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テノール! 人生はハーモニーのGyGのレビュー・感想・評価

3.5
公式HP情報をみて映画館へ。

イントロシーンが終わるころ、アントワーヌがオペラ教師マリーの部屋を訪れるシーンでパヴァロッティの写真立てが映り込みます。

なるほど、マリーはパヴァロッティの流れをくむ人かとインプット。
このマエストロはジャズ、ロックとも融合する活動に熱心だったことから、HP惹句の「オペラ教師×ラッパー」の大枠が脳内に確保でき、ではどういう細部をどんな色合いで作り上げていくのかと期待が高まりました。

主要な&雑多なエピソードが入っています。
が、総じて深追いしないのがよかったと思います。

個別にピックアップすると、マリー先生のファーストレッスン、教え方がうまいですね。
必要十分なことを簡潔に説明するのみ、だから見てる私の方までこれならついていけそう、と思ったほど。
ただセカンドレッスンのあのブクブク、これはムリだと一気に現実に戻りました。
映画に同化できたから、払ったお代は戻ったなと得心。


面白く感じたのは、いままでマリーだった人が突然ロワゾー先生になったあたり
ロワゾー(鳥)先生!
この呼称から、たゆまぬ努力※、渡り鳥、自由を咄嗟に連想しました。
これと、アントワーヌのレッスン正式許可と引き換えに異国への赴任を承諾したこと、さらに鼻血により血液系のガンを自覚したこと(多分)をつなぎ合わせると、この「ロワゾー」一言により、

私は約束に従い、遠くの地に羽ばたきます。
おそらく不帰の旅になるでしょう。
だけどアントワーヌ、あなたは私が教えたときと同じように努力を積み重ねていってください。
あのマエストロと並び立てるようにね。
幸運を祈ります。マリー・ロワゾー

と言っているように思えました。
妄想もここに極まれり。
なんですが、わたくし的には心地いい満足感がありました。

余談
仏語ラップは日常語との隔たりが強いですね。
日本語ラップは日常語の抑揚感、ピッチなどに変調をかけているものの、大体はわかります(汗)。
英語はつんのめり・テンポ外しというか促音系を強調した感じが特徴だし、独語のブギウギは不思議な感じのブギウギになるし、言語と音曲形式の関係は複雑だと感じました。

トゥーランドットは純愛と殉死がテーマになっています。
「寝てはならぬ」は侍女リューの行く末が懸念されるゆえ、紅涙も男涙も誘うのだと思います。
マリーはトゥーランドットかリューか?
その観点で聞くと妄想も一入になること請け合いです。

※ロワゾーを主語にした有名な仏諺があり、その大意を表したもの。
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