア版のロッツォ國友のレビュー・感想・評価

5.0
「台所が無くてね。全て外食なんだ。」
「嫌じゃないの?」
「人生は、ままならないものさ。」



まさか「ローマの休日」を映画館で観られる日が来るなんて!!!!!!!!
一方残念ながら俺は「横浜の平日」なんだけど、いやはや満喫できて本当に良かったですよ!!

4Kレストア最高かよ。
"モダン・タイムズ"とか"街の灯"でもやって欲しいなぁ。。人来ねえもんかなぁ。

ささっと、感想を書きましょう。



まず言わずもがな、ヘップバーンが美しすぎる!!!!
顔が良すぎる。可愛すぎる。
なんかもう意味がわからない。
どの年代の人が見ても一目惚れする美しさですよね。

淀川氏の解説によれば、彼女は高貴な生まれのハーフ的な人だったようだが、お嬢様に相応しい美貌というか何というか。


彼女、大半は身分を隠した王女様ってことで話が進むわけだけど、

澄ました顔をしていれば高貴な女性に、
おどけた顔をしていれば無垢な少女に、

あっという間に姿を変えるという点でもピッタリな役柄なんでしょうな。


ただの顔面天下無双じゃなくて、彼女の存在感が本作のアン王女に最適と言えるほど合致している。
別の作品を見て「"ローマの休日"主演女優には彼女しかいない!!」と確信した作家のエピソードが語られているが、まさしくその通りだと思う。
よく分かりますよ。


ブラドリー役のグレゴリー兄ちゃん(名前が濁音まみれ…)もサイコーだったね。
こちらもくそでけえイケメンなんだけど、やっぱり顔面の良し悪しより人間味そのものが滲み出る良い役回りでしたわ。

イケメンで新聞社に勤めてて頭が回るがユーモラスなおっとりボンクラで、ギャンブルが大好きなのですぐに危ない賭けを仕掛けるけれど、非情にはなれない甘さがあるので生活はまずまず。可愛くて良い。

恐らくほんとは、彼のこの優しさはデカい賭けには向いてないんだよな。

アーヴィングの良性のヒゲ感も超好き。
一番可哀想な目に遭ってるだろ。
何なら作中で一番優しいキャラクターでしょう。三枚目の脇役としてこれ以上ない名演だったと思う。
大拍手ですよ。


ほんと、役者のビジュアルパワーで押し切っても全然イケちゃうキャストではありながら、一貫してキャラクターのキュートな掛け合いから親しめるような作風になっており、この辺はかなりセンスを感じますよね。
王女に、またはブラドリーに、時にはアーヴィングに、みんな恋をすると思いますよ。



オフビートなローマの休日描写も、全部いいよね。
ローマ旅行のベタなところを攻めた感じなんだろうか?

海外旅行の敷居がそれなりに高く、旅番組なんてモノは存在しない1953年に、美男美女がコミカルに観光名所を廻る描写というのは今とは全く違った受け止められ方だったのではないかな。
物語を追いつつ旅行の擬似体験ができる的な側面は確実にあるよね。


映画撮影の都合的に、ちょっと余所見した隙に時計台の針がとんでもなく進んでるジェラートのシーンも見れてよかった。
聖地巡礼したくなるよね。ローマ側では人々から巡礼され過ぎて逆に珍しいレベルなんだと思うけど。


チョイ役モブ役で出てくるキャラクター達もまたキュートで最高なんだよね。
渡る世間に鬼は無し的な世界観ですよ。

気前はいいけど文句はちゃんと言うタクシー運転手のグチっぽい感じとか、家賃滞納者のお願いをものすごくちゃんと聞いてあげる大家のおっちゃんがまじ好き。

生きるために働いてるけど、追われてはない感じ。
全体的におおらかなんだよね。

こういうキャラクター観察的な居心地の良さも相まって、本作は70年も昔に作られたものでありながら、楽しめるポイントが多い作品と言えるだろう。



お互いにウソをついての一日、という図式もすごく良かった。
そんな話とは全然知らなかったな…

そこそこハチャメチャなハプニングに遭遇し続けつつもシリアスには行ききらないシナリオ感は、こち亀の感覚に近いかな。

原チャで暴走するくだりとか、すごいこち亀を思い出したんだよね。
ずっとニコニコ観ていられるよ。楽しい。


話のまとめ方としてもさ、すっごく大人なんだよね。
お互いのネタばらしも思いの外しっとりとしているし、物語の畳み方も、二人とも何かこれまでの道のりや人生を棒に振るような駆け落ちをするとかはなく、思い出を名残惜しみつつも元の生活へと戻っていっている。

確実に、二人にとって忘れられない一日になっただろうが、とは言え、二人を隔てるものこそが二人を生かすものでもあるわけなので、グッと堪えて角を曲がる。

切なくも建設的で現実味のある終盤のストーリー展開は、まさに大人の鑑賞にこそ耐えうるものであると思った。


だからこれ、余計な味付けのない、爽やかな娯楽映画として最適化されていると思うんですよね。
本当に満足して、しかし誰にも言えないあの休日を胸に、元の生活に戻るんだよ。
観客にとっても二人にとっても、忘れられない休日として心に残り続けるわけですよ。
素敵じゃないか。



淀川長治氏の解説も素晴らしかったね。
原題の「Roman Holiday」は本来、
"ローマでの休日"

"ロマンチックな休日"
のダブルミーニング的なタイトルだったのが、ご自慢の邦題のおかげでそれが伝わらなくなったというのは衝撃だった。
何やってんねんって感じですけどね。
長治もおこですよ。たぶん。


あと すげえどうでもいい話するけど、「かわいい」「面白い」といった形容詞を一言だけ発してもそれは単なる個人の感想にしかならないが、「かわいいかわいい女の子」「面白い面白い舞台」的な感じで二言繰り返すことによって、形容表現が共有&強調される効果があるよね。

彼の解説から感情がこもった印象を受けるのは、一つは形容表現を数回繰り返すところにあるのではないかな。
初めて彼の語りを見たけど、少なくとも映画が好きであるということだけは間違いないなと思わせてくれますよね。

ラストの決め台詞「さよなら、さよなら、さよなら」もそうですよね。
ただの挨拶を繰り返すことで、みんなへの呼びかけとして受け止められる。

「映画の時間は終わりだよ。ハイ解散!」ってことなんでしょうね。
味があって良いね。



そんなところですかね。
むちゃくちゃ面白かったっすわ。
普通に声出して笑ったよ。

点数は困ったけど……マジに引くところがないし映画館で観られた喜びも本当に大きいし、5点満点で、いかしていただきやす。

いやぁ、映画って、本当にいいもんですねえ。
ロッツォ國友

ロッツォ國友